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鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 90-2

貨物事業縮小の陳情に対する当局の態度

再び当時の国鉄の資料を参照しますと、国鉄としては陳情に対して、下記のような対応策で応じていきたいと回答しています。

少し長いですが、全文引用させていただきます

四、陳情と対応策

陳情内容をいろいろな角度から述べましたが、陳情に対して私どもがどう対応しているか述べてみたいと思います。

貨物取扱駅存続460駅体制は、物流のまとまりを考えて組んだものであり、この駅体制と直行システム化は、言わば車の両輪であり、貨物取扱駅の存続はできない。
輸送ルート確保の車扱については、一定のまとまりのある区聞に限定して直行列車を設定しているので、輸送量の少ない区間には送れないことになる。しかし、コンテナでは、ほぽ全方位の輸送を確保するととにしている。
コンテナ輸送のメリットを最大限に発揮させるため、拠点駅への通運免許の付替、通返事業者等の集配力の強化、長距離区間貨物取扱駅が廃止される地域等を中心に、貨物跡地を利用した通運の広域集配基地(通運デポ)の設置等効率的な広域集配体制の確立を図る。
なお、具体的な物資については、次のように対処している。
小量分散型貨物
〔化成品〕・・・数日分を一箇列車にまとめて輸送できないか、私有タシクコンテナによるコンテナ化のしようよう。
〔火薬類〕・・・車扱輸送ルートのない場合、コンテナ化のしようよう(現行では、火薬類はコンテナに積載出来ないが、関係省庁へ規制緩和について折衝中)
〔特大貨物〕・・・運輸上支障のない場合に限り、臨時貸切列車の設定を行う。但し、運賃は割高となる。
大量分散型貨物
〔肥料・米〕・・・コンテナ化をしようよう。
〔みかん・りんご・馬れいしょ等の季節貨物〕・・・臨時のコンテナ、車扱直行列車設定を検討

五九・二ダイヤ改正の延期の要望
五十七年七月の臨調答申、五十七年九月の閣議決定、五十八年八月の国鉄再建管理委員会の基本的実施方針等において求められている拠点間直行輸送体制は、国鉄貨物に残された最後の生き残り策であり、予定通りの期日に実施する。
補償

今回計画による廃止対象駅の規模が大きいことなどから現行の補償制度を全般にわたって見直しを行う。新規補償はしない。
等々を説明し理解を求めているところです。

*1

ということで、車扱輸送を行っていた貨物も極力コンテナで対応できるとしており、専用線にあってもコンテナにより対応できるとしていましたが、多くの専用線を持つ企業は専用線を廃止して、トラック輸送に変わっていったように記憶しています。

西大路駅横には、日本電池((GSバッテリー)現・ジーエス・ユアサコーポレーション)の工場があり線路に沿って専用線が引かれ積込がされていましたが現在は専用線は撤去されてしまいました。(工場の施設自体は現在も残っていますが。)

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左上の大きな建物が湯浅バッテリーの工場で、専用線が伸びていることが判ります。

近代京都オーバーレイマップ

貨物輸送縮小に関しての世論はどうであったか

当時の世論は大きく二つに分かれていました。

  • 国鉄貨物の占めるシェアは僅か7.3%であり、鉄道貨物輸送は終わったと言う、いわゆる鉄道貨物安楽死論であり、臨調や自民党の立ち位置でした。
  • 今回の計画は国民生活の破壊につながるもので、現行輸送方式を維持すべきだ」とした、国鉄貨物公共性論の立場であり、組合並びに社会党共産党などの立ち位置でした。

国鉄としても、鉄道貨物輸送を手放すつもりは無く、実際にコンテナ輸送は57年度で落ち込みはあったものの、それまでも順調に増加していましたので、引き続き経営する意欲はあったわけですが、車扱輸送による赤字、特にヤード継走方式は、到着時間が不確定になるなどの問題を内包していたことも事実でしたので、この辺りで収支均衡を図るためにも不採算部分は思い切って切り離したいと考えていました。

労働組合としては、ヤード系輸送の廃止は反対と唱えていますが、国

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鉄当局側の見解としては、「車扱輸送も5000万トンを割るようでは、ヤード系集結輸送はコストが高くなり、そのうえ到着目時が明確でない、到着時分が長くなるといった欠点ばかりが出ている。」としており、国鉄としても正直言って扱い量全体が減少していく中では、赤字を増やすだけの車扱はしたくないというのが本音であったと考えます。

国労の見解をここに引用させていただきます。

国労の見解については5月21日付の「国鉄新聞」に新しい貨物営業」に対する組合の考え方を明らかにした。

そこでは、国鉄の貨物は国内貨物輸送量の8%を分担しており、きわめて重要な位置にあること。

そして、ヤード系輸送方式からの撤退と直行系輸送方式に転換することは、国民経済に大きなマイナスの影響を与える、さらに、ヤードの全廃と貨物駅の集約は国鉄労働者、通運労働者そして鉄道関連産業労働者の雇用の危機と賃金、労働条件の低下に結びつくものであると批判した。

つづけて、国鉄貨物輸送の望ましい姿としては、

  1. 大企業に奉仕する運輸政策を転換し
  2. 民主的総合交通(貨物輸送)政策を確立し、そこに国鉄貨物を位置づける必要がある。
  3. 国鉄貨物輸送の維持・拡大のためには、輸送方式の改善、営業施策の改善、新規サービスの開始、施設の整備をはかるなどの努力が必要
だと主張した。

と書かれていますが、民主的総合交通(貨物輸送)政策を確立・・・というのはどう言ったものを指すのか、全く具体案が見えてきません、実際トラック輸送に奪われたシェアを取り戻すのに民主的とは何を指しているのか。大企業に奉仕する運輸政策を転換し・・・というのは、昭和47年頃から言われていた話ですが、車扱貨物輸送は、資本家のために安い運賃で荷物を運んでおり、本来得るべき労働者の利益が搾取されているとして反対してきたものですが、逆に安い運賃であったが故に物価が安定していたという面もあるわけで、その後のスト権スト等の闘争で、荷主の信用を失った結果、国労が言うところの、「国鉄労働者、通運労働者そして鉄道関連産業労働者の雇用の危機と賃金、労働条件の低下に結びつく」と言う結果を招いたと考えます。

それ故、国労が提案している「国鉄貨物輸送の維持・拡大のためには、輸送方式の改善、営業施策の改善、新規サービスの開始、施設の整備をはかるなどの努力」というのは国鉄当局としては、ヤード系輸送の廃止を行い、黒字がでている直行輸送系に切り替えることで、自民党や臨調の中で燻り続ける、鉄道貨物安楽死論を阻止する意味合いがあったわけ、そうした意味では、国労の主張は筋として努力すべき点は同じですが、sここに行き着くまでのプロセスにおいて大きな矛盾を抱えていると考えてしまうのです。

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*1:しょうよう【慫慂】そうするように誘って、しきりに勧めること。