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鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 135

長らく更新出来ませんでしたが、久々に投稿させていただきます。 今回は、国鉄部内紙、国有鉄道も参照しながら国鉄を取り巻く環境を検証していきたいと思います。
 

 国鉄の分割民営化を容認していたのは鉄労のみ

国労動労、全施労、全動労が監理委員会の最終答申に対して、
  • 公共交通としての国鉄の位置づけがなく、不採算部門は徹底して切り捨てとなる
  • 分割による全国ネットワーク破壊について、具体策を明らかにしていない。
  • 長期債務については政府、財界、国鉄官僚の責任にふれず、用地売却など土地利権を確保するものとなっている。
  • 『余剰人員』対策は、労働者間に分断. 選別をもたらすと同時に、労働者の雇用不安を助長するものである。
  • 『分割・民営化』は”官業払い下げ”であり、公共交通の、国鉄再建ではない。
 以上のような要旨で4組合共同の抗議声明が発せられたわけですが、この時点(昭和60年)で明確に分割民営化を示しているのは、鉄労だけなのですが、どうもマスコミのミスリードからそうなったような雰囲気があります。
鉄労は分社化(国鉄時代の支社のような権限を強化したもので必ずしも分割した独立会社としての想定では無かった。)した地域会社と発言したのですが、これがマスコミには分割民営化を支持するということかと聞かれて、そのようなものであると発言したことから、鉄労は分割民営化を容認したようになってしまったように見えます。
それ以前は、鉄労も分割反対であっただけに、その辺の違和感がありました。
結果的には、強硬に反対する国労に対し、新たな主導権(イニシアチブ)を取りたいという思いから、分割民営化容認であるという方向に舵を切ったのではないかと考えております。
その結果、国労組合員の一部からは、鉄労が裏切ったと言う印象を持つに至ったと言えそうです。
 

監査委員会最終答申発表当時の各組合の立ち位置

再建監理員会最終答申発表当時の各組合の立ち位置、鉄労のみが分割民営化を容認

再建監理員会最終答申発表当時の各組合の立ち位置

と言うのも、当初は鉄労の唱える分社化は。かって存在した支社を地域本社として分割せずに民営化するのようなイメージを描いていたと考えております。

国有鉄道と言う雑誌の記事、労組大会の論議からを参照する

ここで、国鉄部内紙、国有鉄道という雑誌の、労使大会の論議からと言う記事を参照しながら、国労動労・鉄労の各動きを見てみたいと思います。

国労では、第4 6 回大会が、昭和59年8月2 0 日から2 3 日までの4日間、静岡県伊東市
で開催された。
開会挨拶で武藤委員長は以下のように問題を総括したようですが、国労としては強行に反対を表明していることが以下から窺えます。

  1. 「行革攻撃には長期戦略に立った反撃態勢の確立 こ そ緊急の課題 」
  2. 政治戦線 と 労働戦線 ・ 国民共闘の強化
  3. 反自民・反独 占 の視点に立った反行革闘争の強化
    いつ 、ど こ で 、だれと、何をもって闘うかという主体的力量の強化であると総括しています。

他には、総評労働運動の勢いを甦られることが国労自身の力を増すとしていた。
国労としては、当局が示した余剰人員対策【国労では過員と表現】に対して、出向や勧奨退職は一切受け入れられないとして、絶対に反対という立ち位置を崩していません。

結果的には、こうした硬直した考えに至る背景には、国労自身が一枚岩と言えず、多くの派閥の中で成り立つ連合体と言える存在であったことの悲劇と言えましょう。

こうして、国労の場合はイデオロギーに押されて、全体の中動労よりもかなり損な生き方をしたと言えそうです。

国有鉄道 1984年10月号 国労の見解[行革攻撃には長期戦略に立った反撃態勢の確立こそ緊急の課題 」

国有鉄道 1984年10月号 国労の見解

動労の第40回大会は7月17日から20日まの4日間、秋田市で行われ 。
冒頭、佐藤委員長が「いまの状況では、 自らが"職場と仕事と生活”を守る以外にない。そのためにも動労提言を実現させなくてはならない。国労共闘については、既成のエゴイズムを打破しなくては解決しない」と挨拶 。
国労も2年ぶりに山崎書記長が出席し、動労国労との理念の違いはやむを得ないが、雇用と労働条件を守らなければならないという点では 一致している。

動労は、「国労とは共通の課題(生産性運動反対、スト権スト等)で共闘してきた歴史的事実もある。正常でない関係について十分話し合いたい。」
とも発言していますが、この背景には動労が後述しますが、昭和55年以降の減量ダイヤで貨物輸送が激減し、昭和57年からは旅客輸送も減量するなどのダイヤ改正で危機感を持った動労が貨物増送運動等をおこない、「するがシャトル」に見られる列車増発や、短編成化された山陽新幹線などの新たな提言が行われたことを指しています。
これも、組織防衛の一環から出たことで、強行に分割民営化反対を進めている国労とはこの頃はかなり距離を置いていました。

