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国鉄労働組合史詳細解説 104

久々に更新をさせていただきます。

本日は、国鉄当局が提案した、依願者休職に対する動きについて、国労・当局の双方から見ていきたいと思います。
国労史では、撤回のみを強力に推し進めた点しか記述されておらず、国鉄部内誌や千葉動労など他の組合の資料等を参照しながら補強していきました。

今後は、動労の運動史なども購入するなどして他の組合史と比較しながら中立的視点から記述できるようにすべくしていく所存です。

依願休職募集に対する動き

国鉄の施策の一つであった、「依願休職」に関しては、本社は10月10日からの実施を予定していました。

国鉄当局が、この制度に踏み切った背景については、太田職員局長は、国鉄部内誌【国有鉄道】で下記のように語っています。

国有鉄道 余剰人員対策について、太田職員局長に聞く

余剰人員対策について、太田職員局長に聞く

記事によりますと、国鉄の輸送見込みが予想以上に減少したこと
余剰人員の問題は、一過性のものではなく、要員需給構造が変化した

  1. 国鉄の輸送見込みが予想以上に減少した
  2. 余剰人員の問題は、一過性のものではなく、要員需給構造が変化した
  3. 国鉄内でも増収活動などの自助努力を行ったが限界に達したと判断した

として、今回の依願休職の導入はやむを無かったものであるとしています。

1 国鉄の輸送見込みが予想以上に減少したことに関しては、下記の通りインタビューで答えています。

余剰人員を生ずるに至った基本的な背景は、論送量の減少であり、当初の経営改善計画では、昭和60年度初に35万人体制を実現するということを目標にしていました。

計画では、年齢構成のピークを迎えていたため退職人員が合理化目標を上回っており、むしろ若干の新規採用をしながら35万人体制に移行することが可能だという考え方をしていました。これは、輸送量の見込みが旅客において微増、貨物において横ばいという前提があったからです。

ところが、輸送量の実績は、空港の整備、高速道路の延伸等による競争の激化により旅客は微減、貨物は激減となり、経営改善計画の基本的な前提が変わりました。
要員面についてもは、当初計画した合理化目標を更に上回る目標を設定しなければならないということとなり、さる5月に運輸大臣のご承認を得て、60年度初32万人体制へと、経営改善計画の修正を余儀なくされたわけです。ところが、輸送量の実績は、空港の整備、高速道路の延伸等による競争の激化により旅客は微減、貨物は激減となり、経営改善計画の基本的な前提が変わりました。
要員面についてもは、当初計画した合理化目標を更に上回る目標を設定しなければならないということとなり、さる5月に運輸大臣のご承認を得て、60年度初32万人体制へと、経営改善計画の修正を余儀なくされたわけです。

2 余剰人員の問題は、一過性のものではなく、要員需給構造が変化した事に関しては、以下のように回答しています。

修正された合理化計画と退職人員とを比較すると、合理化数が退職人員を上回る現象がでてきました。これが余剰人員発生の基本的な背景です。
将来の輸送量の動向が厳しいことや、早急に私鉄並みの業務効率化を達成しなければならないこと等を勘案すると、合理化は今後も一層努力して続けていかなければならない。反面、年齢構成からみて退職人員が今後大幅に減少していくことから、余剰人員問題は、要員需給構造が変化したことによるものと判断したのです。

3 国鉄内でも増収活動などの自助努力を行ったが限界に達したと判断した事に関しては、以下のように回答しています

 余剰人員対策について、まず企業内での活用でと対処してきました。
各地方ごとに要員事情も違い、地域の事情も違うので、それぞれ創意工夫をとらし実情にあった活用策
一一大別すれば教育、増収活動、経費節減、施策の深度化等ですが一ーを講じてきたわけです。しかしながら、余剰人員の規模並びに今後の見通しを考えると、活用策だけでは不十分であることが明らかになりましたので、民間企業における諸々の対策等を参考にしつつ、有効な調整策を講じていくことが必要であると判断し、出向、復職前提の休職を打ち出したわけです。
今回の調整策が制度として整備されず、あるいは有効に機能しないということになると、国鉄波佐羅に厳しい状況におかれることとなり、職員の雇用安定基盤が揺らぐということにならざるを得なくなるると発言しています。

