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日本国有鉄道 労働運動史

鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 88

貨物合理化で職場を奪われる組合員

今回は、「新しい鉄道貨物営業について」と題する貨物合理化が計画について、国鉄当局側に資料などを参照しながらお話を進めたいと思います。

今回の貨物輸送合理化により、機関区、貨車区等の保守基地の再編成を行う」ことで2万人強の要員減となるころから、動労としては既に、労使対決から協調路線にその軸足を移していましたのでさほど大きな反対運動にはならなかったのでは無いかと推測していますが、国労にとっては保守基地の再編成による要員縮減は、直接組合員の減少に繋がるため、強く反対せざるを得ませんでした。

国鉄貨物の衰退は、どこにあったのか?

貨物輸送は、昭和45年から減少に転じ、その原因としては下記のような理由があったと言われています。

  •   昭和40年後半を中心に頻発したストライキ
  • ヤード系輸送など実態に合わない貨物輸送

下図でも判るように、貨物輸送はその後も減少しており、特にヤード系と呼ばれる輸送量の減少は著しいことが判ります。

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国有鉄道昭和58年3月号 から引用

 昭和56年の監査報告書でも、国鉄の貨物輸送は直行系を中心に行うべきでは無いかと提言しています。

昭和56年監査報告書 22ページから引用させていただきます。

貨物営業体制の抜本的改善を図ることが必要である。
これまでの国鉄貨物輸送は、高速直行輸送体制の拡充を図ってきたとはいえ、依然としてヤード中継輸送体制を主体とするものである。
ヤード系輸送は極めて非効率な輸送であり、しかも輸送速度が遅く近時における荷主のニーズに適応し得ず、輸送量は激減してきている。
一方の直行系輸送は、高速性、大量性という国鉄貨物輸送機能の特性を発揮し、荷主のニーズに適応し得るものであり、かつまた、経営効率が高いため競争力を維持することが可能である。 したがって、今後国鉄貨物輸送を市場指向型の営業体制に再構築するためには、現行の体制を早急に拠点間直行輸送体制に転換することが必要である。輸送体制の転換にあたっては、この体制に適合する輸送需要を確保するため、ニーズに対応する列車設定、運賃の弾力的適用、車扱貨物のコンテナへの誘導、広域集配体制の確立などの施策を総合的に推進すべきである。 また、この抜本的なシステムチェンジによって貨物部門の収支均衡を図るとともに、国鉄貨物輸送機能を将来にわたり有効活用する基盤を確立することは、国民経済的にも極めて有益なことであり、万難を排して転換を完遂すべきである。

 として、ヤード系輸送とする貨物方式とすることで、貨物の競争力を付けるべきであると提言しています。

監査報告書でも提言されたヤード系輸送の見直し

 

 

直行系輸送とヤード系輸送

国有鉄道昭和58年3月号 から引用

臨調は、こうした監査報告書の提言を受けて、それを支持する形となりました。

実際、昭和56年度の貨物収支は、収入が3200億円に対して、貨物固有経費が4900億円で1700億円の赤字でしたが、「監査報告書」において取り入れられている輸送形態別の収支試算の手法で分析すると。直行系では200億円の黒字だが、ヤード系は1,900億円の収入に対して経費は2倍の3,800億円を要し、1,900億円もの大幅な赤字を発生させていることになり、直行系輸送であれば、貨物輸送は十分黒字になり得ることが証明されたのでした。

 

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ただ、監査報告書でも「この抜本的なシステムチェンジによって貨物部門の収支均衡を図るとともに、国鉄貨物輸送機能を将来にわたり有効活用する基盤を確立することは、国民経済的にも極めて有益なことであり、万難を排して転換を完遂すべきである。」

と書かれているものの、この実現には大きな問題がありました。

すなわち、多くのヤードが不要になることを意味しています。

また、機関車並びに貨車の整備をする機関区や貨車区といった施設も不要になるわけです、少なくともヤードを廃止となると、多くの連結手の要員も余ってしまうわけです。

それまでも、小規模ヤードの統廃合などは進められていましたが、今回の59年2月のシステムチェンジは、全てのヤードを一気に廃止するものであり、組合にしてみれば組織存亡(分会の消滅)に関わることでした。

