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鉄道ジャーナリストblackcatこと加藤好啓の思索帳

鉄道ジャーナリストこと、blackcat、ちょっと硬めの内容を中心に時々書いてみようと思います。

国鉄労働組合史詳細解説 53

増税なき財政再建から始まった、国鉄改革問題

goo blogでも当時の衆議院運輸委員会のやり取りなども記してあるのですが、ここで問題になったのは、特定交通線と呼ばれた地方交通線の取り扱いでした。

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国鉄におけるローカル線問題は実は、この時期に問題化したわけではなく、昭和30年代から何度も何度も言われてきたことでした。

元々が過疎地域であるということで、貨物輸送の廃止や駅員配置の集約などの措置を取ってもなお、赤字であり、その多くは公共性という名目の中で維持管理すべきものとされていました。

廃止となった日本国有鉄道法を参照しますと。

(目的)
第1条 国が国有鉄道事業特別会計をもつて経営している鉄道事業その他一切の事業を経営し、能率的な運営により、これを発展せしめ、もつて公共の福祉を増進することを目的として、ここに日本国有鉄道を設立する。
(法人格)
第2条 日本国有鉄道は、公法上の法人とする。日本国有鉄道は、民法(明治29年法律第89号)第35条又は商事会社その他の社団に関する商法(明治32年法律第48号)の規定に定める商事会社ではない。

 ここでも明記されていますが、「公共の福祉を増進することを目的」ということで他の現業機関同様に、公共性が強く謳われていましたので、ローカル線問題は、公共の福祉の関連で語られることが多く、その都度公共企業体であるから「儲けてはダメ」という足かせをかけられてしまうことになります。(この足かせは昭和57年頃から順次緩和されて行きます。)

また、「国鉄再建法」の制定により、国鉄のローカル線問題は、法的に廃止するための枠組みが出来上がったことも大きかったと思います。

昭和43年(1968)にも国鉄諮問委員会が、輸送量の少ないローカル線廃止を答申しましたが、法的な根拠もなく地元の反対も根強く、全国総合開発計画などの発表もあったりしてそのまま有耶無耶になってしまったという経緯があります。

赤字83線に関しては下記もご参照ください。

jnrera3.webcrow.jp

しかし、昭和39年(1964)以降赤字決算となった国鉄は、昭和42年には積立金も取り崩してしまい本格的な赤字対策を迫られることになるのですが、中々有効打を打てず、昭和55年(1980)年頃になると国鉄の赤字は、3K赤字(コメ・国鉄国民健康保険)と言われ大きな問題となっていました。

そこで、国鉄当局としても国鉄単体で解決できる問題の時期は過ぎて、政府に頼らざるを得ない状況になっていたと言えます。

第二臨時行政調査会の発足

昭和56(1981)年3月16日に鈴木内閣によって首相の諮問機関として発足、第2次臨調が発足した背景には、消費税による増税で、赤字国債依存から脱却しようとした大平首相の路線が、増税反対という世論の中で、歳出削減による行政改革は目玉になる政策が無かった鈴木首相にしてみれば格好の政治材料に感じられたのではないでしょうか。

ここで少し、大原社会問題研究所の「日本労働年鑑 第57集 1987年版・I 分割・民営化論の台頭から具体案の作成まで」から少し長いですが、引用させていただきます。

臨時行政調査会(第二臨調)は、一九八一年三月一六日に鈴木内閣によって首相の諮問機関として発足した。この時期、行政改革が必要とされたのは、一九七三年末の石油ショックを契機とする不況から低成長経済を経るなかで、政府の景気対策国債に依存しつつ実施することで国家財政の破綻が目に見えるほど明らかとなったためである。一九七九年一〇月の総選挙で、大平内閣は国債依存からの脱却を一般消費税の導入でおこなう政策を掲げたが、自民党の敗北、与野党議席伯仲の実現により撤回せざるをえなくなった。すなわち増税路線が国民的反発にあうなかで、今度は逆に歳出削減につながる行政改革へ転換を余儀なくされたのである。

 第二臨調は、土光敏夫経団連名誉会長を会長とし、合計九名のメンバーで発足した。土光会長は会長就任の条件として、増税なき財政再建とともに三公社の民営化その他を鈴木首相に了承させた。こうして発足した第二臨調は、第一次答申へ向けて活発に活動をはじめた。八一年七月一〇日に第一次答申が提出されたが、答申は「行政改革の理念と課題」、「緊急に取り組むべき改革の方策」、「今後の検討方針」の三部から成っていた。答申では、財政支出の削減、行政の効率化をテコに「国の歩み」、行政のあり方の転換をはかるという行政改革の位置づけをおこなった。

 国鉄問題が臨調で具体的に論議されたのは、八一年九月七日に四つの部会が設置されてからであった。三公社五現業特殊法人等のあり方を検討する第四部会において国鉄問題が審議され、基本答申に向けで活発な活動が開始された。第四部会長には加藤寛、部会長代理二名、専門委員七名、参与九名の構成でスタートした。

oohara.mt.tama.hosei.ac.jp

特に国鉄の赤字は、すでに3K赤字ということで大きな問題となっていました。

特に同年9月7日に第4部会が設置されてからは、三公社五現業特殊法人等のあり方、が議論されて行きました。

国鉄職員に書かれたものとしては下記のようなものがあったと言えましょう。

そうした臨調が動き出す中で、同年12月以降マスコミによる国鉄批判キャンぺーンが始まるのでした。

その辺は、また別の機会に書かせていただこうと思います。

 参考 昭和55年度の国鉄経営状況

 昭和55年度の経営成績は,一般勘定でみると営業収入が2兆9,637億円,営業経費が3兆9,643億円で,その差額1兆6億円が営業損失となり,これに営業外損失78億円を加えた1兆84億円の純損失を計上した。純損失は前年度に対し1,866億円,23%の増加となっている。なお,本年度純損失から職員構成の歪みによる退職手当の異常な支出に係る特定退職手当純損失1,784億円を除いた一般純損失でみると8,300億円と,前年度に対し1,018億円,14%の増加となっている。

