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日本国有鉄道 労働運動史

鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 89

地方都市圏で導入された「都市型ダイヤ」

国鉄は、昭和59年の大幅な輸送改善、【システムチェンジ】を提案してきましたが、最も大きな点は地方都市に於ける都市型ダイヤの導入でした。

59年2月の改正で、ヤード系輸送の廃止ばかりが目立ちますが、昭和57年11月の改正で広島地区のダイヤを列車形ダイヤから都市型ダイヤに変更して試行した結果顕著な結果でがでたことから、全国的に地方都市圏でも広島方式が検討されることになりました。

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国鉄線 昭和58(1983)年12月 主要中核都市圏の輸送改善例から引用

この結果を受けて国鉄では下表のように、広島形の都市間輸送を行うこととなりました。【61年11月改正は省略】

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 (1)旅客輸送、① 都市間輸送=山陽・九州の急行、九州内の特急の需要に応じた見直し。北海道地区の急行の一部特急への格上げと普通列車への格下げ。その他線区の需要に応じた見直し。② 大都市圏輸送=首都圏、関西圏で通勤時を中心に輸送改善 ③=その他=普通列車は線区ごとに需要動向を勘案して、編成了数、本数などの見直し、以上の結果、列車キロほぼ横ばい。

 (2)荷物関係、① 拠点間ロット輸送=東海道、山陽、関西、東北、奥羽、日本海縦貫を中心にロット化、締切化を深度化する。② 営業の重点化荷物列車等の改正。
 (3)貨物輸送、① コンテナ輸送=直行系輸送の主軸として輸送力を増強。②=物資別適合輸送=実態に応じ整備、見直しをはかる。 ③=一般車扱い輸送=直行系輸送に再編成する。ヤード体制は廃止する。拠点駅とその他の駅を結ぶ集配列車を設定し、そのための基地を60箇所配置する。列車設定キロはう約29万キロ
 (4)その他、① 乗務員基地の集約等を行う。② 貨物駅を457駅体制とする。② 作業体制、勤務体制を全面的に見直し業務運営の効率化を図る。動力車・列車乗務員の効率化を図る。

旅客輸送を増やす反面貨物輸送は大幅減少

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国鉄監査報告書昭和58年 P103から引用

一般車扱貨物は昭和57年11月と比べても1/3以下の列車本数になり本数的には半減以下になりました。

 この改正では、旅客に関しては利便性が上がるものの、コンテナ輸送=直行系輸送の主軸としてヤード体制は廃止することになるため、全体としての要員は前述のとおり圧縮されることになります。

当然ながら世論も大反対の声が

当然のことながら、国労は、「提案内容に同意できない。後日、要求を申し入れるので実りある団交を」するという要求を出すことになりました。

また、ヤード系輸送の廃止には、専用線や貨物輸送を扱っていた私鉄【関西では別府鉄道等】にも影響を及ぼすこととなり、国鉄の発表を受けて日本化学工業会は、昭和58(1983)年2月1日に運輸省国鉄に対し、扱駅の縮に対して「貨物輸送の縮小に反対」の陳情を行ったとされています。

 国労の資料によりますと、下記のように反論を述べています。 

国鉄当局は、貨物部門のこうした大がかりな合理化を推進するにあたって、荷主や自治体との折衝を全国ですすめていった。国鉄貨物取扱駅の削減で大打撃を受けるものが硫酸、液体酸素などの危険物の輸送を国鉄に依存している化学製品業界である。、計画通りの削減が実施されると、タンク車による輸送不可能量の91万トンを10トン積みタンクローリー車約9万台分で代替輸送しなければならなくなり、当時の道路輸送の4割増になると試算されていた。

当時のっせろんはどのようなものであったのか、実際にはもっとあらゆる声が有ったと思いますが、集約すると概ね下記のような意見が多かったようです。

  • 「県から駅がなくなるのは困る」
  • 市場駅廃止は,市場の存廃にかかわる」
  • 「北海道のパレイショが本州へ送れない」
  • 「四国のみかんが東京へ送れない」
  • 「石炭輸送の廃止は炭坑の死活問題だ」
  • 「危険品が町へあふれる」
  • 「トランスや車両のような重量品はどうして運ぶのか」
  • 「連絡社線を勝手に廃止することは民鉄をつぶすことになる」
  • 「貨物問題は地交線廃止の先取りである」
  • 「不要になった私有貨車や専用線の補償を行え」

等々、様々な問題提起が行われたようです。

「県から駅がなくなるのは困る」といった感情論的な話から、「北海道のパレイショが本州へ送れない」とか、「四国のみかんが東京へ送れない」と言った誤解と【実際にはコンテナで輸送できるわけですから】言いますか割高になるのを嫌ったのかそうした声もあったほか、「不要になった私有貨車や専用線の補償を行え」といったより実務的な話とかもあったようです。

特に道路輸送が困難では無いかと指摘されたのは下記の3点

実際には、国鉄の施策は納得せざるを得ないということで共感される反面、道路輸送の困難を示したのは、下記のような物品であった。

  • 化成品等の危険品
  • 変圧器等の超重量品
  • 鉄道車両

これらの関しては化成品がコンテナに移行しているものもありますが、鉄道により輸送されているのはご存じの通りです。

当時のそうした顛末が、国鉄線 昭和58(1983)年10月号に「不退転の決意で」と言うタイトルで大鉄局の営業部長名で当時の苦労話が書かれていましたので参考に添付しておきます。

