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鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 67

皆さまこんばんは、気が付くと2週間近く空けてしまいました。

申し訳ありません、今回は最初に大原社会問題研究所の「日本労働年鑑 第53集 1983年版・特集 臨調=行政改革労働組合・臨調基本答申の特徴」から引用させていただこうと思います。

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国鉄改革のスタート、元々の目的は財政再建

国鉄改革とはという質問をすると、多くの人から、「組合潰し」と言う答えが返ってきます。

実際問題として、国労の分断工作が有ったり、一部国鉄幹部の方による談話として、国労潰しだったという意見などがあります。

しかし、国鉄改革のスタートは、行政改革の一環でした。
鈴木善幸内閣がかねてから問題となっていた財政再建問題に取り組んだことからスタートしたもので、臨調による施策をそのまま中曽根内閣が引き継ぐ形で完成させたものだと言えます。

実際、昭和56年頃政府では、3K赤字(米(kome)・国民健康保険(kokuminkenkou-hoken)・国鉄(kokutetsu)の頭文字を取って3K)をどうするかと言う問題が叫ばれていました。

当時は、国鉄だけでも赤字補てんとして毎年6000億円近い税金が投入されていましたが、それでも赤字は膨らみ続ける結果となり、国鉄問題は看過できないところまで行っていました。

ただ、この頃はまだ国鉄も後がない改革と言いつつも、数時合せに終始していた感もありさほど大きな危機感は持っていませんでした。

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上の表は、「郵政民営化委員会」が公表している資料の中から引用させていただきました。http://www.yuseimineika.go.jp/yuushiki/dai3/3gijiyousi_s.pdf

臨調と並行して制定された、「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法

さらに、臨調と並行して施行された「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法」では、国鉄地方交通線を「特定地方交通線」と「地方交通線」に分類し、さらに1次から3次までの基準を作り、その基準に満たない路線の場合は順次バス化もしくは地方鉄道への転換を進めることとなりました。
ただし、代替道路未整備などの特定の条件がある場合は、代替道路等が整備されるまではその廃止を保留することとなりました。

国鉄があった時代(企画・監修 加藤公共交通研究所)日本国有鉄道経営再建促進特別措置法条文を参照できます)

 特定地方交通線の定義

特定地方交通線の基準

地方交通線の廃止基準は以下のとおりである。
旅客輸送密度4000人(線平均)未満の路線を特定地方交通線とする。
ただし、下記の条件にひとつでも該当する場合は除外

  1. (1)ピーク時輸送人員(隣接駅間)が、1方向、1時間当たり最大1000人以上のもの。
  2. 代替輸送道路の無いもの。
  3. 代替輸送道路が積雪のため10日間以上不通となるもの
  4. 旅客一人当たりの平均乗車キロが30キロ以上でかつ旅客輸送密度が1000人以上の路線 

臨調基本答申の特徴

 第二臨調は八二年七月三〇日、「行政改革に関する第三次答申――基本答申」をとりまとめ政府に提出した。・・・中略・・・昨年七月の第一次答申と類似した三部構成である。そして答申の中心となる第二部は、

(1)行政施策、

(2)行政組織、

(3)公務員、

(4)国と地方自治体、

(5)公社・特殊法人――の五つであり、

なかでも、具体的な改革案が提言されたのは、国鉄など三公社の経営形態変更国鉄など三公社の経営形態変更(分割・民営化)ならびに「総合管理庁」「総合開発庁」の設置(分割・民営化)ならびに「総合管理庁」「総合開発庁」の設置の二つにとどまった。第二臨調の中心課題である省庁機構をふくむ行政組織、公務員制度、許認可事務、補助金特殊法人地方自治体ならびに行政手続きなど重要問題のほとんどが〃先送り〃された。

 

ということで、期待された地方分権などの措置はこの答申では見送られ、国鉄など三公社の経営形態変更(分割・民営化)ならびに「総合管理庁」「総合開発庁」の設置のみにとどまることとなりました。

いわば、この臨調の目玉は実質的に「国鉄など三公社の経営形態変更」だけであったと言ってよいかもしれません。

特に政府にしてみれば、毎年6000億円近い助成金をもってしても1兆円近い赤字を生み出す国鉄は何としても改革するべき存在であったという意識は強かったと思われます。

それが、下記の内容に繋がったと言えましょう。

国鉄にとって最も必要なこと」として、

(1)経営者が、経営責任を自覚し、それにふさわしい経営権限を確保し、企業意識に徹し、難局に立ち向かうこと。

(2)職場規律を確立し、個々の職員が経営の現状を認識し、最大限の生産性を上げること
(3)政治や地域住民の過大な要求等外部の介入を排除すること、
などの三点を上げ、「これらのことは、単なる現行の公社制度の手直しとか、個別の合理化計画では実現できない。公社制度そのものを抜本的に改め、責任ある経営、効率的経営を行い得る仕組みを早急に導入するとともに、労使双方が国鉄の現状を深く認識し、政府と国民の指示の下に、一体となって再建に当たらなければならない」「新しい仕組みについての当調査会の結論は、現在二の国鉄を分割し、これを民営化することであると述べていた。

