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日本国有鉄道 労働運動史

鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 68-1

国鉄の経営形態が本当に民営で良かったのか、それとも、この議論は今後の人口減少社会の中に有っての道路ありき行政の在り方を含めて今後考えていく必要はあるかと思っております。
なお、このblogとは別に、「日本国有鉄道の民営化を改めて検証するblog」

というものを起こしており、こちらでも改めて論じてみたいと思います。
なお、場合によっては他のブログでも語らせていただくこともございますが、このblogではあくまでも、国鉄労働組合などの社会問題を視点としたお話をさせていただく予定にしております。
なお、内容については中立公正を旨としていますが、時に組合寄りに又は当局寄りに偏っていると思われる場合はどうかご一報いただければ幸いです。

さて、今回は大原社会問題研究所の資料から引用させていただいた内容ですが、今までの調査会などと異なり、この臨時行政調査会【通称臨調】権限も大きく、実際に国鉄やNTT.JTと言った公社を民営化させたと言うのは大きな力であったと思います。

NTT(当時は電電公社)はすでに今後伸びしろのある分野は、民間の方が動きやすかろうと言うことで組合側も賛成していた節もありNTTの民営化と国鉄の分割民営化を同じ土俵で見ることはできません。

特に、電電公社の場合赤字続きの国鉄と異なり独占企業と言う部分はあったにせよ、着実に収益を上げていたわけで、そうした意味では電電通【現・NTT労組】は、国労と同じ総評に所属しかつ、社会党(現在の社民党)を支持していたとはいえ、積極的に合理化にも応じて来た経緯が見られます。(当時であれば交換機などがデジタル化することで人員の合理化されることを容認する代わりに賃上げ等で対処するなど全体のバランスを取りながら進めてきたことや、組合が国鉄のように分裂しなかったことも大きいと思われます。

www.ntt.co.jp

現在も、NTTとしては持ち株会社以下に事業会社・収益会社が並ぶ構造となっていますが、組合はNTT労組のみ(正確には、少数のNTT労組以外の組織もありますが全体から見れば少数派になると考えられます。「JMITU通信産業労組」

www.tcwu.org

すみません、国鉄のお話なのにすっかり脱線してしまいました。

さて、臨調基本答申にたいする労働団体の対応を見ると大きく二つの傾向が認められました。

基本的に、総評と統一労組懇は「答申反対」、同盟と中立労連は「答申支持」となっています。

ただ、「反対」「支持」の理由には組合ごとの思惑もあり、そのニュアンスには差があると認められます。

そこで、大原社会問題羽研究所の資料を基に簡単にまとめてみようと思います。

総 評

 総評は国鉄の分割民営化には明確に反対する。
それとともに、「民主的行政改革の実現を目指し国民的運動を展開していく」

ただ、ここで言う民主的行政改革と言うものがあまりにも漠然としているのですが、ようは我々労働者の意向を尊重しろと言うことかと考えられます。

 以下は大原社会問題研究所の資料から少し長いですが全文引用させていただきます。

【総評声明(要旨)】

 一、基本答申の性格は、行政内容を検討するよりも、もっぱら「小さな政府論」に立って財政規模の縮減のみをめざしている。国民の生活から見れば、福祉国家としての行政の水準を切り下げ、その質を改悪するのみならず、財政規模の縮小もまた国民にしわ寄せされるという二重の意味において国民の要望に沿うものとはいいがたい。このような方向では、今次臨調が「財界主導による財界本位の行革である」と国民から批判されても仕方がないことであろう。

 一、総評は真の国民のための行政改革をめざすため定期大会で、「国民のための行革推進本部」を設置した。今後、政官財癒着構造の打破、政治倫理確立のための国会機能の強化、分権化と情報公開システムの確立などの基本的問題の解決をはかる運動を推進するとともに、三公社の経営形態の改革、特殊法人の統廃合問題、民主的公務員制度の確立など広く国民の声を聞きながら国民行革の推進に向けた運動を展開するものである。

 

 これを受けて、総評傘下の共闘組織である公労協、公務員共闘も当日、それぞれ「声明」を発表しました。

当然のことながら、臨調基本答申は反対であると言う趣旨であり、政府が答申に基づき実行された施策には反対していくと表明しています。

要旨は下記の通り、少し長いですが全文引用させていただきます。

【公労協声明(要旨)】

 答申は、財界主導による弱者を犠牲とする反国民的行革といわざるをえない。すなわち、財政赤字をはじめ政治の失敗の責任を不問に付したうえで、三公社に対する民営、分割を基本にして公企体制度を解体することは、政府と財界の利潤拡大のみを追求するもので国民生活優先であるべき公企業の公共性は完全に無視されたものといわざるを得ない。

