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日本国有鉄道 労働運動史

鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 95

当局の人員削減対策

国鉄の余剰人員は、昭和57年に退職のピーク以降は緩やかな減少を辿り、国鉄の監査報告書によると、59年度期首に於ける余剰人員(過員)は、24,500人となったと報告されています。
今後も合理化で、更に余剰人員(過員)が発生するため、その対策として、当局は、一時帰休制度や退職前提の休職制度などを提案してきます。

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昭和58年監査報告書 134ページを抜粋

退職前提の休職や、派遣制度の導入

  1.  退職制度の見直し
      ① 退職条件=56歳以上の者の特別昇給は行わない。
      ② 在職条件=55歳以上のものの定期昇給、ベア、昇職・昇格は行わない。

  2. 職員の申し出による休職
    退職前提の休職の適用条件として
    ① 55歳以下であること
    ② 復職前提の休職期間又は派遣期間満了日から1年以上経過していること。休職期間は2年、ただし1回に限り更新できる。賃金は、退職前提の場合は基本給、扶養手当、都市手当、住宅手当のそれぞれ全額。復職前提の場合は6割を支給
    休職制度の特例
     84年度までに56歳、57歳、58歳となる者については、本年度に限り従来の「職員の申し出による休職」を適用する。
  3. 職員の派遣に関する取り扱い
    (1)① 派遣目的=関連企業の指導・育成・強化
       ② 人材の育成
       ③ 国鉄の業務に関連する事項の調査・研究
     (2)派遣職員の決定=①本人の職務経歴、適性等を総合的に勘案の上所属長が決定する
       ② 決定に際して派遣先、期間、就労条件を明示し、同意書を提出させる。
       ③ 職員は派遣希望調書に記入、提出できるものとし、所属長はこれを斟酌する。
     (3)派遣期間=三年を超えない範囲とする。
     (4)派遣期間中の勤務条件=派遣先の就業規則などによるが、年休の付与日数、有効期間は国鉄の規定による
     (5)派遣の終了=① 期間満了
        ② 業務上の理由により派遣職員を復帰させる必要が生じたとき
        ③ その他、派遣継続が不可能又は不適当と認められるとき。
     (6)復職時の取り扱い=① 原則として派遣前の所属・職名に復帰させる。
       ② 必要時の応じて教育・訓練等を行う。       

 *1

と言った内容でした。

国労の言い分は、どうだったのか?

再び、国労の資料から参照してみたいと思います。

国労の記述を見ますと、昭和59年頃には、通称「人活部屋が設置されていたことが窺えます。」

国鉄当局は、これまで余剰人員を”ブラ勤”状態にさせないためと称して余剰人員を狭い部屋に押し込め「研修」なるものを実施したり、あるいは線路脇の草むしり、駅舎の窓ふきなどさせたり、増収セールスや特別改札などに充用してきた。三項目の提案のうち一時帰休は比較的若い層を中心に潜在的な転職・休職希望者の掘り起こしが狙いとされ、勧奨退職制度は一万人以上いる55歳以上の高齢層の定昇やベア、退職時の特別昇給をストップすることによって退職を促進することが狙いとされた。出向は、実際には国鉄の出資企業や下請け企業の新規採用ストップを前提にした余剰人員調整策であった。

実は、最後の一行、出向は、実際には国鉄の出資企業や下請け企業の新規採用ストップを前提にした余剰人員調整策であった。と言うのは少し異なっていまして、実際に関連企業への出向も多かったと思われますが、民間企業への出向、【下記の例では、スズキ自動車販売の販社に出向した職員の評判がすこぶる良いのでと言う話です】

長いですが、引用させて貰います。

はじめに
「今、派遣で来ていただいている国鉄職員を契約期間後もいて貰う方法はないだろうか?
一年半後のことだが、国鉄へ帰られると困るんだ・・・・・・」
そんな電話がある販売会社の社長からかかってきた。二年間の派遣期間で職員を受け入れて約半年経った時点での電話であった。
国鉄職員の派遣受け入れを始めて八カ月が経過した現在、軽自動車を中心としている自動車販売会社における状況を述べてみたい。