また、これに関連して国鉄は、国労、全動労に対して、雇用安定協約の破棄を10月11日に申し入れることになりました。

それでは、これに関連して、国労の全国大会の様子などを再び、国鉄部内誌、「国有鉄道」の9月号から見ていきたいと思います。

 

常務理事 太田職員局長

常務理事 太田職員局長

国労は、依願休職募集にたいして、闘争で対抗

9月14日には、9月中旬から10月上旬を分割・民営化反対、首切り「3項目」撤回を目指す第6次全国統一闘争と位置づける闘争指令3号が出された。この間に全組合員が取り組む課題として、メモ活動の徹底やワッペン着用闘争、「500万署名」活動などが指令された。

と書かれていますが、国労が全動労、千葉動労など共に、雇用安定協約を破棄されています。千葉動労も雇用安定協約の破棄を受けたのは、下記の日刊千葉動労で確認することが出来ます。

日刊千葉動労 1984年10月24日号から抜粋

日刊千葉動労 1984年10月24日号から抜粋

千葉動労は雇用安定協約を結んだ動労との確執もあるのですが、複数の組合を概括することで、出来るだけ当時の様子を再現していければと思います。

千葉動労では、動労組合員が千葉動労の年配職員【56歳以上】の退職を強要するためのいじめが行われたと報告されています。


国労は、雇用安定協約そのものを破棄されており、組合員にも動揺が有ったと思われますが、この時はまだ国鉄最大の組合は国労で有り、組合の力で雇用は守れると思っていたのか組合員の中での大きな動揺はなかったようです。

さて、再び国鉄当局の見解を再び参照したいと思います。

一一そういう事情を踏まえて、10月11日に、未妥結の国労及び全勤労に対して、いわゆる雇用安定協約を解約したい旨の通知を行ったわけですね。

太田  そうです。余剰人員の問題は、国鉄再建の成否を左右する死活的な重要問題であり、国鉄が自ら持つ能力、資質のすべてを投入して解決すべきものであります。そこで役員会で何度にもわたって真剣な議論をしたうえで最終的な判断をして6月5日に各組合に対して、伝えることとし、7月10日には具体案をとりまとめて提案したのですが、一部組合から、首切りにつながるのではないかとか、段階的な首切りだという発言がありまし た。しかし、これは、雇用を安定させるための方途であり、判断をして提案しているのであり、また、世間の常識にもかなっているのだということを、何度も述べて理解と協力を求めてきました。また、私はいろいろな機会にいってきたのですが、今回の調整策はみんなの理解と協力を得ることによって必ず効果を発揮し得るはずなのだ、そのととにより、雇用安定協約は存続の基盤を確保し得ると信じているということ、いいかえれば、われわれの努力、労使の理解、協力によって雇用安定協約が存続する条件を自らの努力によって作り出すのだと考えてもらいたい。このようにいってきたのです。そして、大詰めを迎えた10月9白には、それまでの交渉経緯をも踏まえた、当局としての最終的な条件を提示し ま したが、その際、不幸にして妥結に至らない場合には、当局として、雇用安定協約の存続について重大な決意をもって臨まざるを得ない旨申し添え、同日24時までに妥結することを要望して、ギリギリの段階まで最大限の努力を致しました。しかし、残念ながら、国労及び全動労は、向日24時に至っても妥結するに至らなかったため、これらの組合とは雇用安定協約に基づく雇用の安定を維持する基盤を維持できなくなったと判断せざるを得なかったわけです。

と記されています。

国労としても、労働運動史に書けないとは思いますが、少なくともこうした当局の動きに対して、「分割・民営化反対、首切り「3項目」撤回を目指す第6次全国統一闘争と位置づける闘争指令3号が出された。この間に全組合員が取り組む課題として、メモ活動の徹底やワッペン着用闘争、「500万署名」活動などが指令された」と書かれています」

