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鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 129-2

長らく更新出来ていませんでした、今回は国鉄分割民営化反対への国労の対応と言うことで見ていきたいと思います。

国労は一貫して、民営化反対を唱えていましたが、以下の国労独自の国鉄再建案を策定するにあたり、当時の大会の様子などが、国鉄部内紙【国有鉄道】に掲載されておりましたので、一部抜粋しながらご覧いただこうと思います。

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今回参照した、国有鉄道10月号 表紙

国鉄分割民営化への反撃、国労の対応

国労は、定期大会での分割民営化反対と余剰人員対策の撤回案を決めたと書かれていますが、具体的にどのようなものであったのかを見ていきたいと思います。

以下は、国有鉄道昭和59年10月号 視点論点という記事から引用したものです。

開会挨拶で武藤委員長は、「行革攻撃には長期戦略に立った反撃態勢の確立こそ緊急の課題」とする考えをベースに、それは、▽政治戦線と労働戦線・国民共闘の強化▽反自民反独占の視点に立った反行革闘争の強化▽いつ、どこで、だれと、何をもって闘うかという主体的力量の強化、の3つだと述べた。
同時に総評労働運動の勢いを甦らせることは国労自身の力を増すことにもなるとした。
また、当面の「過員」(国労ではこのようにいう)対策について、「再建の道筋さえ示されない3条件(いわゆる勧奨退職、一時帰休、出向)を受け入れることは、失業と首切りの片道切符を握らされることであり、絶対に許せない。反撃の道はいくつも残っていないが、有利でない国民世論のっくり変え、論理的であっても行動的な面の少ない組合員及び活動家の主体的力量の強化や組織の再整備、再点検の上に総団結すべきだ」と主張した。

とあるように、国労としては総評と連携して行く事で、国労の地位を高めていくとしていますが、当時の世論は、「有利でない国民世論のつくり変え」とあるように、国鉄の赤字問題をんとかしろという声が大きかったことも事実でした。

組合は、世論を転換していくとしていますが、かつてスト権ストライキ等で国民の信頼を失い、特に貨物輸送の大幅な減少を自ら招いたことを棚に上げた対応は、厳しいものがあったと言えます。

また、労使協調路線を打ち出している組合が、出向などを受け入れているの対して、ぜ「再建の道筋さえ示されない3条件(いわゆる勧奨退職、一時帰休、出向)を受け入れることは、失業と首切りの片道切符を握らされることであり、絶対に許せない。」として、断固闘うとしていますが、結果的にこうした反論は、国労の心証を更に悪い方向に持って行くことになるのですが、国労に不利な方向に大きく動くことになったのは、既に多くの方がご存じのことでしょう。

国労と距離は置きつつも、雇用の確保で一致する動労

国有鉄道昭和59年10月号 視点論点から、引用したいと思います

動労国労との理念の違いはやむを得ないが、雇用と労働条件を守らなければならないという点では一致している。また共通の課題で共闘してきた歴史的事実もある。正常でない関係について十分話し合いたい。すべての点で共同行動をとか、組織合同をといっているのではない」と述べた。この発言は、7月24日からの総評大会でも行われ、動労も「こちらから共闘を否定したことはない」と態度を明らかにしている。しかし、現時点では関係修復までの具体的な詰めは進められていない

とありますように、スト権ストの頃までは、共同で順法闘争などを行うなど歩調を合わせてきた国労動労ですが、この頃では互いにい距離を置くようになっていました。

特に、動労国労既得権益にこだわり、

国鉄の枠の中でつくりあげた既得権や権利の基盤が脆弱だとわかった時に、それを乗り越え、本物にする道筋が足りなかった。社会的に認められることが要求の基礎にならなければならないと考えるならば、あるいは日常の労働の対応について是正すべきものミがあるとするならば、それは労組の自主的な判断で正していくべきだJ

と言う発言が、国労の秋山企画部長から発言されるように、既得権益にこだわろうとしている組合員が多い中で、動労では、より現実路線として、線路が無くなれば国鉄としての存在意義が無くなるとして以下の通り、労働条件の低下も甘んじて受け入れると発言しているのとは、対照的と言えます。

「線路を取りはずされては国鉄としての存在がなくなる」と場合によっては労働条件の悪化も受けるとした。

というのは、動労が貨物関係を担当する乗務員が多かったこともあり、切実な問題であると受け止めていたからだと言えそうです。

鉄労は地域本社制導入を容認

鉄労の提案する地域本社制がマスコミには、分割民営化容認と取られて、そのように宣伝されてしまったことから。鉄労も分割民営化路線に乗らざるを得なくなるのですが、この時点では明確に地域本社制=分割民営化ではないとして明言していました。

その辺を再び、国有鉄道昭和59年10月号 視点論点から、引用したいと思います

国鉄が公社制から脱脚、地域本社制を中心とした経営体制になれば、とれに加盟する資格も持つことになる。加盟の方向を明らかにしたい。そうした鉄労の民主化闘争のためには組織拡大が絶対に必要だ」論議は▽鉄労提言の地域本社制導入▽余剰人員問題▽組織拡大の3点に集中したといっていい。とくに提言については、分割・民営化論との違いを明らかにすべきだとする意見ム率直にその方向へむいたワンステップとするべきだという2つの声が聞かれたが、方針案では「一方的な分割・民営化を阻止するため」のものと位置づけられた。

とありますが、地域本社制はあくまでも、 一方的な分割・民営化を阻止するためのものであるという答弁をしていますが。

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国有鉄道 昭和59年10月号の記事をキャプチャー

 

