国鉄当局の運賃改定方針は、再建監理委員会の提言もあり、地方交通線に有っては、割高な運賃を、都市部の路線では運賃の値上げを抑制する(いわゆる特定運賃)を導入することを決定して行くこととなりました。
これに対して、国労は下記のように総括していますので、国労の資料から引用させていただきましょう。
国鉄の再建計画に基づき検討された線区別運賃
国鉄における地域別運賃の導入は、昭和54年7月に提出された、「国鉄再建の基本構想案」に書かれていたものでした。
国鉄の再建計画は、昭和44年の第一次再建計画から、何度もの挫折を繰り返しており、いわば最後の再建計画と言われていたものでした。概要は以下の通りです。
主たる項目としては、昭和60年までの収支均衡を目指すとともに、地方交通線は、昭和54年1月に運輸政策審議会国鉄地方交通線問題小委員会が報告した提言を元にして、地方交通線を分類、鉄道としての役目を終えたと判断される路線については、バス転換もしくは、地方における第三セクター鉄道への転換などを図るとともに、国鉄で維持する路線は徹底した合理化を行った上で維持するとしたものでした。
以下は、交通年鑑1980年版を参考に抜粋引用したものです。
- 経営の重点化
- 35万人体制の確立
- 運賃改定
- 工事規模の圧縮
- 関連事業の拡大と不要資産の売却
- 公的補助
国鉄の経営努力のみでは解決し難い下記の項目について、公的な助成を求める
- 過去債務対策
- 退職金増加対策
- 年金負担増加対策
- 地方交通線・地方バス路線欠損
- 通勤定期等公共割引対策
- 工事費負担軽減対策
公的補助のうち、項番5・6は、本来であれば他省庁が考慮すべき問題なのですが、通勤定期等の割引は現在も基本的には鉄道会社の判断によることとされており、特に学生の割引に関しては、本来であれば文部科学省の範疇になるものといえましょう。
国鉄の地域別線区別運賃の導入に国労は反対を表明
国労のこうしたことに対する動きは下記のように反発しています。
国労は第140回中央委員会の方針で、「現在、進められている国鉄運賃政策は赤字を値上げによって部分的に補填しようとするものであり、場当たり的なものである。運賃決定の原理が競争を前提とする市場価格でもなく、徹底した原価主義でもなく、国民生活に基礎をおいた体系でもない」と批判した。そのうえで運賃値上げと格差運賃制度導入に反対する具体的な取り組みを決めた。
とありますが、国労は
運賃決定の原理が競争を前提とする市場価格でもなく、徹底した原価主義でもなく、国民生活に基礎をおいた体系でもない
と有りますが、ここで言うところに、国民生活に基礎をおいた体系というのはどのようなものを指すのか具体性が無いように思えます。
さらに、こうした申し入れに対しての国鉄当局の回答は下記の通り行われていますので、再びその部分を引用したいと思います。
国労は2月14日付けで運賃値上げの解明要求を出し、16日に団体交渉を開いた。国鉄当局はこの席上でおおよそ次のように回答した。
- 他の公共企業と異なり国鉄は厳しい競争にさらされており、競争力も失われつつある。政府、監理委からも一律運賃の是正を言われており、格差運賃については国民的合意が得られていると考える。
- 私鉄・バス運賃が国鉄運賃により抑制されているとは考えない。
- 割増運賃で50億円の増収を見込んでおり、それなりの収支改善がはかられる。
- 84年度は極力経費節減に努め、収入確保についても様々な努力をすることで予算をつくった。政府助成もあるが、それで賄えない部分を運賃改訂でカバーしたい。運賃改訂で借入金を抑えられる。
- 今回の改訂が法に違反しているとは考えていない。国鉄再建特別措置法は地方交通線の収入確保に「特に配慮を」と定めている。
- 今回の改訂は3本だてとなるが、抑制措置については監理委の提言もあり、私鉄との競合など総合的に勘案して決めたものだ。運賃の個々具体的な矛盾はやむを得ない。
以上のように回答しており、この時点で合理化への反対などで積み上がってきた、点に関しては、当局も強く出ていません、尚、この回答でありますが、運賃改定に際しても、国鉄再建特別措置法は地方交通線の収入確保に「特に配慮を」と定めている。
としています。ちなみに、国鉄再建特別措置法13条では、下記のように書かれています。
(地方交通線の運賃)
第十三条 日本国有鉄道は、地方交通線の運賃については、地方交通線の収支の改善を図るために必要な収入の確保に特に配慮して定めるものとする。
とうことで、当局としては組合がなんと言おうと国としてのお墨付きがあると言うことでしょう。
参考:国鉄再建特別措置法全文はこちらから