 臨調の答申は、国鉄本社にとっても厳しいものであったと思われます。

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国鉄としては、最後も国が何とか面倒を見てくれるのではないかと思っていた節がありました。

上の図のように、国鉄は新幹線や幹線、一部の培養線である地方交通線以外は子会社化並びに、場合によっては地方で運営してもらうことを前提として考えていたようです。

ただ、国鉄としては今回は触れませんが、特定人件費問題(満鉄職員や元陸・海軍技術者受入)等の人件費を指す。新幹線の成功は旧海軍技術者などによるところも大きいのは事実ですので、その辺は一概に言えないのです)

以下、参考

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上の表は、「郵政民営化委員会」が公表している資料の中から引用させていただきました。http://www.yuseimineika.go.jp/yuushiki/dai3/3gijiyousi_s.pdf

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第1章、臨時=行革路線と国鉄労働組合

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 第3節 第二臨調「基本答申」と国労の対応
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┌────────────────────┐
├○ 一 第二臨調の国鉄「分割・民営化答申│
└────────────────────┘

 第二位臨調の国鉄「分割・民営化」答申

続き

 ついで基本答申は、国鉄財政の現状とその原因にふれたうえで、「国鉄にとって最も必要なこと」として、
 (1)経営者が、経営責任を自覚し、それにふさわしい経営権限を確保し、企業意識に徹し、難局に立ち向かうこと。
 (2)職場規律を確立し、個々の職員が経営の現状を認識し、最大限の生産性を上げること
 (3)政治や地域住民の過大な要求等外部の介入を排除すること、
などの三点を上げ、「これらのことは、単なる現行の公社制度の手直しとか、個別の合理化計画では実現できない。公社制度そのものを抜本的に改め、責任ある経営、効率的経営を行い得る仕組みを早急に導入するとともに、労使双方が国鉄の現状を深く認識し、政府と国民の指示の下に、一体となって再建に当たらなければならない」「新しい仕組みについての当調査会の結論は、現在二の国鉄を分割し、これを民営化することであると述べていた。
 そして、この国鉄「分割・民営化」の理由としては、
 (1)先に上げた「国鉄にとって最も必要なこと」三点の実現を図る上で最も適していること、
 (2)現在の巨大組織では管理の限界を超えていること
 (3)国鉄の管理体制は地域ごとに実態とかけ離れた全国画一的な運営に陥りがちで、分割によってそれが改善されること、などを上げていたが、基本答申はつづいて「新形態移行までの間緊急に取るべき措置」として次のような「11項目を指摘していた【いわゆる11項目】

 ① 職場規律の確立を図るため、職場におけるヤミ協定及び悪慣行【ヤミ休暇、休憩時間の増付与、労働実態のともなわない手当、ヤミ専従、管理職の下位職位代務等】は全面的に是正し、現場協議制度は本来の趣旨にのっとった制度に改める。また、違法行為に対しての厳正な処分、昇給・昇格、管理の厳正な運用、職務専念義務の徹底等人事管理の強化を図る。
 ② 新規採用を原則として停止する。また、業務運営全般について、私鉄並みの生産性を目指すこととし、そのため、作業方式、夜間勤務大成、業務の部外委託、職務分担のあり方の抜本的な見直しを行い、実労働時間の改善を図るとともに、配置転換を促進し、各現場の要員数を徹底的に合理化する。
 ③ 設備投資は、安全確保のための投資を除き原則として停止する。なお、整備新幹線計画は、当面見合わせる。
 ④ 貨物営業は、鉄道特性を発揮できる拠点間輸送を中心とし、業務のあり方を抜本的に再検討し、固有経費における収支の均等を図る。

⑤ 地方交通線の整理を促進するため、遅延している特定地方交通線についても昭和60年度までに結果が得られるように早急に選定を行う。なお、対策が進まない場合、たとえば特定地方交通線対策協議会開催日の義務付け、協議期間の短縮等の改革を行う。また、上記以外の特定地方交通線を含む地方交通線についても、私鉄への譲渡、第三セクター化、民営化等を積極的に行う。
 ⑥ 分割会社との関係を配慮しつつ、自動車、工場および病院の分離等を推進する。
 ⑦ 永年勤続乗車証、精勤乗車証および家族割引乗車証を廃止する。その他職員に関わる乗車証については、例えば勤務区間に限定するなど業務上の必要のためのみに使用されるよう改める。また、国鉄以外のものに対して発行されているすべての乗車証についても廃止する。なお、他の交通機関との間に行われている相互無料乗車の慣行を是正する。
 ⑧ 期末手当、業務手当等の抑制について検討する。
 ⑨ 国鉄運賃については、当該地域における私鉄運賃、線区別原価等をも十分配慮して定める。また、安易な運賃改定は行わない。なお、文教政策、社会福祉政策等の観点からの通学定期等の運賃の公共負担については、国としての所要の措置を講ずる。
 ⑩ 兼職議員については、今後、認めないこととする。
 ⑪ 資産処分の一層の促進を図るとともに。関連事業についても営業料金等の見直しを行う等積極的な増収に努める。

続く