この辺に関しては、国鉄友愛会国鉄民主化の道で、現行の体制では再建は不可能であるし、分割民営化だけでは雇用を守れない、しかし、分割民営化を受け入れたわけでは無く、国鉄時代の支社制度を更に進度化させて、積極的に民間の手法を受け入れようと言うことで、当初から国鉄を分割・民営化することを目的としたものでは無いと言いたかったと主張していますが、マスコミ的には、「地域本社制」自体が分割を容認したものとマスコミは集まることになりました。

国労として独自の国鉄再建提言

 Ⅰ国鉄危機の現状とその原因」、「Ⅱ国鉄円建の基本的視点」、「Ⅲわれわれのめざす国鉄( われわれの要求)」3つの部分から成り立っており、国労が目指す国鉄の方針ですが、内容的には極めて正論なのですが、それまでの国労の運動(ストを行う組織というイメージを払拭できなかった)から、世論を動かすことは出来ませんでした。

 

続く

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第2章、国鉄分割民営化攻撃と国労攻撃

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第六節 国労国鉄再建提言
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├○ 一 国労国鉄再建提言│
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 国労国鉄再建案

 国労は、1984年8月に開いた第46回定期全国大会( 伊東)で、国鉄の分割・民営化反対・首切り( 余剰人員対策) 2項目撤回案を決めるとともに、国労独自の国鉄再建案を作成することを決定、この決定にもとづき作業がすすめられ、85年3月の第143回中央委員会に「国鉄再建への道=分割. 民営化に反対し・国鉄の民主的再建をはかるためのわれわれの政策要求」と題する案を提出し、承認された。この時期政策要求を提起したのは、国鉄解体、雇用危機の顕在化という差し迫った事態にあって、国鉄解体の攻撃を許さず国鉄労働者と国鉄関連労働者はもちろん広くは交通運輸労働者全体の雇用と労働条件をどう守りぬくかを基本にすえ、国民的合意のもとで臨調=行革攻撃に反撃する幅広い闘いの戦線を作りあげていく意味で、国鉄再建の政策要求の提起が緊急の課題となっていたからであった。
 この政策要求は、「Ⅰ国鉄危機の現状とその原因」、「Ⅱ国鉄円建の基本的視点」、「Ⅲわれわれのめざす国鉄( われわれの要求)」3つの部分から成り立っている。
  「Ⅰ国鉄危機の現状」では、①国鉄財政の危機として1983年度でみて20兆円の累積債務への元利払いに、単年度赤字 ( 1兆6604億円) を上回る2兆780億円を費消し、やがて は借入金のすべてを元利の返済に当てる事態が迫っていること、 ②輸送の危機、公共交通の危機については、不採算部門の切り捨てなどにより、「乗りたくても乗れない、送りたくても送れない」状態を作り出していること、③貨物や地方交通線の切り捨てや合理化が地域の産業. 経済. 文化. 教育に危機をもたらしていること、④国鉄に働くすべての労働者の雇用と労働条件を悪化させ、労働者の権利を危機にさらしていることを指摘し、こうした国鉄危機をもたらした原因として、「第一の原因=産業構造の変化と自動車優先、総合交通政策の欠如」「第2の原因11基礎施設に対する政府投資の不均衡、借金による設備投資と利子負担の増」、第3の原因=特定人件費の急増L「第4の原因=公共負担の補償ルールが確立されなかった問題」「第5の原因=借金を増大させる赤字累積方式」「第6の原因=政府. 国会の規制. 介入と自主性の欠如」「第7の原因=官僚主義的経営機構」などの複合する諸原因のからみあいが危機を深化させたとし、このからみ合いをときほぐし、「具体的な解決策を実行することなくしては国鉄の再建・再生」はありえないとした。
  「Ⅱ国鉄再建の基本的視点」として、①国民の「移動手段の確保( 交通権) こそ国の責任であり、公法上の法人たる国鉄こそその義務を負い、これを維持・発展させることができる」こと、②「私企業には期待できない公共企業体の積極的意義の確認と民主的改革」が必要であること、③国鉄で働くすべての労働者の雇用と労働条件を守り改善することが、安全輸送を確保するのに不可欠であること、④国鉄はこれまで全国ネットワークによる輸送サービスを続けてきたことによって有形、無形の社会的便益を提供してきたが、「このような金銭以外の便益として利用され享受されている部分に対しては、公共交通機関にふさわしい費用負担原則を確立」すべきである、と述べた。
  「Ⅲわれわれのめざす国鉄( われわれの要求)」として、「①公共交通を守れる国鉄、②利用しやすい、民主的運営の国鉄、③社会の発展に寄与できる国鉄、④積極的な事業活動のできる国鉄、⑤安定した経営のできる国鉄、⑥労働者の雇用が守れる国鉄」を掲げた。
 国労の「国鉄再建への道」と題するこの再建案は、比較的新しい考え方である「交通権」の立場を鮮明にし、国鉄公共企業体として維持・発展させることの積極的意義を打ち出していた。
 以上の再建政策をもとに国労は、85年4月に国民向けのパンフレットを作成し、配布した。このパンフレットは国鉄の分割・民営化の問題点として、「全国ネットワークを破壊し、国民の移動する権利を奪う」、各種設備などで「ムダを多くする」「安全・公害問
題をさらに深刻にする」「技術開発の分野をダメにする」「国鉄用地を、財界や一部の政治家の思うままにする」「利用者の負担増をまねく」「貨物・バス輸送を切り捨てる」「労働条件を切り下げる」
などをあげた。

続く