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日本国有鉄道 労働運動史

鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 68-2

国労の資料では、「7月20日の臨調基本答申に対して」と書かれていますが、複数の資料を参照しますと、7月30日に「基本答申を政府に提出」となっていますので、これは国労側の資料が誤りであろうと推測されますのでそれに基づきお話を続けさせていただきます。

三公社、各々の事情

第2次臨調は、7月30日に基本方針を提出しますが、最初から3公社の民営化が盛り込まれていました。

専売公社は企業性が発揮されていないと書かれていますが、元々煙草に関しては現在もそうですが基本独占販売ですので積極的に民営化する必要はありませんでしたし。

電電公社に関しては、当時はデータ通信事業よりも音声通話が主力でありデジタル交換機等の導入による全国即時通話の実現していましたが、こちらも電話に関しては当時は独占でしたので積極的に民営化する理由はありませんでしたが、今後さらなる発展のためには縛りが少ない民間会社になるほうが良いのではないかと言う志向は組合・経営陣共々持っていたようで、答申を受けて積極的に民営化に走ったのがNTT(昭和60年4月に民営化)JTも同じ年、であり、最後までもめたのがJRでした。

 

併せてこちらもご覧ください。

NTT及び日本郵政について独自の見解で書かせていただいております。

国鉄があった時代 国鉄民営化を改めて検証するblog - 国鉄民営化の記事一覧

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政府の関与を許す構造の公社制度

なお、後者に関する問題点として、「国会及び政府による関与」を挙げていました。

実際、国鉄の場合運賃の値上げを物価安定と言う名目で延期させたり、鉄道敷設法に基づくローカル線建設を鉄建公団に行わせてそれを無償譲渡と言う形で国鉄に背負わせた結果、1970年(昭和45年)に完成した白糠線上茶路 - 釧路二股(のち北進)間)のように国鉄が採算が取れないことが判っているので運営を拒否したにもかかわらず、当時の運輸大臣が職権で国鉄に押し付けた例もありました。

このように、国鉄はややもすると政争の具にされてしまいました。

参考 国鉄があった時代昭和48年後半編

国鉄運賃値上げ凍結 12/17

政府・自民党はインフレ抑制のため、3月31日予定の国鉄運賃値上げと、4月1日予定の米価引き上げを10/1、まで延期と決定

参考 2 国鉄の運賃値上げを物価抑制の関係から延期させた国会審議の例

plaza.rakuten.co.jp

その結果として、公社の幹部はその経営に置いて責任を負わない、いな負えない体制となっており、事業実施における責任の所在もあいまいになっていると指摘しています。

また、労使関係についても、賃金決定権も経営者に与えられていないような現状では、当事者能力が十分に発揮できているとは言えない状況になっており、勢い組合との安易な妥協に走っていると指摘しています。

組合側にしても、「決して倒産することのない公社制度の上に安住」し、違法な闘争を行うなど、公社職員としての自覚、義務感の喪失さえ招いている。

とこの辺は国鉄の組合をかなり意識した内容となっています。

ご存知の通り、公社職員にはスト権が無い(元々は付与されていましたがその後公務員並びに公社職員はスト権をはく奪、その代わり仲裁裁定と言う制度が導入されました。)ため、スト権をよこせと言うストライキが行われたわけです。

 

いわゆる「スト権スト」・・・実際にはこのストライキは組合側の敗北に終わるわけですが、国鉄が都民の生活必需品を運んでいなかったことを自ら証明してしまったような出来事でした。

スト権ストの間も東京の築地にはトラックで生鮮食料品が運ばれ、東京の都市がパニックになることは無かったわけですから。

この辺は、既に書かせてもらっておりますのでそちらも併せてご参照ください。 whitecat-kat.hatenablog.com

更に答申では、「公社に対する国民の過大な期待」も問題であると指摘しています。

規模が大きすぎて管理できないので、適切な大きさに分割すべき

答申では、三公社の規模は、それぞれ余りに巨大過ぎて、的確な管理ができないほか、電電公社や専売公社は独占体であるため競争による自己制御のメカニズムの欠けていることが、責任ある経営と効率的経営を阻害している。

と書かれているのですが、実際に国鉄は当時で35万人ほどいましたがそれがたちまち会社として管理できないのか否かと言うと実際はどうなのであろうか。

取りあえず民営化するための口実としか見えないのが正直な感想です。

民営化ありきの結論

答申では、三公社が抱える現在の問題点、過度の政治的介入や労使の当事者能力を制限されている現状とその弊害を指摘するものの、本来であればその辺りを是正していくべきなのでしょうが、改善提案ではなく、一足とびに経営形態の変更、民営化の方策を打ち出しているところにはかなり無理があるのかなと思ってしまいます。

あくまでも、民営化ありきの答申であったと言えます、

参考  日本労働年鑑 第53集 1983年版
  特集 臨調=行政改革労働組合
  IV 臨調の基本答申と労働組合
から引用させていただきました。

緊急の国鉄合理化方策についても書かれているのですが、その辺は次回に書かせていただこうと思います。

 

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国鉄があった時代(企画・監修 加藤公共交通研究所)

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