久々に更新させていただきます。
今回は、昭和59年2月以降の国鉄の動きについて、国鉄の部内誌などを参考に書かせていただこうと思います。
なお、組合視点の記事については、次回、組合史詳細解説 96-2として書かせていただきます。
ご了承ください。
約2万5千人の余剰人員
昭和59年の輸送システム改廃で国鉄では数多くの過剰人員が発生しました。
国鉄側の資料などによりますと、
計画 29,800人
実行 43,500人(+14,300)と当初計画よりも合理化が進んでしまいました。
退職予定者 22,000人
退職予定者が、当初の見込みを下回った原因は、年金支給開始年齢が55歳から56歳に延伸された為です。
この両者の差の約21,500人が58年度中に新たに発生した余剰人員であり,これに昨年から持ち越しの3,000人を加えた2万4500人が,59年度首における余剰人員の規模となったと書かれています。
余剰人員【過員】が発生する原因としては、機関区は工場の統廃合、駅のCTC導入などでの合理化など多岐にわたりますが、今まで合理化をしたくてもできなかったのが国鉄末期になって一気に行ったため、そこでも大きな歪みが生まれたとも言えます。
余剰人員対策は国鉄としても取り組んでいるが
国鉄としても、人員の有効活用を図るため、日本テレコム【初代】のような関連事業などへの転用なども図りましたが、こうした新会社を立ち上げてと言う場合は関係部局との調整や、法令の整備など時間がかかるため、一番多かったのが、直営売店や、外部委託事業の再直轄化等でした。
その辺を、国鉄部内誌、国有鉄道 昭和59年8月号から引用してみたいと思います。
(1)余剰人員の活用策
59・2ダイヤ改正以来、現実に余剰人員が大量に発生して以来今日まで、各地方機関等において様々な工夫を擬らし、地域の実情に即したキメの細かい活用策を推進してきた。その主なものは以下のとおりである。
- 増収・・・・・特別改札(大駅、無人駅、車内)、渉外セールス(団体募集、企画商品販売、指定券取次ぎ等)
- 経費節減・・・・・外注移行時期の繰り延べ、外注作業の一部直営施行(貨車解体、業務用自動車・機械の修繕、調査・設計業務等)
- 教育・・・・・フロントサービス教育、多車種化教育、管理者教育、技術レベル向上のための教育等
- その他・・・・・用地の再チェック、波動対策(除雪、海水浴、各種イベント)、その他
これらは、営業基盤の確立・開発、経費規模の縮小、将来の鉄道運営への基盤整備等、何れも重要な意義を持っており、また最も基本的な余剰人員対策であるため、今後もより一層の深度化をはかるとともに、内容を充実していくことが必要である。
実際、今までは業務委託していた作業、古いブレーキホースのブレーキ管からの回収や、
さらに、国鉄は、余剰人員対策として昭和59年8月になると、「余剰人員対策委員会」なるものを設置し、 余剰人員に関するあらゆる問題を総合的に調整 ・審議したそうで、その中で出てきた施策の一つが、「特例休職」(退職を前提にした休職希望者の募集=56歳以上の者の勧奨退職)の制度でした。
特例休職制度とは
特例休職制度は、その後民間会社でもよく見られたいわゆる、肩たたき制度であり、55歳以上は給料上げないよ。【定期昇給も特別昇給も無し】としたもので、現在民間企業の多くでも、55歳の役職定年制度を設けているところが多いのですが、国鉄のこの方式を参考にしているのでは無いかと考えています。
この辺は、もう少し調べて見る必要がありそうです。
他にも、55歳以下の職員に対して二つのオプションを用意しました。
一つは往復切符の休職、もう一つは、片道切符の休職
いわゆる、復職前提の休職と、退職前提の休職で、それぞれ次のような特徴が有りました。
少し長いですが、全文引用させていただきます。
退職前提休職
1..適用条件
退職前提の休職を適用する場合の条件は、休職期間満了時に退職する旨の意思表示があることのほか、次の各号に定めるところによる。
- 休職の発令予定日の属する年度の末日において、年令満55歳以下であること。
- 休職の発令予定日が、復職前提の休職の期間又は派遣期間の満了日から、原則として1年以上経過していること。
2.休職期間
休職期間は次の各号に定めるととろによる。ただし、休職期間中において退職の意思表示があった場合は、その日をもって休職期間満了の日とみなす。
- 休職の発令予定日の属する年度の末自において、年令満55歳未満の者・・・・・1年