【公務員共闘声明(要旨)】

 一、財界が公務員給与凍結を行革の第一目標としていることに、満腔の怒りを覚える。民間では賃金改定を実施しながら、なぜ公務員の給与改定は凍結なのか納得のいく理由を明示すべきである。

 二、「非常事態宣言」などという幻想をふり撒き、防衛費の異常突出に加担し、その一方で、農民と公務員を敵視する財界の発言は許し難い。

 三、官対民・労対農・老対若を互いに反目させるような行革は、二一世紀を展望した国民のための行革とはいえず、財界のみに利する行革であることが明白となった。このような臨調答申に基づく施策の展開に対し、その協力を拒否する。国民と行政の接点にある私たち公務員労働者は、真に国民のための行革を希求しながら、財界主導の行革粉砕にむけて、長期、強靭の闘いを展開する。

 引続き、当事者である国鉄のうち、鉄労を除く4組合の声明が発表されました。

国鉄四組合共同声明

国鉄内の各組合は国鉄分割・民営化案に対しては断乎たたかうとしていましたが、このうち、動労はやがて総評から離脱するのことになります。

国労動労ほか四組合の共同声明はつぎのとおりです。

引続き、大原社会問題研究所の資料から引用させていただきます。

ここでは、「鉄道の基礎施設(路盤、線路、橋梁、トンネル、駅舎等の鉄道建設)は国家資金で行い、国鉄の経営が悪化しないよう運営補助、資本支出補助、欠員補填金等、多額の国庫助成を実施するとともに赤字を残さないよう単年度消化方式をとっている。こうした公共交通優先、大量公共交通にふさわしい諸外国なみの扱いこそ、国鉄財政再建の基本である。」

いわゆる、インフラ部分は国が管理すべきであると言う考え方であり、昨今地方私鉄などに見られる考え方に近いと言えるかもしれません。

といいますか、鉄道を公共財と考えるべきなのか、公共財ではないと考えるべきなのかで変わってくると思います。
何でもかんでも民間企業にと言うのは、今後の人口減少社会を踏まえた場合本当に妥当なのか否かも検討する必要があるかもしれません。

 

国労動労・全施労・全動労の共同声明(要旨)】

 一、「分割・民営」化が国鉄経営危機の解決につながるものでは決してないことは世界の鉄道のすう勢からみても明らかである。先進諸外国の鉄道政策は、民営から公企体化しナショナル・レールウェイとして存続させるというものであり、公企体から「分割・民営」化などは世界にもその例がない。

二、財政措置については、鉄道の基礎施設(路盤、線路、橋梁、トンネル、駅舎等の鉄道建設)は国家資金で行い、国鉄の経営が悪化しないよう運営補助、資本支出補助、欠員補填金等、多額の国庫助成を実施するとともに赤字を残さないよう単年度消化方式をとっている。こうした公共交通優先、大量公共交通にふさわしい諸外国なみの扱いこそ、国鉄財政再建の基本である。

 三、「分割・民営」は国鉄百十余年にわたり築きあげてきた国民の共有財産を民間資本に切り売りするものであり、公共性を放棄し国民の期待に反する。

四、収支均衡、効率化のみが優先し大幅な労働条件の切り下げや要員削減が強制される結果、保守・保安の手抜きによって公共交通機関の生命ともいうべき安全性が損なわれ、また、全国的ネット・ワークが分断され、ローカル線の大部分は切りすてられ、運賃体系もバラバラで値上げなどにより営利優先の運営となり、利用者の利便は完全に奪われる。

五、「国鉄再建監理委員会」は運輸省国鉄を上回る強大な権限だけが先行し、国民の利便をそこない「合理化」の強行のみを実施する機関となっている。基本答申は国の責任を明確にせず、その責任をあげて国民と国鉄労働者に転嫁するものであり、緊急一一項目はまさに本末を転倒したものといわなければならない。国民の利益をそこね、国鉄労働者の期待に反するこの基本答申に断固反対する。われわれは、これまでかかげてきた「国民のための国鉄」が文字どおり実現することを固く決意し、すべての勤労国民と連帯し共同の輪を広げ、あらゆる攻撃をはねのけて闘うものである。

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