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鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 136

こんにちは、引き続き国鉄労働組合史をご覧ください。
 
今回も、国労の資料を参照しながら、独自の解釈を加えていくのですが。
再建監理委員会としては、なんとしても分割民営化は不可避であったとして、世論を作っていきたいと思うわけですが、仁杉総裁が更迭され、推進派の杉浦喬也総裁が就任するに及び、国鉄の分割民営化は待ったなしの状況に追い込まれました。
まして、一足先に二公社(電電公社と専売公社)が民営化され、長期債務の問題等で一番困難と言われた国鉄が残るという構図になっていました。(郵政は現業のため今回の再編では対象外)
そんな中で、国労動労・全施労は国鉄分割民営化では反対という点で一致しており、鉄労だけは地域本社制=分割民営化であるとして、分割民営化を進めていくのだという方向になっていました。
実際に、当時の国鉄職場の見学会等では、国労が強硬に分割民営化反対を唱える中、鉄労が分割民営化推進と書かれたスローガンを見て、個人的には非常に複雑な思いに駆られたものでした。
民営化はやむを得ないとしても、分割は拙いだろう。
26歳の若造はそんなことをぼんやり考えていたのでした。
 
再建監理員会は、答申で、分割民営化は不可避として、本州三社、及び3島会社を分割するとして明記しているわけですが、当時から三島会社の経営が厳しくなるであろう事は当然監理員会でも把握していたわけですが、国鉄長期債務を解決する手段であるとして、強行しようとしました。
国有鉄道10月号「国鉄再建監理委員会の「国鉄改革に関する意見」について」を参照しますと、以下のように書かれています。
北 海道 、四国 、九州の各鉄道会社の経営については 、私鉄並みの徹底 した合理化を行うとともに、長期債務の免除、基金の設定により、採算がとれる形で発足することとされている。具体的には、今後の実績も踏まえつつ内容を詰めていくこととなるが、いずれにしても、3 島の各鉄道会社はあらゆる部門において、私鉄並みの業務運営をめざし、従来にも増 して徹底した省力化、経費節減を行うことが不可欠である。 
とあるように、国鉄時代以上に徹底した合理化を進めていかないとその維持は難しかろうと明記していますし、実際には下図のように、国鉄自身が分析した昭和59年度の線区別運営成績自身を再建監理委員会が知らなかったわけはないわけです。
それ故に、三島会社には運用基金を設けることで経営を成り立たせるという非常に危なっかしい方法を立ち上げたと言えましょう。
下記の図では、本州と三島会社の地域別経営成績が掲載されていますが、北海道と九州で国鉄線全体の30%のシェアがありますが、輸送量は全体の7%しかなく、赤字額も九州・北海道の赤字額と本州の赤字額がほぼ同額と言うことになります。

国鉄分割民営化資料 地域別経営成績 北海道の規模が大きく、収入が極端に少ないという状況

地域別経営成績

本州は早期に純民間会社に、九州・北海道・四国の上場は当初から想定外

再建監理員会も、当初から本州以外の会社はその収益力が上記の収益構造からも明らかなように、不可であることは十分理解していたと思われます。
それが、三島会社に持参させた経営安定基金であったわけですが、バブル崩壊以降はそうしたスキームは一気に崩れることとなり、北海道は自然環境が本州各社と比べても厳しいわけで、その辺を含めて考慮する必要があるのですが、そうしたことを振り返る事もありませんでした。

また、当時は世論も国鉄分割民営化を容認する動きが一般的でした。

総評でも一部の組合は、国鉄の分割民営化は不可避であるとして考えていたようで、国労が総評大会で、「国鉄分割民営化反対五千万人署名運動」を展開すると決めたことに対して、鉄鋼労連が強く反対、全電通国労の方針に反対したという記述*1があります。

鉄鋼労連は、37兆円に上る長期債務を抱えた国鉄再生のためには、分割民営化は最後の手段で有り、万難を排して推進されなければならないとし、署名運動にもカンパにも賛同しないという方針を早々と示して国労を牽制。
全電通自身は一足早く民営化したこともあり、全電通委員長の山岸章は、「民営化反対と言うことは、国労は親方日の丸でいたいのか」と厳しく指摘しています。

全電通は、通信環境の競争などを考え、又当時はアメリカからの外圧もあったことから、自由に動ける体制を求めていたこともあり、組合側も民営化には比較的理解があったほか、一番の大きな点は職員の雇用が守られていたこと、更には国鉄と異なり優良企業として、かつ地域独占で黒字基調の営業をしてきたことなども、民営化でむしろ自由な活動が出来ると考えていたようですし、NTTという電電公社の民営化は、国鉄も民営化で良くなるのではないかという期待を持たせたという点も見逃せないと思います。

 

国労の記事で見る鉄労の話

鉄労は監理委員会の答申について次のような見解を発表した。
「答申は、鉄労が昨年の大会で提言した地域木社制と、考え方において基本的に一致している。具体的な分割・民営化のあり方や労働基本権の回復についても異論はない。この改革の成否を決めるのは、余剰人員対策で、答申は再就職のあっせんを第一に考えている。しかし、われわれは、外注業務を直営化することなどにより余剰人員をまず国鉄内で活用し、さらに分割・民営化に伴って事業範囲を拡大して行けば、余剰人員の大幅な活用が可能だと考える。」

 

さて、ここで国労が当時に鉄労の様子をアップしていましたので、もう少し詳細を語ってみたいと思います。

参照したのは、「国鉄民主化の道(鉄労友愛会議)」です。

 