- 休職の発令予定日の属する年度の末日において、年令満55歳の者・・・・・・・当該年度の末日まで
3.休職の申出
- 職員が退職前提の休職を申し出る場合は、所定の休職願に、辞職願を附して所属長に提出しなければならない。
- 休職を発令された職員は、前号の辞職願による退識の意思表示を取り消すことはできない。
4.休職の承認
職員から休職の申出があった場合、所属長は要員需給上休職させても差し支えないときに、1項に定める適用条件を審査のうえ、遅滞なく休職を発令するものとする。ただし、余人をもって代えがたい業務に従事している場合など休職を発令するのが適当でないと認められる場合には、休職を承認しないことがある。
5 .休職期間中の身分
休職者は、職員としての身分は保有するが、その職務に従事しない。
6.休職理由の競合
休職者から、公務による疾病が発生した旨の申出があり、その疾病が「公傷病」と認められる場合には、休職理由の発令替えを行うものとする。
7.退職の扱い
所属長は、退職前提の休職の期聞が満了する日をもって、退職を発令するものとする。以上のように、55歳以上は基本的に退職前提の休職制度が導入されたほか、55歳未満の若年層を中心に、復職前提の休職制度も設けられました。
引き続き引用させていただきます。
原則2年間が休職期間で、その間給与は60%が補償され、他の仕事をしても構わないこととされています。状況報告を行う義務はあるものの、就業の制限等はされていませんでしたので、専門学校に行ったり、資格取得のための勉強なども可能でした。
なお、更新は一度だけ認められており、最高4年休職することができるようになっていました。
なお、退職前提の休職では、給料は100%補償(各種手当てを含めて)されるなど、その扱はかなり異なるものでした。
復職前提の休職
1.適用条件
復職前提の休職を適用する場合の条件は,次の各号に定めるところによる。
- 休職の発令予定日の属する年度の末日において,年齢満50歳未満であること。
- 休職の発令予定日が,派遣期間の満了日から原則として1年以上経過しているとと。
2 休職期間
復職前提の休職の期間は2年とする。ただし,一回に限り更新できるものとする。
3 休職の申出
職員が復職前提の休職を申し出る場合(更新の申出の場合を含む)は,所定の休職願を所属長に提出しなければならない。
4.休職の承認
職員から休職の申出(更新の申出を含む〉があった場合,所属長は要員需給上休職させても差し支えないときに1項に定める適用条件を審査のうえ,遅滞なく休職を発令するものとする。ただし,余人をもって代えがたい業務に従事している場合など休職を発令するのが適当でないと認められる場合には,休職を承認しないことがある。
5.休職期間中の身分休職者は,職員としての身分は保有するが,その職務に従事しない。
6 休職理由の競合
- 休職者から,公務による疾病が発生した旨の申出があり,その疾病が「公傷病」と認められる場合には,休職理由の発令替えを行うものとする。
- 休職者が刑事事件に関し起訴された場合は,休職理由の発令替えを行うことがある。
- 休職者に対し,公共企業体等労働関係法(昭23年法律第257号〉第7条第l項但書の規定に基づき,所属長が専従休職を許可した場合は,直ちに休職理由の発令替えを行うものとする。
7.休職状況報告
休職者は休職期間中,所属長の指示に従い状況報告を行うものとする。
8.復職
所属長は,復職前提の休職の期聞が満了する自の翌日をもって,復職を発令するものとする。ただし,必要と認める場合は,期間満了前においても復職を命ずることがあるものとする。
引用以上
当局としても、55歳以上の退職を促進したかったというか、実質的に55歳以降の職員を大幅に退職させることが目的であったようで、昭和60年監査報告書では、下記のように書かれています。
勧奨退職を促進するための退職制度の見直し、 いわゆる一時帰休を含めた休職制度の改訂 ・拡充、 関連企業等への派遣制度の拡充を行い、これら諸制度の活用により退職者数約3万人 (55歳以上の職員の退職率は従来を大幅に上回り90%となった。)
大幅な退職者が発生したわけですが、それでもまだ、国鉄では更なる合理化で多くの余剰人員が発生することになるのですが、その辺はまた改めて書かせていただこうと思います。
国鉄監査報告書昭和59年から抜粋
最後までお読みいただきありがとうございました。
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