政府のバックアップを受けて改革に進む当局
国鉄に対して、時の政府はどちらかというと放任主義というか自由に任せるところが有り、どちらかと言えば金のなる木として扱ったきた傾向が昭和30年代にはあったのですが、昭和30年代から潜在的に存在していた赤字問題が大きくなり、3K赤字(国民健康保険・コメ・国鉄)ということでむしろお荷物になってきた国鉄に対して抜本的な改革を行う必要がありました。
そこで、国鉄としては、現場協議制の改革を宣言しました。
主な改訂内容は
- 協議の対象範囲は労働協約、就業規則、規程、達、通達等に定められていない当該現場固有の日常の労働条件にかんして生じた団体的紛争の事後処理等に限定する
- 協議中といえども施策の実施を妨げない
- 開催は月一回で臨時開催を認めず、一回の協議時間は二時間以内、上級委員会を設置し、現場労使が対立した問題は上移する
というもので、本来に現場協議に戻すべきものと言う考え方に立ったものでした。
鉄労・動労は賛成、国労は反対
これに対して、鉄労は、現場協議制が、ヤミ手当、ヤミ慣行等の根源であり、改訂すべきは当然であるが当局がその運用を誤まったが故に機能しなかったと主張しており、鉄労は、『職場委員会』を機能させてきたが同列に扱われては困ると、鉄労の立場を主張しています。
また、動労は、現場協議制の中で、『すべてを業務命令で対応する』という当局の意図を、『議事録確認』を結ぶことによって骨ぬきにしてきたことは事実であるが、現状を考えれば、やむを得ないとして、新しい現場協議制に移行することを妥結しています。
少し長いですが、大原社会問題研究所の労働年鑑から引用させていただきます。
鉄労は、国鉄当局のかかる改訂提案にたいし、ヤミ手当、ヤミ慣行など職場規律の乱れの温床の一つが現場協議制度であり改訂提案は当然という。「しかしながら、現行協定であっても当局がその運用を誤まら」なければ十分に機能したのであり、「正しく運営してきた私たちの『職場委員会』を他集団のそれと同列視することは、はなはだ迷惑である」と主張した。だが、鉄労は、(1)現協の運用の乱れこそ職場規律荒廃の元凶であり、その元凶をなくすことが緊急課題である、(2)無協約状態は得策でない、(3)「鉄労との単独妥結も辞さないとする当局の態度は、従来の労使関係を改善しようとするものとして評価できる」(鉄労第一六回大会運動方針案)という判断にもとづいて、新協定を締結した。
動労は、現協改訂提案を「従来の協定を改悪ないしは破棄することによって、職場闘争を圧殺する意図をもってこの攻撃をかけてきました」という評価を下しつつ、交渉によって「『すべてを業務命令で対応する』という当局の意図を、『議事録確認』を結ぶことによって骨ぬきにしてきたこと、さらにこんにちの情勢のもとではこれ以上の前進はないと判断し」(動労第三九回大会運動方針案)協定を締結した。
結果的に、国労と全動労は協約を締結せず、無協約状態となるのですが、国労の方針は、あくまでも既存の協約を続けることであり、下記のように撤回を求めて交渉したようです。以下、国労の資料から引用します。
この協約改定交渉で国労はまず「合意に達しない場合は再締結はしないという当局方針の撤回」を求め、当局の提案は「職場での労使交渉を否定し、個人的の苦情処理機関に現場を変質させようとするもの」であり(8月31日)、「審議し対立した事項さえ回答無用と切り捨てることは許せない。どんな場合でも現場に働く者とそこの管理者が誠心誠意話し合ってことの解決に当たるべきである」(9月7日)などの点を強調し、交渉を積み重ねた。
しかし、10月8日、当局に対し、①すでに10回の団交を行ってきたが、当局は組合側の質問、疑義、主張に対して誠心誠意心をもって応えようとしない、②11月20日まで交渉する期日があるが、当局の態度はいたずらな時間稼ぎであり、労使の合意が得られることは判断できない、③当局提案は現協を全面的に否定するものであり、これ以上の団交は無益なので交渉は本日をもって打ち切る、との通告を行い16日に公労委に「団交応諾義務確認」の調停申請を行った。(11月16日、調停不調)
結局、当局側は交渉のテーブルに着くことはなく、 昭和57(1982)年12月1日からは新しい現場協議制に移行することになりました。
現場協議制を締結しなかったことで混乱する現場 鹿児島局事件
その後、国労ではいくつかの現場レベルので職場管理ともいえる事件が起こるようですのでその辺を少し参照してみたいと思います。
その一つが勤務時間の入浴問題であり、もう一つが鹿児島事件と呼ばれる職場管理事件でした。
何れも当時の事例をとして挙げてみたいと思います。