動労は自身の生き残りのため、動労提言で、するがシャトルが実現したと強くアピール

動労提言では、するがシャトルが実現したとアピール



再び、国有鉄道から引用してみたいと思います。

動労では、代議員の中から闘争を行うべきという意見がある反面、多少なりとも労働条件の悪化を受け入れても、組織を守るべきという意見も有りました。

経過報告は吉崎副委員長、84年度運動方針案は福原書記長が行い、本部案どおりで承認、採択された。代議員の発言数は、経過11人、方針案20人で、分割・民営化阻止、反核・平和などを基調した本部見解を支持する内容が圧倒的に多かった。
とくに動労提言支持に関するものが、現状報告とあわせて目立ち、改めて線路を取りはずされては国鉄としての存在がなくなる」と場合によっては労働条件の悪化も受けるとした。

以下に弊ブログで、関連する記述がありましたのでリンクを貼らせていただきます。

whitecat-kat.hatenablog.com

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第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

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第一節国鉄再建監理委員会最終答申
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├○ 三 再建監理委員会最終答申に対する諸見解│
└──────────────────────┘
 
 最終答申に対する国労および他労組等の見解

 監理委員会の最終答申に対し、国労動労、全施労、全動労は要旨以下のとおりの四組合共同の抗議声明を発表した。
  「答申は、110年にわたり国民の足を守り続けてきた国鉄の役割を無視し、利用者や自治体、専門家、関係組合の意見も聞かず、国民の目から離れたところでつくられたものであり、断じて認められない。答申には公共交通としての国鉄の位置づけがなく、すべてを採算性によって判断し、不採算部門は徹底して切り捨てるものとなっている。採算性だけを追求すれば、運賃値上げや路線廃止につながることは必至である。分割による全国ネットワーク破壊がもたらす弊害については『対処可能』というだけで、なんら具体策を明らかにしていない。長期債務については政府、財界、国鉄官僚の責任にふれず、国民負担を求め、用地売却など土地利権を確保するものとなっている。『余剰人員』対策については、労働者間に分断. 選別をもたらす施策を求めると同時に、関連労働者の雇用不安を助長するものとなっている。国民の足を奪い、雇用不安を増大させる『分割・民営化』は”官業払い下げ”にすぎず、公共交通としての国鉄を再建するものではない。われわれは、真の国鉄再建をめざして国民の支持と連帯の輪を広げ、『分割. 民営化』を許さず、公共交通としての国鉄を守り抜くとともに国鉄労働者の雇用を確保するために組織の総力をあげて闘い抜く決意である。」
 ところで動労は、85年までの運動方針を見るかぎり分割・民営化構想に反対し、答申がだされた段階では四組合で抗議声明をたすことができたが、以降、まず民営化に、さらに分割に賛成の方向に変化するので、詳しい内容はそれぞれのところで記述するが、ここで動労の変化を簡単にまとめておく。85年10月14日に開いた第二回拡大全国戦術委員長会議において、松崎動労委員長は「われわれの基本軸は分割反対にある」「国有鉄道として再建を考えたいが、そうはいかないから、分割反対を前面に打ち出し、幅広い世論形成をすべきだ」と述べた。そして、12月の動労中央委員会において、「分割反対を軸にして民営的手法の導入をはかるにとの方針に転換した。
 臨調=行革路線による国鉄攻撃が始まって以来、動労はかつて「鬼の動労」と言われていたころとは違い、当局の施策に「柔軟」な対応をするようになっていた。例えば、ブルトレ手当返還問題、現場協議協約の当局案での先行妥結、時間内洗身( 入浴) 問題での
当局への協力などがあった。それは84年の「動労提言」によると、国鉄最大の危機を国民の支持を得ながら乗り切っていくためには、国鉄労働者も「骨身を削る努力を立証しなければならない」「労働条件の悪化を嫌わず、これまで以上の仕事をしよう」との主張にもとづいていた。そうした考えにもとづき、余剰人員対策1二項目に対し組織として積極的に対応した。85年11月1日現在、運転職場での派遣者の数はトータルで4670人であったが、そのうち動労が約4000人、国労が360人、鉄労が80人、その他4050人であった。福原書記長は、余剰人員対策について「われわれとしては、『職場と仕事と生活を守る』という観点に立って対応していきたい。『反対か賛成からという二者択一的な方針はとりません」と述べ、状況によってはいっそう踏み込むことを示唆していた。それは、後の見る86年1月22日の動労の当局との「労使共同宣言」の締結につながっていった。86年度の動労の運動方針では、「今や国鉄改革は避けて通れないものになっており、活力ある新事業体をいかにつくり出すかが問われています」と述べ、事実上、分割・民営化を容認していた。
 総評は監理委員会の最終答申に対し抗議声明を出した。
  「答申は地方交通線の廃止と10万人に及ぶ人減らしを骨格とし、公共交通の破壊と労働者・地方自治体・利用者の犠牲のうえに国鉄の分割・民営化を行い、たんに. 長期債務の分担を示したものにすぎない。われわれは、全国ネットワークの国鉄公共企業体として再生し、次代の公共交通システムの柱として確立するため、地方自治体、地域住民、利用若・国民と連帯し、国民的多数派を組織するために国民運動を展開する。」

続く https://blog.hatena.ne.jp/whitecat_kat/whitecat-kat.hatenablog.com/

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