ここで鉄労の動きが、出ていますので引用してみたいと思います。

国鉄再建監理委員会から分割・民営化の答申が出された直後、8月6日~8日に東京・上野の池之端文化センターで、鉄労の60年度の定期大会が開かれた、国鉄総裁の杉浦喬也総裁も来賓として出席、挨拶した。国鉄総裁が組合大会に出席したのは、初めてだった。杉浦は、「歴史の流れは大きく変わっている。ここに一つの方向に向かって、とうとうと流れ始めたと言える。私としては、国鉄改革の実現に向けて、各労働組合の理解と協力を求めていきたいと考えている。そのために積極的に話し合いを進めていく所存である。特に余剰人員対策は労使間の意思疎通をはかり、効果的に実施していきたい。各組合も余剰人員対策に就いての意義を認識し、積極的に対応していくよう要望する。特に鉄労は正しい認識で、国鉄改革に対応してきた。敬意を表したい」と挨拶した。

とありますが、赤色棒線部分ですが、鉄労は余剰人員ではなく、こうした過員を積極的に新規事業での活用を求めたのですが、杉浦体制では完全に黙殺されることとなりました。

仮に、ここでの鉄労の主張、余剰人員ではなく新規事業のための要員と言うことで雇用の確保と言うことになれば、その後の組合間による軋轢は有ったかもしれませんが、又違った形の展開になっていたかもしれません。

実際には、国鉄の合理化で発生する人員に関しては、一時帰休や退職前提休職、派遣ということで、外部に人材を流出させたことは大きな失策で有ったかもしれません。

それと、多少鉄労に苦言を呈するとすれば、何度も余剰人員対策に対して、国労を意識しすぎるのではなく、大局に立って、余剰人は国鉄にはない、新規事業の要員として確保すべきであると言い切って欲しかったのですが、結果的にはその後の労使協調宣言などで、鉄労加盟が有利である・・・・そんなイメージを作ってしまったのではないかと思ってしまうわけで、この辺は更に資料を読み込んでいく必要がありますので、いわゆる個人的な仮説として、意見を提示させていただきます。

国有鉄道 1985年10月号の記事から 鉄労大会で挨拶する杉浦喬也総裁

国有鉄道 1985年10月号の記事から

 

 

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第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

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第一節国鉄再建監理委員会最終答申
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┌──────────────────────┐
├○ 三 再建監理委員会最終答申に対する諸見解│
└──────────────────────┘
 
 最終答申に対する国労および他労組等の見解

続き

鉄労は監理委員会の答申について次のような見解を発表した。
「答申は、鉄労が昨年の大会で提言した地域木社制と、考え方において基本的に一致している。具体的な分割・民営化のあり方や労働基本権の回復についても異論はない。この改革の成否を決めるのは、余剰人員対策で、答申は再就職のあっせんを第一に考えている。しかし、われわれは、外注業務を直営化することなどにより余剰人員をまず国鉄内で活用し、さらに分割・民営化に伴って事業範囲を拡大して行けば、余剰人員の大幅な活用が可能だと考える。」
 なお、監理委員会の旦取終答申が提出された直後に開催された鉄労の第18回全国大会( 8月6- 8日) において、分割・民営化による国鉄改革を推進する方針を決定した。方針によると、分割・民営化による改革をすすめ、余剰人員の解雇を防ぐため、外注事業や関連事業の面営化を図る、というものであった。この大会には、杉浦国鉄総裁が初めて出席し、鉄労への期待を込めた挨拶を送った。また、大会の論議のなかでは、監理委員会の最終答申が国鉄に余剰人員として残すとした4万1000人の選別について
「合理化に協力し労使協調に努めてきたのだから、鉄労組合員を一人も含ませてはならない。〔8月〕5日に違法ストをやった国労組組合員や動労を対象にするよう、当局に迫るべきだ」との意見が出された。
 同盟は、田中良一書記長の談話で「分割・民営化以外に国鉄を再建し、雇用を守る方法はない」、ただ余剰人員対策については外注事業の直営化など、内部努力の方法を探るよう求める、との見解を発表した。

最終答申に対する各政党の見解
各政党は7月26日、監理委員会の答申について、それぞれ要旨以下のような談話を発表した。
 自民党( 金丸幹事長談話) 国鉄再建監理委員会の答申が出されたが、亀井委員長はじめ委員のご苦労に感謝する。
国鉄の改革は国民的課題であり、わが党は監理委日員会の意見を日取大限に尊重し、広く国民の理解と協力を得つつ、政府と一体となって国鉄の改革に不退転の決意で取り組む。
 社会党( 国鉄再建対策本部見解) 答申は、国鉄の現状を招いた政府・自民党の責任に何ら言及せず、国鉄を解体して国民と労働者に犠牲を転嫁しようとしている。国鉄の分割は国鉄の公共的使命を放棄させ、地域間に大きな格差を生む。分割・民営化は国家百年の大計を誤らせることになる。
 公明党( 浅井国鉄再建問題特別委員長談話) 経営形態を民営に改めることは、活力ある経営を行うために不可欠な措置と考える。
事業分割は必要だが、分割の規模や地域などについて十分検討し、慎重に進めるべきだ。
 民社党( 河村国鉄再建問題対策特別委員長談話) 答申の基本的方向を支持し、実現を推進する。しかし、新幹線リース方式による本州の会社間の収支調整は、民営自立を阻害し、収益格差を生むので、分割の区分も含めて再検討することが望ましい。
 共産党( 金子書記局長談話) 答申の示す方向は、国鉄事業の再建とは縁もゆかりもないものである。公共サービスは際限無く切り捨て、17兆円にのぼる債務は、結局は国民に負担をおしつけるものだ。国鉄の分割・民営化に反対し、公共サービスの抹殺に反対する地域住民、国鉄労働者の運動と連帯し、その先頭にたって奮闘する。

続く

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*1:鉄労の国鉄民主化への道、P713