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鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 99

本日も、国労の労働運動史を底本にして、昭和59年当時の国労の動きを中心にして、国鉄改革の歩みを見ていこうと思います。
そこで、当時の国労だけでなく、動労の動きにも注目してみたいと思います。
国有鉄道という国鉄部内誌を参照しますと、昭和59年7月~8月にかけて開催された国労動労、鉄労などの組合大会の様子が書かれており、詳細は不明なるも概要を知ることは出来そうです。
そこで、少しずつその辺を抜き書きしながら、当時の各組合の考え方を見ていきたいと思います。

人員削減・貨物輸送削減・ローカル線廃止のいわゆる三項目には動労も反対

昭和59年10月号の国有鉄道を参照しますと、7月17日から20日まで秋田市で、国労の山崎委員長も出席した動労の大会における、最終の集約答弁で、動労の福原書記長は、以下のように答弁しています。

福原書記長の集約答弁は最終日の20日,次のように行われた。
社会党違憲合法論,原水禁の問題,84春闘の惨敗など,われわれにとってピンチが続いている
時,国鉄問題でも仁杉総裁の発言,鉄労提言,三塚氏の著書と矢継ぎ早に分割・民営化の動きが出ている。いよいよ正念場を迎えた。
骨身を削るという動労提言の姿勢は地域住民や関係労組員の共感を得た。それが中央大行動の成功につながったと思う。労働運動の惨状の中で動労は一定の集約をしてきたが,国労は組織を強くしてきたのだろうか。
観念の世界でなく,現実にあるべき姿をみなければならない。国鉄再建フォーラムでの協議も大切にしながら60・3ダイヤ改正の節に向けて全力をあげる。
3本柱(3項目のこと)は基本的に反対している。団交で受けられないというならフォーラムがある。場合によっては臨時中央委員会を聞く。そのうち過員問題に政治が介入することも考えられる。
したがって3本柱は職域の拡大などという視点からも考えていく必要がある。雇用安定協約の再締結もやっていかなければならないが,当局が一方的に実施してきたらストで闘う。

国労とは、この頃から既に考え方は異なっていましたが、3本柱(3項目のこと)は基本的に反対している*1

と明言しています。

ただし、国労との共闘については距離を置いているようで、話は前後しますが、来賓として呼ばれた、国労の山崎書記長は下記のように挨拶しています。

再び、引用したいと思います。

冒頭、佐藤委員長は「いまの状況では、自らが"職場と仕事と生活"を守る以外にない。そのためにも動労提言を実現させなくてはならない。国労共闘については、既成のエゴイズムを打破しなくては解決しない」と挨拶した。
来賓挨拶には、公明党の近江巳記夫衆議院議員(運輸委員会理事)、地元の佐々木秋田県知事らが行った。また国労は、57年の洞爺湖大会に当時の武藤書記長(現・委員長)が出席して以来、2年ぶりに山崎書記長が出席し、「動労国労との理念の違いはやむを得ないが、雇用と労働条件を守らなければならないという点では一致している。また共通の課題で共闘してきた歴史的事実もある。正常でない関係について十分話し合いたい。すべての点で共同行動をとか、組織合同をといっているのではない」と述べた。この発言は、7月24日からの総評大会でも行われ、動労も「こちらから共闘を否定したことはない」と態度を明らかにしている。しかし、現時点では関係修復までの具体的な詰めは進められていない。

と、国労としては共闘を求めようとしており、動労としても拒否するわけではないと言っていますが、結果的に双方の溝は埋まらず、別々の道を歩むことになったのはご存じの通りです。

動労は、動労提言で国民にアピール

 動労は、その辺に対しても下記のように述べています。

執行部は「59・2ダイヤ改正後の減量、攻撃にわれわれがどのように対処,撤回しているかという点も理解してほしい。動労提言は地域住民の利便性を守ることを大きな目的にしている。各地本でもそれをどう闘っていくか考えていくべきだ」(佐藤交渉部長)

として、動労の場合は、組織がなくなってしまうと、組合運動自体が消滅するとして、上記のような答弁をしています。

ただ、組合員の中には労働強化に対してストで対抗せよといった強硬派の意見もあるのですが、その辺は中央執行部が押さえつけていると言った期待があり、それが上記の発言に繋がっています。

さらに、動労はちゃっかりと、国民のための国鉄として運動していますよと下記のような記事を書いて宣伝しています。

実際、小倉~博多間の増発や、するがシャトルの実現などは動労からの提言であるとしています。
市民出版社刊「鬼の動労の緊急提言」から、引用してみたいと思います。

  するがシャトル出発進行

五九・ニダイヤ改正から、静岡駅を中心にして島田-興津間に、一五分間隔で運転する。"するがシャトル"がスタートした。

これは「定時間隔の運転」を意味していることであるそうだが、この要求は古く、動労の静岡地本が53年の改正から始めたものだった。現在ある電車を最大限利用し昼間体を中心に、短編成で列車増発せよ、というのであった。
 それがようやく陽の目を見たのは五七・一一の改正からで、今回の五九・二が本格的な出発進行である。この列車増により「時刻表を気にせずにいつでも乗れる国鉄」と好評を博し、乗客も前年度比約五%の増となっている。さらにいま続けて利便性を高めるために沼津圏や浜松圏へもひろげ、新駅の設置まで含めて要求し、地域住民と一緒に活動を展開している。

鬼の動労の緊急提言

動労の提言から、するがシャトルなどの実現

と言った具合でしたが、残念ながら国労ではこうした時期にどのような状況であったか改めて、国労大会に様子を見ていきたいと思います。

国労の動きはどうだったのか?

