当局に押しきられる形となった国労
国労は、貨物輸送の縮小に反対するとして、積極的に反対運動を行ったと書かれています。国労としては、全日本交通運輸労働組合との連携を図ったと書かれています。
また、国労は、下記のように総括していますが、施策自体は、臨調の後ろ盾というも、分割民営化を阻止したい当局側の組織防衛であったと考える方が素直であり、「臨調の後ろ盾」と言うよりも、「国鉄当局自体が背水の陣を敷かざるを得なかった状況であった」と考える方がより素直なような気がします。
国労は全交運とともに全国各地で、宣伝・オルグ活動を強化し、荷主、関係団体、自治体などとともに各管理局や国鉄本社、運輸省交渉などに取り組んだ。全国の自治体での貨物廃止反対決議、意見書の提出、沿線住民の総決起集会、荷主、通運業者の局陳情、対策会議の設置、経済団体の意見提出など幅広い運動が展開されていった。9月21日には、国民の国鉄を破壊する59・2貨物・手小荷物「合理化」反対、地方交通線廃止反対、運賃値上げ反対、要求する中央総決起集会を開いた。全国の職場の仲間から寄せられたカンパで1万8000人の国労組合員が上京し、中央行動に取り組んだ。
交渉と運動とを有機的に結合する闘いを展開するなかで、59・2ダイヤ改正交渉の回数を重ねたが、この施策が臨調答申を閣議決定して提案されただけに、部分的修正を勝ち取れたものの、施策の基本にかかわる部分、とりわけ貨物取扱駅の存続、ヤードの存続については国鉄当局の態度は頑なであった。
また、国労が行った「自治体での貨物廃止反対決議」はそれなりの効果があったかもしれませんが、結果的には大きな影響を及ぼしたとは言えませんでした。
この辺は国鉄線【1984年3月】の、59.2における貨物駅再編成計額-その経過と反省-で次のような記述が見られます。
地方自治体
自治体に対する説得は、保守・革新を問わず相当難行した。荷主がすべて納得しても、自治体だけは反対というケースもあり(最後まで難行した数カ所はほとんどこれに近いケーlスであったてこれは予想外の事態であった。しかし、考えてみれば、自治体が今回の計画に賛意を表することを期待する方が無理であろう。国鉄の赤字は自治体に何の関係もないわけであるし、利用の多少にかかわらず、国鉄貨物駅はないよりあった方が地元にはベターである。
これが大部分の自治体の気持であろうことは推測に難くない
こうした、自治体の反対決議が、国労の運動の成果か否かは判りませんが、貨物駅等が廃止になることで地方納付金(固定資産税に相当する租税)が減少する事への危惧なども有ったのでは無いかと考えています。【この辺はあくまでも私の私見であることをお断りしておきます。】
結果的には、国鉄のシステムチェンジは、国鉄自体の貨物輸送が生き残るためのものであるという認識が、現場から運輸省に至るまで一貫していたことが大きかったとされたと、59.2における貨物駅再編成計額-その経過と反省-国鉄線【1984年3月】では下記のように結ばれています。
少し長いですが、再び引用させていただきます。
この転換の最大の推進力は、要約すると次の二点に絞るととができるだろう。
第一に、部外にあっては、国鉄における合理化の必要性がすべての国民の間で、個々の利害を超えたコンセンサスとして成立していたという点である。そのため、抽象的な公共性論等はあったものの、合理化そのものを否定する主張はほとんど聞かれなかった。ただこの条件は、逆の面からみれば、国民は国鉄が合理化に逡巡するととを決して許さないということを意味する。これからの国民の眼はますます厳しくなると考えなければならない。
第二に、部内的には、今回の貨物ダイヤ改正は鉄道貨物が生き残るために避けることのできない施策であるという共通認識が、現場から管理局・本社まで、さらに監督官庁である運輸省に至るまで一貫しており、そしてすべての関係者が、文字通り寝食を忘れて目的達成のために全ガを傾けたという点である。
最後にここで我々が肝に銘じなければならないことは、59・2は拠点間直行輸送体系のハードウェアを作ったにすぎないということである。とのハードウェアを駆使す-るソフトウェアを定着させ、目論見通りの収入を確保するのでなければ、今回のシステムチェンジは次代の展望をひらくものとはならず単なる減量化施策の一つに終わってしまう。
とうことで、国鉄当局としてもこのシステムチェンジは非常に重要な意味であったことが窺えます。
4線区7駅を2月1日以降一定時期まで廃止を延期
国鉄貨物輸送の廃止は、国労も組織を挙げて反対したが、実際には国鉄の態度に押しきられる形となりました。
ただし、下記の通り一部の特定地方線区はその廃止を延期するなどの措置が取られることとなりましたが、これはあくまでも例外規定であり、国労の言うところの
廃止問題について4線区7駅を2月1日以降一定時期まで廃止を延期するとの修正提案を行い、妥結を迫った。
ここで、国労が主張する、「4線区7駅を2月1日以降一定時期まで廃止を延期するとの修正提案を行い、妥結を迫った。」と言うのは、下図の第一次特定地方交通線の廃止であり、当局側の都合で延期になったと見るべきではないでしょうか。