最初に入浴に関してですが、業務の内容に鑑み勤務時間内に入浴を認めることが長い慣習として続いてきたこともあり、なかなか改善が進まなかったとも聞いていますが、ここでも国労は、入浴は既得権であるとして、下記のような事例が報告されています。
国有鉄道 昭和58年6月号の記事からの一部引用ですが、門司なのか東京なのかはわかりませんが、おそらくテレビに映ったと書いていますので東京での出来事と思われます。
少し長いですが、引用させていただきます。
①入浴問題
入浴問題は全国的に是正されてきたが、東京、門司のいくつかの動力車区では、国労が、勤務時間内入浴は慣行であり、是正するには労使間で話し合ってからすべきだという方針のもとに、勤務時間内に入浴を強行し、それを防止しようとする当局側との聞にトラブルも発生した。また、国労の東京、門司両地本は、との問題を地方調停委員会に「慣行・確認などに反した入浴問題の一方的な規制に伴う具体的労働条件について平和的解決のため団体交渉に応じること」等を求めて、あっせん申請も行った。
との過程で、入浴を強行する職員、裸で区長、助役につよめる職員、ジュプレヒコーノレを繰り返す組合員の姿が新聞やテレビを通して生々しく報道された。国鉄をとりまく厳しい状況の中で、国民の理解を求めなげればならないにもかかわらず、この有様は国民の目にどう映っただろう。
一方、国労はまた勤務時間内入浴について新たな制度の創設をも求めてきた。当局はこれに対し「①いわゆる悪慣行である勤務時間内入浴が未だに一部の箇所で是正されずに存在しているが、即刻是正されるべきとと。①また、①との関連において、九州および関東地調委の第三者機関に組合側の申請によって係属されている事柄も自ずと解消がはかられること、この2条件が満たされたうえで、具体的に貴側から趣旨説明を受けるなど誠意ある団体交渉を行っていきたい」と回答し、結局、組合側はこれを受け入れ、いわゆる入浴闘争は中止され、あっせん申請も取り下げられた。
ということで、話は聞いてあげるけど、悪慣行だから是正してねと言う方向で整理が図られたとされています。
駅業務の組合管理事件
国有鉄道 昭和58年6月号引用
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第1章、臨時=行革路線と国鉄労働組合
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続き
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第2節 80年代前半の国労つぶし包囲網との闘い
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二 臨調基本答申に対する国労の対応とその後の闘い
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├○ 三 臨調=行革路線に基づく国労攻撃との闘い│
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現場協議制に関する交渉の決裂
この提案を受けて国労は、8月16日の中央闘争委員会で「話し合いを基礎とする健全な労使関係を将来にわたり維持する」「ことが重要であるとの立場を確認し、『現場協議の円滑な運用を図るため『現場協議に関する協約』の締結の経緯を尊重し、同協約の各条に係わる労使の見解の相違については、この協約の締結単位で協議し、すみやかに解決するものとする。」という、労使間で確認されてきた内容の再確認を迫ることとした。
この協約改定交渉で国労はまず「合意に達しない場合は再締結はしないという当局方針の撤回」を求め、当局の提案は「職場での労使交渉を否定し、個人的の苦情処理機関に現場を変質させようとするもの」であり(8月31日)、「審議し対立した事項さえ回答無用と切り捨てることは許せない。どんな場合でも現場に働く者とそこの管理者が誠心誠意話し合ってことの解決に当たるべきである」(9月7日)などの点を強調し、交渉を積み重ねた。
しかし、10月8日、当局に対し、①すでに10回の団交を行ってきたが、当局は組合側の質問、疑義、主張に対して誠心誠意心をもって応えようとしない、②11月20日まで交渉する期日があるが、当局の態度はいたずらな時間稼ぎであり、労使の合意が得られることは判断できない、③当局提案は現協を全面的に否定するものであり、これ以上の団交は無益なので交渉は本日をもって打ち切る、との通告を行い16日に公労委に「団交応諾義務確認」の調停申請を行った。(11月16日、調停不調)
続く