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昭和61年7月号 国鉄線から引用

これで見ることが出来るように、国労が主張する国鉄の出資企業や下請け企業の新規採用ストップを前提にした余剰人員調整策ばかりでは、なかったことになります。


必ずしも、資料が正しいわけではないということ

何時も意識していることですが、こうしたblog、特に労働運動系のblogを書く場合は、複数の組合があれば、複数の組合で手に入る資料を比較したり、大原社会問題研究所に代表される、社会学のサイトを参照したり、運輸白書などを参照したりして、自分なりにバランスを取りながら、疑問符という仮説をつけながら調べていくようにしています。
少なくとも、特定の政党や、特定の組合を応援するというわけではなく、ただ淡々と事実について調べて、比較して、多少の私見を述べて、アップするようにしています。
まだまだ不十分なところも多々あると思いますが、自分なりに調べて学んだことをこうしてアウトプットすることで、更に自分の理解が深まるのではないかと考えております。
更新頻度は低いですが、どうかじっくりと読んでいただければ幸いです。

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第2章、国鉄分割民営化攻撃と国労攻撃

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 第3節 59・2ダイヤ改正後の余剰人員対策をめぐる交渉
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 一 余剰人員対策の交渉と闘い

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├○ 余剰人員対策三項目の具体案│
└───────────────┘

 ところが、国鉄当局は、公労委調停中であることを無視して、7月10日に次の余剰人員対策三項目についての具体案を「余剰人員の調整策」として各組合に提案した。

 1、退職制度の見直し
  ① 退職条件=56歳以上の者の特別昇給は行わない。
  ② 在職条件=55歳以上のものの定期昇給、ベア、昇職・昇格は行わない。
 2、職員の申し出による休職
  退職前提の休職の適用条件として
  ① 55歳以下であること
  ② 復職前提の休職期間又は派遣期間満了日から1年以上経過していること。休職期間は2年、ただし1回に限り更新できる。賃金は、退職前提の場合は基本給、扶養手当、都市手当、住宅手当のそれぞれ全額。復職前提の場合は6割を支給、

休職制度の特例
 84年度までに56歳、57歳、58歳となる者については、本年度に限り従来の「職員の申し出による休職」を適用する。
 3、職員の派遣に関する取り扱い
 (1)① 派遣目的=関連企業の指導・育成・強化
    ② 人材の育成
    ③ 国鉄の業務に関連する事項の調査・研究
 (2)派遣職員の決定=①本人の職務経歴、適性等を総合的に勘案の上所属長が決定する
    ② 決定に際して派遣先、期間、就労条件を明示し、同意書を提出させる。
    ③ 職員は派遣希望調書に記入、提出できるものとし、所属長はこれを参酌する。
 (3)派遣期間=三年を超えない範囲とする。
 (4)派遣期間中の勤務条件=派遣先の就業規則などによるが、年休の付与日数、有効期間は国鉄の規定による
 (5)派遣の種類=① 期間満了、② 業務上の理由により派遣職員を復帰させる必要が生じたとき、③ その他、派遣継続が不可能又は不適当と認められるとき。
 (6)復職時の取り扱い=① 原則として派遣前の所属・職名に復帰させる。
   ② 必要時の応じて教育・訓練等を行う。                    
国鉄当局は、これまで余剰人員を”ブラ勤”状態にさせないためと称して余剰人員を狭い部屋に押し込め「研修」なるものを実施したり、あるいは線路脇の草むしり、駅舎の窓ふきなどさせたり、増収セールスや特別改札などに充用してきた。三項目の提案のうち一時帰休は比較的若い層を中心に潜在的な転職・休職希望者の掘り起こしが狙いとされ、勧奨退職制度は一万人以上いる55歳以上の高齢層の定昇やベア、退職時の特別昇給をストップすることによって退職を促進することが狙いとされた。出向は、実際には国鉄の出資企業や下請け企業の新規採用ストップを前提にした余剰人員調整策であった。
 以上の提案に国鉄内の各労組はすべて反対した。国労は次のような声明を発表した。

 「われわれは、この提案に対する心からの強い怒りを国鉄当局にたたきつける。・・・この提案は、世界に比類のない迅速・安全・正確なものとして誇り、培ってきた国鉄労働者3万人以上の事実上の首切りにとどまらず、さらに大量の国鉄労働者を職場から一挙に追い出すものである。・・・・国鉄労働組合は、労働者に犠牲を求めようとするなら当局首脳が、まず最初にその責任を明確にすることを求め、徹底して追求していく。同時にこの大量首切り提案に対しては、国民諸階層と連帯し、一人の首切りも許さず分割・民営化反対闘争の一環として、組織の総力をあげストライキ闘争などは壮大な闘いに総決起するものである。」

この日、全国からかけつけた組合員約5,000人が国鉄本社前で抗議集会を開いた。

続く

*1:【当時の国鉄では、定年制度はありませんでしたが、概ね55歳となった年の三月末で退職することが多かったのです。】