職場規律の是正に取り組む国鉄当局
83年6月16日に当局から新しい協定案を提示された。提案された内容は、マル生闘争収拾時に「紛争対策委員会」でとりかわした労使確認を否定したもので、〝信賞必罰?体制の構築による職場管理の強化をねらったものであった。
そもそも、「紛争対策委員会」どのようなものであったのでしょうか。
生産性運動中止後の国鉄当局と、国労・動労が作った委員会
国鉄当局は、「生産性教育について、教材などを点検するため、一時延期(2ヶ月)する」と国労・動労に通告、実質的には中止声明でありますが、現場管理者や鉄労の反発を考慮してか、中止とは言わず、見直しを図ると言う形で収拾を図りました。
さらに、この中止を受けて、昭和46年11月5日には前述の「紛争対策委員会」が設置されることになりました。
紛争対策委員会での検討事項は下記のとおりでした。
- 不当労働行為者の処分
- 不利益を受けたものの救済と回復
- 昇職、昇格の基準
- 昇給の基準
- 功労賞の授与基準
- 要員、勤務の基準
- 権利、慣行の復活
等でした。
ここで書かれていますように、組合側としては、駅長や助役など現場管理者の処分と、昇給、昇格の基準を曖昧にしてしまう事が主たる目的となっていました。
紛争対策委員会は、職場の働きがいを失わせる制度
紛争対策委員会での改悪案は、本来現場管理者が持っている人事権すらも無効化させ、職場の荒廃を招く結果となりました。
鉄労友愛会議編纂の史料から、「紛争対策委員会」について見ていきたいと思います。
- 不当労働行為者の処分
駅長、助役の追放又は左遷であり、1,000人以上の現場管理者が左遷されたり、辞めていったと言われています。
- 昇職、昇格の基準
従来は、本人の能力と勤勉、試験の成績、更に勤続年数、年齢、職群経過年数を加味して、現場長が昇格者を決定
なお、ここで言う職群とは仕事の難易度のより1~12の職階に分けており、アルバイトが習熟度合いに応じて時給が上がる、そんなイメージをしていただけると判りやすいと思います。
これが、3・4・3の昇格基準に基づき行えという方針を当局から引き出すこととなりました。
これは、3(勤続年数)4(現職名の経過年数)3現職群経過年数でこれを合算したものを高い数値の順から順番に昇格させようというものでした。
さらには、処分の受けたものの回復昇給の100%実施、解雇者の再雇用など、およそ組合の侵食されてしまった国鉄当局の姿がありました。
個人的には、国鉄当局がここまで譲歩する必要は無かったと思うのですが、組合にしてみれば総裁が陳謝したということで、有頂天になったものであろうと思われます。
なお、この紛争委員会は、昭和47年9月に、労働組合との聞に労使正常化について合意に達し、 同委員会は廃止された。
とされていますが、必要以上に現場の管理者から人事権を奪ったやり方は、職場の荒廃を招くとともに、職員のやる気を失わせる結果となり、昭和47年の監査報告書では、その辺を指摘しています。
少し長いですが引用してみたいと思います。
昭和47年国鉄監査報告書P55~56
職場における管理の充実をはかるため、 職場の実態は握、管理部門と現業部門の連係強化等に努めてきた。しかしながら、いまだ現場管理者は、職場規律の確立と明るい職場づくりに日々苦慮 しているのが現状である。したがって、上部機関においては、さらに労使関係の改善に努力を重ねるとともに、国鉄運営の基盤であ る職場管理について、現場管理者が自信をもって取り組めるよう強力なパックアップが必要である。そのためには、 現場管理者の職務に関する意見を尊重しその自主性を発揮でき るよう、きめ細かい配慮に努めるとともに、管理上過重となっている負担について有効適切な措置を講ずることなどが肝要である。一方、現場管理者については、各種研修講座およ び技術教育を徹底し、近代化に即応できるよう な資質の向上なら びに職員の意欲と創意を発揮させるような指導能力の育成をはかるとともに、その職務に相応した処遇の改善について考慮する必要がある。また、教育の場等あらゆる機会を通じて管理者相互の意思の疎通を徹底的に行ない、の一体感を高めることが重要である。最近における一部の職場には、管理者と職員または職員相互の聞に人間関係の円滑さを欠き、将来に対する不安感等とあいまって、職員の職務遂行への意欲が低下している面もみられる。
このような状態ですから、国鉄当局の中で真面目に働く方が馬鹿を見ると言う状態になってしまい、職場は更に荒廃していくことになるのですが、ここで得た既得権益が昭和57年頃から「職場規律の是正」ということで、改善(国労的に見れば改悪)されてくるわけで、今回も新しい提案として、既得権益を大きく損なう提案をされたと憤慨し他という発言に繋がるわけです。
是正に動く国鉄当局、反発する国鉄労組
なお、今回当局が改変しようとしている点は、以下の通り。
常識の
- 地方交渉制度の廃止
- 私傷病欠勤の特例を従来より短くした
- 協定3項8号(欠格条項)の適用基準「勤務成績が特に良好でない者」の表現が「平素職員としての自覚に欠ける者、勤労意欲、勤務態度、知識、技能、適格性、協調性等、他に比して著しく遜色のある者をいう」と改悪された
- 回復昇給では、停職、減給7カ月以上の者を「4年間以上」、その他「3年間以上」とし、しかも経過期間中に欠格条項に該当した場合は、「経過期間を1年以上延長する」等改悪された
と書かれていますが、少なくともそれまでの基準が緩すぎたわけで、至極当たり前のことだと思うのですが、国労としては、既得権益が失われつつ有ると言うことになったのだと考えられます。
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国鉄があった時代 JNR-era
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国労は、期限切れとなる「昇給の実施に関する協定」の再締結を当局に申し入れていたが、83年6月16日に当局から新しい協定案を提示された。提案された内容は、マル生闘争収拾時に「紛争対策委員会」でとりかわした労使確認を否定したもので、〝信賞必罰?体制の構築による職場管理の強化をねらったものであった。