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国鉄労働組合史詳細解説 65

臨調答申と自民党国鉄の動き

久々に更新させていただきます、今回は国鉄改革の動きについて個別に見てみたいと思います。

一連の動きを箇条書きに書いてみました。

これでみますと、臨調の第4部会が分割・民営化は既定事項であるとしたとき、国鉄労使はともに分割・民営化ともに反対していますが、動労は、まだ分割・民営化への容認までは進んでおらず、分割。民営化を受入れようとしていたのは鉄労のみであったと言えそうです。

同じく公社であった電電公社や専売公社、特に電電公社は民営化を容認しておりその結果NTTは分割されずに一体で民営化となりました。(その後NTT再編で持ち株会社配下に、事業会社のNTTDocomoやNTTData 等の純粋に利潤を追求する会社を保有するとともに、基幹通信を担うNTTコミュニケーションズNTT東日本・西日本という地域会社などに分割されました。歴史にIFは無いですが、仮に国鉄が積極的に民営化を受入れて一体民営化されていたならば、その後持ち株会社法の下「新幹線事業会社」・「長距離寝台列車会社」「貨物鉄道会社」「地域鉄道会社」と言った形になっていたならば現在のJR北海道の問題などは、もう少し新たな展開になっていたかもしれませんね。

仮に、地域分割であったならば、JRもNTTのように、東西分割で熱海付近で東日本と西日本に分離、日本海側は、直江津付近で分割という形になっていたかもしれませんね、

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  • 臨調の動き

臨調第4部会は、国鉄に関しては分割・民営化は既定事項であるとしてその方針を堅持、鈴木首相も追認した形となったことで、政府としての方針は国鉄に関しては分割・民営化が既定の方向に決定しました。

自民党は「国鉄再建に関する小委員会」を発足、この小委員長就任した、三塚博氏は改革3人組と呼ばれていた、松田・井出・葛西三氏と頻繁に連絡なども取り合っており、「国鉄問題の基本は乱れ切った職場規律の回復。これを解決しない限り、分割・民営論をうち出しても空論に終わる」と強調して、国鉄再建は労使関係の見直しが重点だとして、臨調に対する独自性を出していることを強調していました。

国鉄当局は当然のことながら臨調の「分割・民営」化論に反発、国労動労、全施労、全動労の四組合は、三月九日、初めての合同中央委員会を開き、国鉄再建問題四組合共闘会議を結成、「分割・民営」化に反対し、共同行動をすすめることを確認。同月二四日には「すべての国鉄労働者への訴え」と題する緊急アピールを発表し、団結の強化を訴え、進展しつつあった〃世論形成〃への対応をいそいだ。一部の幹部は最後まで分割民営化方針に反対しますが、「ヤミ手当」問題にたいしては「回収方針」をうち出すとともに、三月に入って、総裁通達「職場規律の総点検および是正について」を発出するなど、労使関係の正常化に向けて動き出していったのはすでに見て来たとおりです。

  • 国労ほかの組合の動き

国労を含む国鉄の主要組合は民営化には反対だとして国労は、「国労動労、全施労、全動労」の四組合による「国鉄再建問題四組合共闘会議」を結成した。

「分割・民営」化に反対する共同行動をすすめ、分割民営化容認に動きつつある〃世論形成〃への対応をいそぐことになりました。

二月一九、二〇日の第一三四回拡大中央委員会で、「ヤミ手当」キャンペーンにたいして対策本部を設置する一方、「社会的常識や庶民感覚からみて妥当でないものは労使確認があっても是正する」と「正すべきは正す」という姿勢を明らかにした。二日後、総評、新産別と国労動労、全施労、全動労国鉄関係四組合は、国鉄改革共闘委員会を発足させ、国鉄問題を労使関係に集中させないためとして、独自に、国鉄の長期的なあり方の検討と労使慣行の見直しをすすめるとした。
さらに、国労動労、全施労、全動労の四組合は、三月九日、初めての合同中央委員会を開き、国鉄再建問題四組合共闘会議を結成、「分割・民営」化に反対し、共同行動をすすめることを確認。同月二四日には「すべての国鉄労働者への訴え」と題する緊急アピールを発表し、団結の強化を訴え、進展しつつあった”世論形成”への対応を急いだとされています。

  • 電電・専売の動き(主に組合としての立場から)

臨調で公社改革に載せられたのは電々公社と日本専売公社であった、電々公社としては、「現行公社制度では経営の効率化を図るのは困難」とし、経営形態の変更、特殊会社方式への転換の必要を示唆した改革案を臨調第四部会に提出しており、電電公社の組合である電電通「事業の分割・分離」には反対していたが、「民間企業との競合分野に市場原理を導入する」としてむしろ民営化を容認しており、国鉄とは異なる動きをこの頃から見せており、昭和60年(1985年)に一足先に民営化されることはご存じのとおりです。