もちろん、組合が迫って認めたのか、当局側が最初からやむを得ないと判断したのか判りかねますが、当局側の資料として国有鉄道(1984年3月号)を参照しますと、下記のような記述を見ることが出来ます。
特定地交線対策協議会において種々議論があり、各協議会で線区の実情に応じ、一定時期まで暫定的に貨物取扱いを継続することが決定された。もちろん、これはあくまで暫定措置であり、460駅体制の例外をなすものではない。
あくまでも、上記4線7駅の措置は例外的なものであり、転換若しくは廃線になるまでの間、特例として貨物輸送を残すものであると明記されています。
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国鉄があった時代 JNR-era
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第2節 仁杉総裁の登場と59・2ダイヤ改正
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二 貨物経営合理化と要員削減
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├○ 59・2ダイヤ改正に対する闘い│
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1983年8月19日から開催された第45回定期全国大会の運動方針では、次のような「闘い方」の方針を決定した。
「1、59・2ダイヤ改正反対の闘いについては、従来の国鉄当局との団交、大衆行動、地域共闘、一定の戦術配置というパターンでは闘いの成功は期しがたいことについて意思統一をはかる。
2、59・2(特に貨物、荷物)については、単なるダイヤ改正と受け取らず、わが国における陸上輸送の中にしめる国鉄貨物、特に車扱輸送のあり方を問題にした闘いに発展させるとの視点にたった全体の合意のもとに、中央・地方・職場で創意ある闘いを展開していくことにする。
3、この闘いを展開するに当たって重要なことは臨調・政府の国鉄も貨物輸送のあり方(当局案)に反対する『世論』をつくりあげこれを『国鉄政策』の変更を求める力として結集し、『家庭で国鉄の労使問題として取り組むという闘いの配置が重要である。
4、輸送システムの変更、修正を求めるという輸送施策の問題については、9月末~10月上旬を重要な山場として徹底した大衆行動を組織し、その高まりの中から前幸運貨物共闘の統一行動の一環としてストライキ等を配置して闘うことにする。」
国労は全交運とともに全国各地で、宣伝・オルグ活動を強化し、荷主、関係団体、自治体などとともに各管理局や国鉄本社、運輸省交渉などに取り組んだ。全国の自治体での貨物廃止反対決議、意見書の提出、沿線住民の総決起集会、荷主、通運業者の局陳情、対策会議の設置、経済団体の意見提出など幅広い運動が展開されていった。9月21日には、国民の国鉄を破壊する59・2貨物・手小荷物「合理化」反対、地方交通線廃止反対、運賃値上げ反対、要求する中央総決起集会を開いた。全国の職場の仲間から寄せられたカンパで1万8000人の国労組合員が上京し、中央行動に取り組んだ。
交渉と運動とを有機的に結合する闘いを展開するなかで、59・2ダイヤ改正交渉の回数を重ねたが、この施策が臨調答申を閣議決定して提案されただけに、部分的修正を勝ち取れたものの、施策の基本にかかわる部分、とりわけ貨物取扱駅の存続、ヤードの存続については国鉄当局の態度は頑なであった。
こうした状況の中で、10月6日にダイヤ改正に伴う労働条件の提案を受けたが、その理由は、国労が従来のダイヤ改正のように、事前協議で一定の施策の合意に基づく提案という形は取れないと判断したことと、施策の論議を今後とも続行するとの合意ができたことによる。と同時に、反対運動の状況が全国・全系統で一様でなく、全体として盛り上がりが十分でなかったため、労働条件の提案を受けることにより闘いを全体として高揚させる契機にしようと考えたからであった。
12月段階の交渉では、廃止予定駅のうち地元の同意が得られない駅について存続させるよう強く主張したが、国鉄当局は言葉では荷主や関係自治体の理解を求めると言いながら、その実態は施策の理解が得られようが得られまいが、方針を変えないという、過去のダイヤ改正では例を見ない態度であった。国労は交渉において当局が線区、駅の廃止問題について4線区7駅を2月1日以降一定時期まで廃止を延期するとの修正提案を行い、妥結を迫った。組合は、「59・2施策の基本について納得することはできないが、ダイヤ改正実施はやむを得ないと考える。しかし、根室線・五能線が運輸事業審議会に付議されており、駅廃止問題、組合要求も残っているので、残された期間に交渉を続け、最終判断したい」との態度を明らかにした。根室線・五能線の問題が運輸審議会での結論が出されたため、1月27日に「59・2ダイヤ改正に関する協定」等を締結し、1年間の闘いを終えた。これによってダイヤ改正は2月1日から実施されることとなった。
続く