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第1章、臨時=行革路線と国鉄労働組合

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 第1節 80年代初頭の情勢と国鉄労働組合
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├○ 四 最後の「国鉄再建法」と国労の闘い │
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1981(昭和56)年3月11日施行となった「国鉄再建法」(国鉄経営再建特別措置法)(本文章、末尾に、条文を抜粋)に基づき、国鉄当局は5月1日、運輸省に要員削減による35万人体制などを柱とした「国鉄経営改善計画」を提出し、同月21日に承認を得た。さらに6月10日、特定地方交通線(第1次選定)う40線区(730km)に廃止を運輸大臣に申請(9月18日運輸大臣承認)すると共に、関係都道府県知事に通達した。ついで9月2日、国鉄当局は「経営改善計画」の概要と84年度までに実施する「要員合理化計画」を組合側に提示した。また、9月20日には「経営改善計画」の一環である、「線路保守の改善について」と題する合理化案を提案し、12月8日には地方機関における内部組織の簡素化(238課の統廃合など管理機構の縮小)について組合に説明した。
 この間。7月10日には早くも第二臨調が第一次答申を出し、緊急に取り組むべき改革方策として国鉄については、次のように指摘していた。
 日本国有鉄道については、当面、経営改善計画の早期かつ着実な実施を図ることとし、このため、毎年度、経営改善計画の実施状況を明らかにするとともに次の措置を講ずる。

 ① 国鉄の置かれた現状に労使とも厳しい認識を持つとともに、経営姿勢の是正及び労使慣行の改善を図る。なお、その一環として、職員研究の充実、無料乗車証制度等の見直しを行う。
 ② 新規採用の徹底した抑制を図るとともに、業務運営全般の合理化による生産性の向上、特に貨物部門の徹底した業務縮小等の減量化を行う。
 ③ 未利用地等遊休資産の処分等増収努力を徹底する。
 ④ 特定地方交通線対策を速やかに実施に移すとともに、特定地方交通線以外についても必要に応じ民営化を図る。

この第二臨調第一次答申は、「経営改善計画」をさらに徹底推進しようとするものであったが、運輸省からの求めに応じて八一年9月までに提出された第一次廃止対象路線関係の20道県知事の「意見書」は。そのほとんどが路線の存続を強く要望していた。全国市長会も10月7日に国鉄ローカル線関係都市協議会を開き、①廃止路線の輸送実態や経営内容の細目とその算定根拠、②路線ごとに輸送量の増加、乗客サービスの改善などに向けこ国鉄の行った努力とその効果、③経営改善計画の進み具合と計画目標達成の見通し、などの三点からなる要求を運輸省国鉄当局に提出するとともに、全国知事会全国町村会にも同一歩調を取るよう働きかけた。

続く

以下、国鉄経営再建特別措置法抜粋

 (趣旨)

第一条 この法律は、我が国の交通体系における基幹的交通機関である日本国有鉄道の経営の現状にかんがみ、その経営の再建を促進するため執るべき特別措置を定めるものとする。

 (経営の再建の目標)

第二条 日本国有鉄道の経営の再建の目標は、この法律に定めるその経営の再建を促進するための措置により、昭和六十年度までにその経営の健全性を確保するための基盤を確立し、引き続き、速やかにその事業の収支の均衡の回復を図ることに置くものとする。

 (責務)

第三条 日本国有鉄道は、その経営の再建が国民生活及び国民経済にとつて緊急の課題であることを深く認識し、その組織の全力を挙げて速やかにその経営の再建の目標を達成しなければならない。

2 国は、日本国有鉄道に我が国の交通体系における基幹的交通機関としての機能を維持させるため、地域における効率的な輸送の確保に配慮しつつ、日本国有鉄道の経営の再建を促進するための措置を講ずるものとする。

 (経営改善計画)

第四条 日本国有鉄道は、運輸省令で定めるところにより、その経営の改善に関する計画(以下「経営改善計画」という。)を定め、これを実施しなければならない。

2 経営改善計画は、次の事項について定めるものとする。
 一 経営の改善に関する基本方針
 二 事業量、職員数その他の経営規模に関する事項
 三 輸送需要に適合した輸送力の確保その他の輸送の近代化に関する事項
 四 業務の省力化その他の事業運営の能率化に関する事項
 五 運賃及び料金の適正化その他の収入の確保に関する事項
 六 組織運営の効率化その他の経営管理の適正化に関する事項
 七 収支の改善の目標
 八 前各号に掲げるもののほか、運輸省令で定める事項

3 日本国有鉄道は、毎事業年度、経営改善計画の実施状況について検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。

4 日本国有鉄道は、経営改善計画を定め、又はこれを変更するに当たつては、輸送の安全の確保及び環境の保全に十分配慮しなければならない。

5 日本国有鉄道は、経営改善計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、運輸大臣の承認を受けなければならない。

全文を参照の場合は、下記URLより御覧ください。

 国鉄があった時代

http://freett.com/blackcat_kat/Law/Law/JNR/keieisaiken/keieisaiken_special.html