これに対して、国労は運輸審議会が昭和59年3月15日・16日両日に開催した、公聴会で、利用者の一人から下記のような発言があったとして、反対の論拠にしています
消費者代表の一人は、「地域別運賃制の導入は、公共料金の大原則である『公平の原則』を否定する。ローカル線を値上げしても増収分は50億円にすぎず、ローカル線の収支の改善をはかるどころか、むしろ客離れを招き収支が悪化する」
しかし、現在は更に顕著ですが、鉄道を利用せず、自動車を利用しながら実際にはローカル線を廃止するなと言う風潮と同じで、三江線廃止に際しても全国から撮り鉄が集まるものの、乗車が目的では無く列車を撮影するだけの目的であり、道路の混雑を招くだけであり、地元の経済に殆ど寄与しないは明らかであり、どこまでこの消費者代表が、鉄道を利用しているのか疑問に思えてなりません。
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第五節 国鉄の独自再建案と
地方本部交通線廃止反対闘争一 国鉄の経営改善計画の修正 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ┌───────────────────────┐
├○ 四 線区別運賃制の導入と運賃値上げ反対闘争│ └───────────────────────┘
線区別運賃制の導入計画 1984年には、兼ねてから計画されていた線区別運賃制の導入が具体化し、大きな問題となった。81年から実施された「経営改善計画」において線区別運賃導入が次のように計画されていた。 「〈運賃・料金の適正化〉 線区別・地域別に、他運輸機関との関係、収支状況等を勘案し、当面、次により運賃・料金の適正化を図る。
- ア、 都市間運賃・料金(略)。
- イ、 大都市圏運賃 大手私鉄等の運賃水準を考慮し、必要な区間において、特別割引運賃、往復割引きっぷ及び割引回数券を設定する。
- ウ、 地方交通線運賃 バス等の運賃水準を勘案しつつ、特別運賃を設定し、収支の改善を図る」。
また、第二臨調の「基本答申」(82年7月)においても「運賃については、当該地域における私鉄運賃、線区別原価等をも十分配慮して定める」と述べられていた。両者とも、一つは異種交通機関との運賃調整、もう一つは線区別運賃制の導入を謳っていた。 さらに、再建監理委員会の「第一次緊急提言」でも同様の考えに基づいて格差運賃の導入を提言していた。線区別・地域別運賃制の導入は、79年12月の「閣議了解」において認められており、この時の国鉄再建計画の重要な特徴の一つであった。明治以来国鉄は全国一律運賃制を堅持してきたが、それを放棄し全面的な内部補助方式を止めたことになる。 84年2月に国鉄当局は、運輸大臣に対し地方交通線の割増賃率を含む運賃値上げ申請を行った。この値上げ申請について、国労は第140回中央委員会の方針で、「現在、進められている国鉄運賃政策は赤字を値上げによって部分的に補填しようとするものであり、場当たり的なものである。運賃決定の原理が競争を前提とする市場価格でもなく、徹底した原価主義でもなく、国民生活に基礎をおいた体系でもない」と批判した。そのうえで運賃値上げと格差運賃制度導入に反対する具体的な取り組みを決めた。 国労は2月14日付けで運賃値上げの解明要求を出し、16日に団体交渉を開いた。国鉄当局はこの席上でおおよそ次のように回答した。
- 他の公共企業と異なり国鉄は厳しい競争にさらされており、競争力も失われつつある。政府、監理委からも一律運賃の是正を言われており、格差運賃については国民的合意が得られていると考える。
- 私鉄・バス運賃が国鉄運賃により抑制されているとは考えない。
- 割増運賃で50億円の増収を見込んでおり、それなりの収支改善がはかられる。
- 84年度は極力経費節減に努め、収入確保についても様々な努力をすることで予算をつくった。政府助成もあるが、それで賄えない部分を運賃改訂でカバーしたい。運賃改訂で借入金を抑えられる。
- 今回の改訂が法に違反しているとは考えていない。国鉄再建特別措置法は地方交通線の収入確保に「特に配慮を」と定めている。
- 今回の改訂は3本だてとなるが、抑制措置については監理委の提言もあり、私鉄との競合など総合的に勘案して決めたものだ。運賃の個々具体的な矛盾はやむを得ない。
また、運賃値上げは運輸審議会に諮問され、運輸審議会が3月15、16日に開いた公聴会では、格差運賃が主要な争点となった。消費者代表の一人は、「地域別運賃制の導入は、公共料金の大原則である『公平の原則』を否定する。ローカル線を値上げしても増収分は50億円にすぎず、ローカル線の収支の改善をはかるどころか、むしろ客離れを招き収支が悪化する」との反対意見を述べた。
続く