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専売公社の組合である、全専売は、民営化に反対、

その理由として下記のような理由を挙げていました。

(1)専売公社の生産性は外国たばこと比べても低くない、)
(2)分割・民営化は、企業利潤の確保、徴税コスト増をまねき、価格引き上げ、国民負担増につながる
(3)葉たばこ農家が切りすてられる
以上の理由から、現行専売制度の維持と規制緩和による自主性強化を強調

実際に、専売公社の場合は民営化されたものの実質的に専売制度は維持されており、昨今ではタバコ以外の健康食品などの分野などにも進出しているのはご存じのとおりです。

国鉄当局も、労働組合も反対だった民営化

電通電電公社時代から何でも反対ではなく、合理化なども上手く取り入れながら柔軟な対応をすることで組合の分断も防止できたことと対照的に、国鉄では当局も組合も反対を掲げました。国鉄が当局・組合共に、適切な合理化は必要であると判断していたらもう少し変わっていたのかもしれません。

国鉄としても分割・民営化には反対するとしながらも、ブルトレ手当に端を発する慣行については是正するという方向で当局は動くこととなり、国労としても質すべきものは質すと発言しましたが、その本意は、昭和57年(1982年)2月2日、総評第六五回臨時大会で武藤国労書記長が話した言葉が国鉄労働組合の本音ではないかと思われます。

少し長いですが、全文引用させていただきます。

(1)国鉄経営改善計画にもとづいて労使交渉をつづけている段階に、「二五万人体制」、「民営・分割」化をとりざたするのは容認できない、(2)赤字・労使関係のみを強調するのでなく、公共交通のあり方のなかで総合的に考えるべきだ、と臨調をきびしく批判、国民的討論をよびかけた。同臨時大会は、「分割・民営」論を「労働組合の分断、春闘つぶしを意図するもの」とし、「断乎対決する」と決議した。

 

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1982(昭和57)年に入り。第二臨調第四部会での論議が後者の分割民営化で固まったとの報道も流れていたが、第四部会は4月17日に国鉄の分割・民営化の方針を確認し、4月20日に素案をまとめ、5月17日、3公社とも現在の公社制度を廃止し、電電公社、専売公社の民営化、国鉄の分割民営化を内容とする部会報告を提出した。そして、7月30日の臨調第三次答申(基本答申)は、各部会の報告をベースとしてまとめられ、国鉄に関しては明確に分割・民営化の方向を示した。


 基本答申はまず、『公共性と企業性の調和という理念に基づき設立された』公社の現状を見ると、「企業性が発揮されているとはいえず、その結果、果たすべき公共性さえ損なわれがちであり、公共性と企業性の調和を理念とした公社制度に大きな疑問が生じている」と制度改革の必要性を説き、次のような公社制度の問題点をあげた。

 

(1)公社幹部の経営に対する姿勢について、国会や政府による外部干渉が経営責任を不明確にし、安易感を生み、労使関係でも当事者能力が不十分なため、賃金を除く他の勤務条件で安易な妥協をしている。
 (2)労働者の側にも、決して倒産することのない公社制度の上に安住し、彙報な闘争を行うなど、公社職員としての自覚、義務感の喪失さえ招いている。
 (3)公社に対する国民の過大な期待が、公社の経営に負担をかけ、効率性を阻害する要因となっている、という。

 

以下続きます。

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第1章、臨時=行革路線と国鉄労働組合

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 第3節 第二臨調『基本答申」と国労の対応
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├○ 一 第二臨調の国鉄「分割・民営化答申│
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 第二臨調の国鉄「分割・民営化」答申

 1982(昭和57)年に入り。第二臨調第四部会での論議が後者の分割民営化で固まったとの報道も流れていたが、第四部会は4月17日に国鉄の分割・民営化の方針を確認し、4月20日に素案をまとめ、5月17日、3公社とも現在の公社制度を廃止し、電電公社、専売公社の民営化、国鉄の分割民営化を内容とする部会報告を提出した。そして、7月30日の臨調第三次答申(基本答申)は、各部会の報告をベースとしてまとめられ、国鉄に関しては明確に分割・民営化の方向を示した。
 基本答申はまず、『公共性と企業性の調和という理念に基づき設立された』公社の現状を見ると、「企業性が発揮されているとはいえず、その結果、果たすべき公共性さえ損なわれがちであり、公共性と企業性の調和を理念とした公社制度に大きな疑問が生じている」と制度改革の必要性を説き、次のような公社制度の問題点をあげた。
 すなわち、
 (1)公社幹部の経営に対する姿勢について、国会や政府による外部干渉が経営責任を不明確にし、安易感を生み、労使関係でも当事者能力が不十分なため、賃金を除く他の勤務条件で安易な妥協をしている。
 (2)労働者の側にも、決して倒産することのない公社制度の上に安住し、彙報な闘争を行うなど、公社職員としての自覚、義務感の喪失さえ招いている。
 (3)公社に対する国民の過大な期待が、公社の経営に負担をかけ、効率性を阻害する要因となっている、という。
 そして、以上の問題を解決するためには、「単なる現行制度の手直しではなく、公社制度そのものの抜本的改革を行い、民営ないしそれに近い経営形態に改める必要があるという基本的立場明確にしていた。

続く