国労は8月20日から23日まで静岡県伊東市で第四六回大会を開催しており、開催され、冒頭挨拶で下記のように発言しています。

武藤委員長は、「行革攻撃には長期戦略に立った反撃態勢の確立こそ緊急の課題」とする考えをペースに、それは、

  • 政治戦線と労働戦線・国民共闘の強化
  • 反自民反独占の視点に立った反行革闘争の強化
  • いつ、どこで、だれと、何をもって闘うかという主体的力量の強化、
の3つだと述べた。
同時に総評労働運動の勢いを廷らせることは国労自身の力を増すことにもなるとしfこ。また、当面の「過員」(国労ではこのようにいう〉対策について、「再建の道筋さえ示されない3条件(いわゆる勧奨退職、一時帰休、出向)を受け入れることは、失業と首切りの片道切符を握らされることであり、絶対に許せない反撃の道はいくつも残っていないが、有利でない国民世論のつくり変え、論理的であっても行動的な面の少ない組合員及び活動家の主体的力量の強化や組織の再整備、再点検の上に総団結すべきだ」と主張した。

来賓挨拶では真柄総評事務局長が「分割・民営化問題に積極的に対応していくが、動労ともそれに反対という一致点があるならば戦略的に対しても一致できるよう努力してほしい」とし、動労から久方ぶりに出席した福原書記長は「総評大会でも共闘への努力を明らかにしている。余剰人員問題は一過性ではない。総評強化にしても国労が最大組織としての中心軸になって闘う任務がある」と述べた。

動労が寄り現実的な路線を選択し、世論を味方に付けようとしていく中で、国労は懐古的とも言える階級闘争にそのエネルギーを割いているとしか見えません。

結果的には、国労は当局に押しきられる形でとなり、動労・鉄労・全施労などは、当局の強提案を受けいれますが、強硬に反対してきた国労や全動労、千葉動労に対しては、雇用安定協約の解約を通告することとなり、こうした一連の流れが、組合員の不安を生むことになりました。

 

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第2章、国鉄分割民営化攻撃と国労攻撃

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 第3節 59・2ダイヤ改正後の余剰人員対策をめぐる交渉
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 一 余剰人員対策第三項目の交渉と雇用安定協約の破棄通告

┌────────────────────────────┐
├○ 休職制度と派遣制度についての提案と動労などの先行妥結│
└────────────────────────────┘

 「特例休職」の交渉が妥結し、続いて10月10日実施予定の「余剰人員の調整策」余剰人員対策三項目)の本格交渉が開始されることになった。交渉は、復職前提の休職制度と派遣制度にかかわる問題であった。連日の交渉が続けられたが、10月9日になって国鉄当局は以下の新たな提案を行った。
 ① 「退職制度」については国鉄当局は10月10日から6ヶ月延長し引き続き交渉する。
 ② 「休職」「派遣」については、これまでに示した当局の考え方に加え、復職前提の休職者および派遣社の復帰について所属長の文書で該当の職員に対し明確に保証する。
 ③ 「休職」「派遣」については、9月24日までの妥結を強く要望する、妥結に至らない場合は雇用安定協約の存続について重大な決意で臨まざるを得ない、と一方的実施の意向を示した。
 当局の強硬ともいえる提案を受けて、動労は「職場を失っては、生活はもとより、労組も運動もあり得ない」と判断し、雇用安定協約の確保を重視して妥結し、全施労も足並みをそろえた。鉄労は、余剰人員対策では余剰人員の活用と業務外注化の見直しなどの方針を掲げていたが、ある程度納得出来る回答が得られたとして妥結した。
 よく10月10日早朝、当局は国労に対し団体交渉を打ち切りを通告してきた。そして11日には雇用安定協約を85年1月11日を持って解約したい、との通知を国労、全動労、千葉動労に行った。国労は、団体交渉否認の態度を改め、誠意をもって要求を解決せよという目標を掲げた闘争指令を出した。それは徹底した抗議行動とともに「休職」の募集、「派遣」の希望調書には一切応じない組織的な取り組みの強化、ワッペン着用闘争の継続、非協力闘争、11月下旬にはストライキを含む全国統一闘争を実施するなどの指令であった。
 また、国労は、社会党など各方面に働きかけ、労働大臣や運輸大臣とも会見し、「監督官庁として国鉄を適切に指導」するよう求めた、国会においても運輸委員会で国鉄問題を審議され、社会・共産両党の議員が「余剰人員対策三項目」を一方的に実施した国鉄を批判し、組合との合意ができるまで中止せよと迫った。こうした働きかけにも関わらず団交再開に至らなかった。

続く

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*1:三項目とは、人員削減、ローカル線廃止、貨物輸送縮小・削減を明言した経営改善計画のこと