当局は、雇用安定協約の破棄で対抗することに

この辺の事情は、国労全国大会での答弁などの内容が参考になりますので、再び国有鉄道昭和59年10月号から引用したいと思います。

山崎書記長の集約答弁は8・31全国統一半日ストを設定するなどを柱に次のように行われた。「3項目」の職場討議は、49, 52, 56年の公労委あっせんの経過を全員のものとし、多くの労組に訴えて共闘を拡大してほしい。56歳以上の仲間には、一人ひとりに組合機関が介入する必要がある。55歳以下の退職前提の休職についての検討は、今日直ちに要求は提出しない。雇用安定協約、職安法62条及び66条を考えているためだ。復職を前提とする休職や派遣は、法律的にも問題が多く、われわれの法律的な解明要求について当局は明確な回答はできないとしている。

「3項目」の撤回を求めていく。8・31ストは零時から12時まで列車運行に影響を与えることで行う。9月下旬から10月上旬の闘いは当局が10月10日に妥結したいとしている「3項目」の動きを見ながら決める。退職条件と在職条件は一つのものであり、場合によれば10日を越えて闘う構えもとらねばならない。

ということで、募集が始まる、10月10日以降も撤回を求めて闘うとされていました。 

国労にしてみれば、「雇用安定協約」があるので、簡単に解雇されることはないと思っていたようですが、当局は最終的には、国労、全動労に対して、「雇用安定協約の破棄」という手段で対抗することになりました。これは国労にとっても想定外であったようです。

なお、雇用安定協約は、下記のような内容です。

日本国有鉄道法第29条4号では「業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じた場合は、職員を免職できる」とされています。
これを救済するため、「合理化等の実施に際しては、職員の意に反して免職、降職はしない」と、労使間で雇用の安定を約束しています。

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************************以下は、国労の資料から引用になります************************

 
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第2章、国鉄分割民営化攻撃と国労攻撃

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 第3節 59・2ダイヤ改正後の余剰人員対策をめぐる交渉
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 三 第二次提言と国労の対応

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├○ 分割・民営化方針に対する抗議│
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 国労は、第2次緊急提言に対して総評、全交運、動労との4者共同で次のような抗議声明を発表した。「分割・民営化の基本方向を打ち出し、本格的な雇用調整実施策や地方交通線廃止促進などを求めた国鉄解体論ととも言える提言を容認することはできない」これに対し、鉄労は、「現状の基本認識については鉄労の分析と一致しており、評価したい。ただ分割・民営化の方向については、われわれと意見を異にして」いるとの見解を発表した。

 第2次共同宣言が発表された8月10日、国労は分割・民営化に反対し、9月1日からの「依願休職募集開始」提案の撤回を要求して、始業時から2時間の全国統一ストを実施した。8月20日~23日の4日間、国労の分割・民営化反対と首切り3項目、【勧奨退職の促進、一時帰休の導入、派遣制度の拡充】提案も新たな余剰人員を作り出す合理化事業もローカル線廃止も臨調行革路線による国鉄分割・民営化攻撃とみなし、総力を上げて対決する方針を決定した。
 全国大会直後の8月24日に国鉄の分割・民営化反対、首切り「3項目」撤回について、8月31日に反日ストの闘争指令が出された。9月1日からの休職募集について、8月31日に反日ストの闘争指令が出された。9月1日からの休職募集について公労委へ撤回を求めて斡旋を申請していたものが、労使ともに団交継続の斡旋を受諾したため直前で中止となった。9月14日には、9月中旬から10月上旬を分割・民営化反対、首切り「3項目」撤回を目指す第6次全国統一闘争と位置づける闘争指令3号が出された。この間に全組合員が取り組む課題として、メモ活動の徹底やワッペン着用闘争、「500万署名」活動などが指令された。国労は、11月から始まった第7次全国統一闘争の一環として12月6日には国鉄の分割・民営化反対、雇用と権利を守る中央集会を日比谷野外音楽堂で開いた。この集会には5,000人を超える国労組合員に加え国関労の組合員も参加した大集会であり、この日までに集約した「500万署名」の数は約340万にのぼった。

続く