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日本国有鉄道 労働運動史

鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 93

過員の発生と組合運動

国労の資料だけで見ていると見えてこない部分も多いのですが、「職務内容は地方で交渉して決めるよう要求したのに対し、国鉄当局は過員の運用は管理運営権の問題だとして、交渉に進展はなかった。」

と書かれていますが、大原社会問題研究所の「日本労働年鑑 第55集 1985年版」を参照しますと、国労主流派であった民同左派が、昭和58年8月19日から23日まで開催された、定期大会では下記のような発言をしたと記録されています。

大合理化、分割・民営化にたいして、「労働者に犠牲をもたらさないかぎり、効率化を一面的には否定しない」との独自の「効率化」を模索し、前年の方針を踏襲した「長期抵抗路線」でたたかうとの運動方針を、議論のすえ、原案どおり採択した。また、武藤久委員長、山崎俊一書記長らの新執行部を選出した。議論では、はじめて打ち出された「効率化」にたいし、代議員から猛反発(「効率化は合理化だ」、「国労の鉄労化だ」など)が出、執行部は、「国民の側に立ったかたちでムダな投資や資材購入をやめさせ、管理機構も見直すべきだ」と答えるとともに、「ひきつづき討議をおこない、検討を加えていきたい」と書記長が集約し、基本的な考え方をつらぬいた。

ここで注目されることは、ある程度の条件で合理化を受け入れるべきであると受け取れる見解を発表したことでしょうか。

当然のことながら、「合理化=資本家による搾取」という発想であれば、反発することも当然かと思うのですが、こうした点に国労が一枚岩でまとめられなかった難しさがあるかと思います。
実際に、この後も国労は迷走して、ILO事務局長に事前に本社通告無しに行ったことから当局側も態度を硬化させることとなり、雇用安定協約の破棄など、国労組合員に取っては不安しかない状態を作り出したのも国労執行部でした。

参考:国鉄改革のあゆみ 24 - 国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

結果的に、地本レベルで雇用安定協約を結べないかと言った問い合わせが相次ぎましたが、国労として雇用安定協約を結んでいないので、管理局単位などで個々に労働協約を結べないとして、国労は更なる雇用不安に追いやられました。
話が飛躍しすぎましたので、元に戻しますが、国労も多少は歩み寄りを見せようとしていたのですが、結果的には、まだまだ国鉄が本当に分割・民営化されるとは思っていなかったように思われます。

  

国鉄当局は昭和57年に現場協議制度を実質終わらせた頃からですが、鉄労が合理化による人員削減は致し方ないとして、地域本社制の提案をするなど、より前向きな方向性を探っていたとき、

過員の勤務、職務内容は地方で交渉して決めるよう要求したのに対し、国鉄当局は過員の運用は管理運営権の問題だとして、交渉に進展はなかった。職場では、国労組合員に対する現場管理者の高圧的な態度がますます強化され、雇用不安がかきたてれら、労働不安が強まっていた。
 59・2ダイヤ改正は、国鉄労働者のなかに過員を生み出すと同時に、国鉄関連労働者の雇用問題に影響を及ぼした。国鉄の整備会社は全国に42社あり、2万7000人が働いているが、59・2ダイヤ改正によって、北海道1社の150人、九州2社の350人をはじめ全国で約2,000人の首切りが提案されたのである。

 国労は、8月20日から23日まで伊東市で開催された、国労大会で下記のように発言しています。

部内誌 国有鉄道1984-10から引用させていただきます。

「行革攻撃には長期戦略に立った反撃態勢の確立こそ緊急の課題」とする考えをペースに、それは、▽政治戦線と労働戦線・国民共闘の強化▽反自民反独占の視点に立った反行革闘争の強化▽いつ、どこで、だれと、何をもって闘うかという主体的力量の強化、の3つだと述べた。同時に総評労働運動の勢いを甦らせることは国労自身の力を増すことにもなるとした。また、当面の「過員」(国労ではこのようにいう〉対策について、「再建の道筋さえ示されない3条件(いわゆる勧奨退職、一時帰休、出向〉を受け入れることは、失業と首切りの片道切符を握らされることであり、絶対に許せない。反撃の道はいくつも残っていないが、有利でない国民世論のっくり変え、論理的であっても行動的な面の少ない組合員及び活動家の主体的力量の強化や組織の再整備、再点検の上に総団結すべきだ」と主張した。

あくまでも、未だこの頃は過半数国労が握っていたことから、まだまだ逆転は可能と考えていたのではないでしょうか。

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第2章、国鉄分割民営化攻撃と国労攻撃

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 第2節 仁杉総裁の登場と59・2ダイヤ改正
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二 貨物経営合理化と要員削減

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├○ 過員の発生│
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そこで国労の要求は、職制・職務内容、配置転換などに関する協定の遵守、転職に必要な教育、旅客サービスの向上のための「過員」の活用、属人的過員の扱いは禁止、業務委託の見直しによる国鉄労働者の職場と仕事の確保などを要求し、「過員」にかかわる諸問題については、「団体交渉で意見の一致を期し、紛争の生じないようにすること。」

 この要求書に対する回答が1月19日の交渉の席でなされた。当局は、職制・職務内容や配置転換などの従来の協定を尊重すると答え、転職にあたっての必要な教育を実施すると回答した。旅客サービス向上のために過員を活用する要求と属人的過員扱いは行わないという要求については、「地方局にまかせてある」と答えるにとどまった。また、過員の勤務、職務内容は地方で交渉して決めるよう要求したのに対し、国鉄当局は過員の運用は管理運営権の問題だとして、交渉に進展はなかった。職場では、国労組合員に対する現場管理者の高圧的な態度がますます強化され、雇用不安がかきたてれら、労働不安が強まっていた。
 59・2ダイヤ改正は、国鉄労働者のなかに過員を生み出すと同時に、国鉄関連労働者の雇用問題に影響を及ぼした。国鉄の整備会社は全国に42社あり、2万7000人が働いているが、59・2ダイヤ改正によって、北海道1社の150人、九州2社の350人をはじめ全国で約2,000人の首切りが提案されたのである。
 基地の統廃合等でも数百人の要員減が予測されており、5人の1人の首切りとなる。
このため、国関労(国鉄関連産業労働組合協議会)と全整労連(全国鉄整備労働組合総連合)は、「業務委託費10%カット」「大量の要員削減・首切り」に反対し、2月20日から22日までの間に国鉄本社前で総決起集会を開き、本社交渉を行い、本社前座り込み行動を実施した。また、22日には政府、各政党への陳情行動を行うなどして、国鉄の親企業責任を追求した。

続く