そこで、国労としても、、より強く反発せざるを得なくなる訳です。

85年度までに貨物固有経費で収支均衡を達成するため。直行輸送体系を確立し、貨物駅を457駅体制とし、ダイヤ改正を実施する。こういった輸送システムの転換に伴い「駅要員をはじめ乗務員、検修要因等の勤務や作業のあり方を抜本的に見直すとともに、機関区、貨車区等の保守基地の再編成を行う」ことで2万人強の要員減となる。

国労の苦悩は個々に集約されていると言って、良いでしょう。

合理化で2万人以上の職場が奪われることを意味するわけですから。

2万人の中には機関士なども含まれているので、2万人全てが国労組合員と言うわけでも無いにしても、かなりの下図の国労組合員も対象になることは容易に理解できます。

当時は、国労国鉄最大の組合組織だったのですから。

当然のことながら国労は反発

昭和40年3月号の交通技術の中で「やさしい貨物操車場の話」の中で、死亡率が多の職場と比べて3.7倍【死亡件数/従事員数】にもなると報告されており、実際危険な職場であることは変わりありませんでした。

更に基本計画では、それまでの860駅を一気に450駅まで減少するものであり、組合からの反対以上に、地方鉄道の存続に関わる問題であるとか、不要になった専用線や貨車の補償を行え、危険品が町に溢れる・・・等々。各種の反対意見があった記録されています。

国労がこれに対して、国労は「提案内容に同意できない。後日、要求を申し入れるので実りある団交を」すると、厳しい態度で反発、動労に関しては現在正史と言うべき資料が手元に無いのですが、おそらく同じような反対をしたものと思われます。

ただ、動労は既に57年頃から、こうした合理化に対しては何でも反対という方向から少しシフトしいましたので、その辺は更に資料を探して今後追記なり修正させていただこうと考えております。

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和歌山操駅付近を走行する特急くろしお 2D

 *******************以下は、国労の資料になります。**********************

 

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第2章、国鉄分割民営化攻撃と国労攻撃

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 第2節 仁杉総裁の登場と59・2ダイヤ改正
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一 貨物経営合理化と要員削減問題

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├○ ヤード系輸送全廃の貨物合理化提案│
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 国鉄当局は83年1月31日、59・2ダイヤ改正に関連して「新しい鉄道貨物営業について」と題する貨物合理化が計画を国労に提案した。この提案では、明治以来国鉄貨物輸送の中心であったヤード系輸送を全廃し、ヤードを経由しない直行輸送方式に転換するというものであった。82年7月の臨調基本答申において「貨物営業は、鉄道特性の発揮できる拠点間直行輸送を中心とし、業務のあり方を抜本的に再検討し、固有経費における収支の均衡を図るよう拠点間直行輸送を中心とする輸送体制に再編成するとともに、業務のあり方を抜本的に再検討し、所要の措置を実施に移す」ことを閣議決定した。国鉄当局の計画はこの閣議決定に基づいたものである。したがって、国鉄がすでに実施している「経営改善計画」を大きく変更し、さらに合理化をすすめたものとなっている。
 提案内容の概要は以下のとおりである。

 「国鉄貨物輸送は、この10年間に国内物流量の増大にもかかわらず半減し、シェアモ著しく低下した、これは、ヤード系輸送方式では輸送需要の高度化に対応できなかったからである。一方、国鉄貨物輸送のなかのヤードを経由しない直行輸送はこの10年間の輸送量が横ばいであり、国鉄貨物輸送に占めるウエートを高めている。収支面でもヤード系輸送から赤字が発生しており、直行輸送は収支が均衡している。85年度までに貨物部門の収支の均衡を目指す現行の「経営改善計画」の目標は、ヤード系輸送を維持したままでは達成不可能である。85年度までに貨物固有経費で収支均衡を達成するため。直行輸送体系を確立し、貨物駅を457駅体制とし、ダイヤ改正を実施する。こういった輸送システムの転換に伴い「駅要員をはじめ乗務員、検修要因等の勤務や作業のあり方を抜本的に見直すとともに、機関区、貨車区等の保守基地の再編成を行う」ことで2万人強の要員減となる。

続く

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