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日本国有鉄道 労働運動史

鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 78

皆様こんにちは、久々に投稿させていただきます。

本日は、国労の資料から少し離れて、国鉄改革時に禁止となった兼職議員についてその歴史を探ってみたいと思います。

国鉄時代には兼職議員というのは、実はごく一般的な存在でしたがその根拠はどこにあったのでしょうか?

早速ひも解いてみたいと思います。

国鉄職員の兼職が認められたのは昭和26年6月から

その経緯を探ってみますと、元々国鉄では議員の兼職は認められていませんでしたが、昭和26年6月1日の改正 法律第百八十九号で、日本国有鉄道法の一部が改正され、今まで職員の兼職を認めていなかったものが一転、町村議員に限って許可すると法律が改正されます。

日本国有鉄道法の一部を改正する法律

法律第百八十九号(昭二六・六・一)

  日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)の一部を次のように改正する。

 第二十一条中「第十二条第二項」を「第十二条第四項」に改める。

第二十六条第二項中「第十二条第二項第三号に該当する者」を「第十二条第四項第三号に該当する者(町村の議会の議員である者を除く。)」に改める。

附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。                  

2 この法律施行の際日本国有鉄道の職員であつて、運輸省設置法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律(昭和二十五年法律第百五十九号)の施行の日(昭和二十五年五月十日)以後に行われた選挙によつて市(特別区を含む。)の議会の議員となり、現にその議員であるものは、第二十六条第二項の改正規定にかかわらず、その任期中は、引き続きその議員であることができる。

3 前項の日以後に行われた地方公共団体の議会の議員の選挙の際日本国有鉄道の職員であつて、当該選挙において当選人となつたものについては、改正前の第二十六条第二項の規定は、その者が当選人であること、議員であること及び日本国有鉄道の職員であることになんらの影響を及ぼすものでない。

4 第二十六条第二項の改正規定は、この法律施行の際日本国有鉄道の職員であつて、現に都道府県の議会の議員であるものについては、附則第一項の規定にかかわらず、この法律の施行の日から起算して十日間は、適用しない。この場合において、その者がその期間内に議員の職を辞さないときは、その期間を経過した日に日本国有鉄道の職員の職を辞したものとみなす。

(内閣総理・運輸大臣署名) 

参考 国鉄があった時代

この改正により、議員の兼職が法的に認められたわけですが、何故町村議員に限って兼職が認められたのでしょうか?

国鉄の兼職議員は、町村議員から?

この頃の世論では、公民権の行使として地方議員に参加するのはごく一般的であると言う考え方から、でているようです。そのあたりは、参議院議員の議事録にそのヒントがありそうです。

少しだけ長いですが、全文引用します。

○大和与一君 只今議題となりました日本国有鉄道法の一部を改正する法律案につき、提案者を代表いたしまして提案理由を簡単に御説明申上げます。
 現行日本本国有鉄道法におきましては、国有鉄道の職員は、地方公共団体の議会の議員(町村を除く)を兼ねることが禁止されているのでありますが、かかる措置は実情に副い得ないものがあり、且つ憲法によつて保障された公民権である被選挙権を不当に制限している虞れがあると考えられるのであります。
 即ち第一に、国有鉄道職員の居住状況を見ますると、全国を一貫する厖大なる輸送業務に携おつている関係から、分岐駅、繰車場、工場或いは一定距離間に所在する組成駅等においては、その構内に幾多の業務機関が設置され、当該市町村における職員居住の割合は他に比して極めて大であり、所によつては職員数がその大半を占める個所さえあるのであります。
 かかる個所において、市なるが故に国有鉄道の職員が、全く地方自治に参与することができないということは、地方自治の本旨に反するものといわなければなりません。

大和与一氏は、日本社会党(左派)の代議士で昭和28年初当選、参議院議員所属3期18年を務めて引退しているようです。

恐らく、ここで氏が指摘しているように、今以上に公民権の意識が強かったと思われ、国鉄職員であっても地方自治に参加する機会を奪ってはならないと言う趣旨での発言であったと思います。

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当時は町の半分以上が国鉄職員という地域も存在した。

この背景には、当時は自治体としての自律を求められていたことや、国鉄・専売公社。昭和27年からは電電公社などの直接政府に対しての権力関係を持たない職場であれば地方自治に直接議員として参加することは容認されるべきという雰囲気があったのかもしれません。