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国鉄線 昭和58(1983)年10月号から引用

和歌山県では拠点駅が廃止、それに連動して専用線も廃止

こうした多くの問題を抱えながら、最終的には、一部の駅では廃止が撤回されたところもありましたが、多くはほぼ計画通り進められることとなり、特に天鉄局では、今回の廃止計画の約半数が天鉄局で占めており、多くの貨物扱が集約されると共に、和歌山県では、鉄道による貨物輸送の拠点自体が無くなってしまいました。

この集約に伴い、住友金属空の専用線荷物はもちろん、宮前駅付近から小雑賀に向かって伸びていた化成品の専用線も廃止、初島駅から伸びていた東亜燃料【現在のJXTGエネルギー】の専用線も廃止されるなど和歌山では昭和59年以降は大きな変動が起こりました。

結果的には、僅か3年で1/3まで貨物取扱駅が減少することとなりました。

これにより、拠点駅が全国で87駅、これを補完する駅が335駅となりました。

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国鉄監査報告書昭和59年 P83から引用

 

  「要員削減計画」測って例を見ない大量の人員削減計画であった。「計画」によれば、83年度の要員削減数は2万8900人とし、そのための施策として、① 59・2ダイヤ改正関連【貨物関係1万6000人、旅客関係3000人、荷物関係1000人、計20,000人】② 中央交渉三事案【車両検修業務の合理化で2,300人、線路保守業務の関係で2,000人、電気保全業務の改善で1,500人、計5,800人 ③ その他【各部門における業務体制の見直しで3,700人)の合計2万9,500人の削減を上げ、駅新設などでの600人増を差し引いて実現するものとしていた。

 

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第2章、国鉄分割民営化攻撃と国労攻撃

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 第2節 仁杉総裁の登場と59・2ダイヤ改正
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二 貨物経営合理化と要員削減

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├○ 59・2ダイヤ改正の提案│
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 83年3月24日国鉄当局は、「59・2ダイヤ改正にかかわる計画概要」を組合に提案説明した。あらましの提案内容は次のとおりであった。

 (1)旅客輸送、① 都市間輸送=山陽・九州の急行、九州内の特急の需要に応じた見直し。北海道地区の急行の一部特急への格上げと普通列車への格下げ。その他線区の需要に応じた見直し。② 大都市圏輸送=首都圏、関西圏で通勤時を中心に輸送改善 ③=その他=普通列車は線区ごとに需要動向を勘案して、編成了数、本数などの見直し、以上の結果、列車キロほぼ横ばい。
 (2)荷物関係、① 拠点間ロット輸送=東海道、山陽、関西、東北、奥羽、日本海縦貫を中心にロット化、締切化を深度化する。② 営業の重点化荷物列車等の改正。
 (3)貨物輸送、① コンテナ輸送=直行系輸送の主軸として輸送力を増強。②=物資別適合輸送=実態に応じ整備、見直しをはかる。 ③=一般車扱い輸送=直行系輸送に再編成する。ヤード体制は廃止する。拠点駅とその他の駅を結ぶ集配列車を設定し、そのための基地を60箇所配置する。列車設定キロはう約29万キロ
 (4)その他、① 乗務員基地の集約等を行う。② 貨物駅を457駅体制とする。② 作業体制、勤務体制を全面的に見直し業務運営の効率化を図る。動力車・列車乗務員の効率化を図る。

国労はこの提案に対し、「提案内容に同意できない。後日、要求を申し入れるので実りある団交を」するよう要求した。
 「要員削減計画」測って例を見ない大量の人員削減計画であった。「計画」によれば、83年度の要員削減数は2万8900人とし、そのための施策として、① 59・2ダイヤ改正関連【貨物関係1万6000人、旅客関係3000人、荷物関係1000人、計20,000人】② 中央交渉三事案【車両検修業務の合理化で2,300人、線路保守業務の関係で2,000人、電気保全業務の改善で1,500人、計5,800人 ③ その他【各部門における業務体制の見直しで3,700人)の合計2万9,500人の削減を上げ、駅新設などでの600人増を差し引いて実現するものとしていた。
 7月19日の国労本部と国鉄本社の間の交渉の際に当局から車両数、車両基地と乗務員基地の統廃合についての提案がなされた。それによると車両数約2,180両、車両基地66ヶ所、乗務員基地99ヶ所の減、列車設定キロは在来線旅客で約5000キロ減、貨物約7万8000キロ減という内容であった。
 国鉄当局は、貨物部門のこうした大がかりな合理化を推進するにあたって、荷主や自治体との折衝を全国ですすめていった。合理化による駅や専用線の廃止で輸送の支障をきたす荷主や通運業者などへの補償が百数十億円を超えるものとみなされていた。国鉄貨物取扱駅の削減で大打撃を受けるものが硫酸、液体酸素などの危険物の輸送を国鉄に依存している化学製品業界である。日本化学工業会は、83年2月1日、運輸省国鉄に対して「貨物輸送の縮小に反対」の陳情を行った。計画通りの削減が実施されると、タンク車による輸送不可能量の91万トンを10トン積みタンクローリー車約9万台分で代替輸送しなければならなくなり、当時の道路輸送の4割増になると試算されていた。

続く