鉄道ジャーナリスト、日本国有鉄道歴史研究家 日本国有鉄道 社会学 鉄道歴史 労働史 労働運動

日本国有鉄道 労働運動史

鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 152

今回も国鉄動労運動史として、国労の記事を底本として当時の国鉄の様子を見ていきたいと思います。
国労は、当局が示した労使協調宣言を従来の慣例を破った方法であり、かつその内容は受け入れられないと書かれていますが、当局側の部内紙(国有鉄道)の記事にその辺の様子が書かれていましたので、引用してみたいと思います。

国労は内容を一瞥して退出

当局側の記述によりますと、1月13日に国労動労・鉄労・全施労の組合幹部と個別に面談したとなっています。

その席上、国労労使協調宣言の文書を一瞥して、「提案の方法が唐突だ」として退席したとされており、他の組合が多少の相違はあるものの概ね了承したという話と大きく食い違ったと書かれています。国労は、 「労使共同宣言(案)に対する態度」 と 称 する文章を発表したが、それは労使協調宣言を歪曲しているとして非難しています。

以下、国有鉄道 1986年3月号から引用

杉浦総裁は、国労動労、鉄労、全施労の4労働組合幹部と個別に会談し、r労使共同宣言」の案文を提示した。席上、総裁から「これは案であり、今後貴組合の意見を聞きたい」旨の説明がなされたが、残念ながら国労は、「提案の方法が唐突だ」とし、案を一瞥したのみで席を立った。(その後、国労には別途、当局の案文を伝えた。)
動労、鉄労、全施労の3組合は、「案文については、若干の主張はある」としながらも、その趣旨に基本的に賛意を示し、結果として、当日、総裁と3組合代表による共同記者会見の運びとなった。

労使協調宣言に際して国労は断固反対の姿勢を貫くことに、更に国労は孤立することに

労使協調宣言に際して国労は断固反対の姿勢を貫くことに

国労は、更に意固地になっていくことに。1月13日以降の動き

この前後の国鉄を取り巻く環境は、下記の通りでした。
弊サイト国鉄があった時代 昭和61年前半
 
総裁、各組合のトップ交渉で「労使共同宣言案」を提示。鉄労、動労、全施労は共同宣言締結、国労は拒否 1/13
勤労、鉄労、全施労の3組合と「労使共同宣言」を発表
以下は、国労四〇年史年表から引用した内容 1/13
国労など国鉄内各組合、杉浦国鉄総裁とトップ交渉。席上、 当局側、用意の「共同宣言」に同意を要請。国労〝非常識〟と直ちに拒否。動労、鉄労、全施労は同意。この後、 当局と合同記者会見。動労委員長、「ナショナルセンターは度外視し、鉄労にはご指導をお願いするなど」発言
三塚運輸大臣、本社で幹部職員に訓示、東京駅を視察1/14
国鉄当局、「内容証明」で「共同宣言」を国労本部に送付 1/14
国労、闘争指令10号で、不退転の決意でたたかい抜こうと全組合員に訴え 1/14
総評拡大評議員会。黒川議長、3300万署名を高く評価、 「この世論を武器に国鉄闘争を闘う」とあいさつ。国鉄闘争への支援相次ぐ。全金代表、動労の労使「共同宣言」につき「全面敗北の文書」と非難 1/14
公労協四組合、連名で国鉄闘争支援の訴えを文書で配布 1/14
国鉄本社 第2回本社公開講座(真藤NTT社長講演) 1/16
国労中央闘争委員会、「共同宣言」に対する見解示す。 「共同宣言は受け入れられない」との基本見解 1/16
国労、当局の「進路アンケート調査」問題で緊急指令。 当局が「白紙は個人の意思か組合の指導か」など個別的に 組合員に対する問責を実施することを決めたため 1/16
国鉄労使、「進路アンケート問題」で団交。 国労は中止を要求。当局は即答を拒否 1/17
と言った流れで、この時期は完全に国労だけが孤立していくように見えます。
 国鉄労使協調宣言の内容は、下記に書かれているように、
  •  安定輸送の確保
  • リボン、ワッペン の不着用、氏名札の着用等
  • 企業人としてのモラルにもとる行為の根絶

と言った内容であり、民間企業では当たり前と思われることが出来ていなかった?のかという驚きもありますが、実査当時の管理局などが発行する冊子などでも似たような内容の記事があったりしたものでした。