そこで、昭和26年に改正された日本国有鉄道法ですが、更に昭和29年12月には再び改正され、今まで町村議員のみに限られていた議員の兼職を総裁の許可があれば市町村議員までは兼職を認めると言うことになりました。

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他の公社職員との扱いを是正するために兼職議員を認めろと言う論調

その理由を再び、氏の発言から引用させていただきます。

ざっくり書けば、

  1. 国鉄職員が住民の大半を占める地域もあり(吹田市などはその例)そんな地域で国鉄職員が政治に参加できないのは地方自治の主旨に合致していないし、実際に既に全国で77名の多くの兼職議員が誕生しており今更禁止出来ないでしょ
  2. 議員なんて暇だから専従者はすくなく国鉄職員以外の一般の議員も所詮は兼職しているから、国鉄職員だけ特別扱いにしなくてもいいよね。
  3. 専売公社は、禁止規程自体無いし、後発の電電公社(NTT)も市議会議員まで認めているんだから、国鉄だけが町村議員しか認めないのは極めて不合理だよね。

ということで、書き方は乱暴ですが、そうした趣旨の発言をしており実際にこの改正により、国鉄は再び日本国有鉄道法を改正することになりました。

即ち第一に、国有鉄道職員の居住状況を見ますると、全国を一貫する厖大なる輸送業務に携おつている関係から、分岐駅、繰車場、工場或いは一定距離間に所在する組成駅等においては、その構内に幾多の業務機関が設置され、当該市町村における職員居住の割合は他に比して極めて大であり、所によつては職員数がその大半を占める個所さえあるのであります。
 かかる個所において、市なるが故に国有鉄道の職員が、全く地方自治に参与することができないということは、地方自治の本旨に反するものといわなければなりません。ちなみに国鉄職員で現在市議会の議員を兼職している著は全国七十七名の多数に上つているのであります。
 なお、最近政府が慫慂している町村の合併が促進されるならばますますその数は増加することが予想されます。

  第二に、国有鉄道の職員が地方議員を兼職した場合業務に及ぼす影響が大であるかのごとく考えられるのでありますが、単に職員ばかりでなく、市議会の議員としてその職務に専従している人は極めて少く、他に勤務を持ち、或いは家事のかたわらその責務を果しているのが通例であろうと思われます。勿論、職員は直接又は間接に旅客、貨物の輸送に従事する重責を担つております。併しながら市町村の行政区域は比校的狭く且つ、交通機関の発達いたしております現状におきましては、何ら業務に支障なく議員たるの責務を果しつつあることは既往の実績が雄弁にこれを物語つているところであります。
 第三に、同じ公共企業体の職員である專売公社の職員には議員兼職に対する何らの制限規定もなく、電信電話公社職員は市議会の議員まで兼職が認められている現在、国鉄職員なるが故に、町村議会の議員のみにとめておくことは、過去の政治的慣習を無視するものであるばかりでなく、一貫性のない極めて不均衡な取扱いであるといわなくてはかりません。かかる問題は法律によつて抑制すべき事柄ではなく、有権者の自由にして民主的な判断に待つべきものであると思考いたします。
 以上の諸点より、国鉄職員に対する職員兼職の制限規定は本法律より削除すべきが当然ではありますが、本問題の今日までの経緯に鑑み、少くとも市議会までは兼職を認むべきが妥当と考え、右のごとく提案いたした次第であります。

 昭和29年12月15日、下記のとおり再び改正され、。

但し、市(特別区を含む。)町村の議会の議員である者で総裁の承認を得たものについては、この限りでない。

この法律の制定により、国鉄職員は市町村の議員として兼職が認められることとなったと言われています。

日本国有鉄道法の一部を改正する法律

法律第二百二十五号(昭二九・一二・一五)

 日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)の一部を次のように改正する。

 第二十六条第二項中「(町村の議会の議員である者を除く。)」を削り、同項に次の但書を加える。

  但し、市(特別区を含む。)町村の議会の議員である者で総裁の承認を得たものについては、この限りでない。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 この法律施行の際、現に市(特別区を含む。)町村の議会の議員である職員については、第二十六条第二項但書の規定による総裁の承認があつたものとみなす。

(運輸・内閣総理大臣署名) 

 参議院会議録情報 第020回国会 運輸委員会に関しましては、こちらを参照ください。
 

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