ただ、この時期に有っても、国労の反応に関しては当局としても多少なりとも気にかけている様子が見て取れます。

下記の記述にあるように、国労に対しては他の組合と同様に極めて常識的な範囲で

改めて、国有鉄道の記事から引用してみたいと思います。

国労との間では、案文を提示し、そこから論議をつめていくという、他の組合と同様の手続きをとったわけで、手続き上の問題はなかったし、内容についても、前述の他組合との共同宣言を見ればわかるように、世間常識からして当たり前のことを当たり前に表現したものである。しかも、業務を遂行する上でも、国鉄職員として当然守らねばならない事を含んでいる。これら基本的な事柄に関する労使の合意は、それぞれ労使という立場を認めながら、最も重要な課題である雇用の場の確保に取り組む土台となるものであると考える。
イデオロギーや加盟しているナショナルセンターの違う3組合が、この内容を当然のことと認識している一方で、国労は「手続き」にかまけて、案文の内容を検討しようともせず話し合いの席を立ったことは、誠に残念であった。内容を検討した上で、正々堂々と意見を述べるべきであろうと考える。

 国鉄当局として、国労に対してもイデオロギーに浸っている場合ではないと言いつつも、国労自身がその方針を変更することはせず、より過激な方向に走ってしまった点はやはり注視すべき所と言えるかもしれません。

続く

 

参考:

jnr-era.blogspot.com

********************************************************
取材・記事の執筆等、お問い合わせはお気軽に
blackcat.kat@gmail.comにメール
またはメッセージ、コメントにて
お待ちしております。

国鉄があった時代 JNR-era
********************************************************

にほんブログ村 鉄道ブログ 国鉄へ
にほんブログ村 にほんブログ村 鉄道ブログへ
にほんブログ村 にほんブログ村 歴史ブログ 現代史 戦後(日本史)へ
にほんブログ村

にほんブログ村テーマ 国鉄労働組合へ
国鉄労働組合

 

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
第五節 労使共同宣言と国鉄内労組の再編
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

┌────────────────────┐
├○ 一 労使共同宣言の提案と各組合の対応 │
└────────────────────┘

 労使共同宣言の提案

 一九八六年一月一三日、国鉄当局の呼びかけで国労ほか各組合のトップと杉浦国鉄総裁との会談が個別にもたれた。その席上、当局はあらかじめ用意してあった「労使共同宣言(案)」を唐突に示し、それへの調印を求めた。事前の打診もしないという慣例を無視した手続き上の問題もさることながらが、その内容にいたってはとうてい国労の受け入れられるものではなかった。動労、鉄労、全施労の三組合は直ちに調印の意向を明らかにし、同日一五時から杉浦総裁とともに合同記者会見を行い、「労使共同宣言」を発表した。「労使共同宣言」の内容は以下のとおり。
 「昭和六一年は国鉄改革が国民的課題になる重要な年だが、なかでも余剰人員問題の解決は今年度の最大のテーマとなる。これは同時に、職員一人ひとりの生活の場を確保するという問題でもある。国鉄改革にあたり、まじめに働く意思のある職員が生活の基盤を失ってはならないという点について、労使の認識は全く共通である。十分な雇用の場を確保するためには、労使一致した雇用確保の努力に加えて、政府・一般産業界の積極的な支援が不可欠であり、これは経営全般にわたる労使の自助努力に対する国民各層の信頼と共感を得て初めて可能となるものである。このような共通認識に立ち、雇用安定の基盤を守るという立場から、国鉄改革が成し遂げられるまでの間、労使は以下の項目について一致協力して取り組むことを宣言する。

1、労使はその立場をこえて、以下の課題について最善の努力をつくす。

① 安定輸送の確保、安全輸送の維持が国鉄労使に対する国民の信頼の基盤であり、 労使は諸法規を遵守し、全力をあげてこれを実現する。

②一人ひとりのお客様に明るく笑顔で誠意のこもった応対をしていくことが輸送サー ビスに従事する者としての基本であり、そのためには、まず第一にリボン、ワッペン の不着用、氏名札の着用等定められた服装を整え、お客様に不快感を与えない、折り 目正しいサービスの提供に努めることとする。

③飲酒・酒気帯び勤務、点呼妨害等企業人としてのモラルにもとる行為の根絶に努め る。

2、鉄道事業の再生を図るに不可欠なことは、厳しい競争場裏において将来を展望し得 る企業体質を作ることであり、そのために必要な合理化は労使が一致協力して積極的に 推進し、新しい事業運営の体制を確立することとする。
3、余剰人員対策について労使は次の点に具体的に取り組むこととする。①派遣制度等 を積極的に推進する。②従来の特退協定に基づいて、退職勧奨を積極的に推進する。③ 新たな希望退職制度の法的な措置がなされたのちには労使はその円滑な運用により目標 の達成に向けて積極的に取り組む。
④職員の将来の雇用の場の確保・拡充について労使が一致協力する。
4、上記の事柄を積極的に推進していくために『再建問題等懇談会』等労使間のルール に則った話し合いの場を従来にも増して活性化し、活用していくこととする」

 

 

 
続く

『鉄道』 ジャンルのランキング