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鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 134

今回も国労の資料を底本として、解説を加えさせていただこうと思います。
 
国鉄の分割民営化論議を考えていく中で、国鉄当局は当然のことながら解体には反対であり、労働組合国鉄という組織の解体には反対の立場を取っているわけで、自民党も必ずしも分割民営化を当初から容認していたわけではありませんでした。
むしろ、規制としがらみに縛り付けられた国鉄を少しでも動きやすくしたいという思いが改革三人組の方向性であったと思われますし、実際に自民党も当初は出口論【結果としての分割民営化はやむなし】という考え方であり、分割民営化を推進した鉄労も、当初は分割民営化には反対しています。

鉄労は、分割民営化を容認と報道される

ただ、鉄労が分割民営化を是とした背景には、鉄労が提唱した地域本社制と言う発言に際して、地域会社は独立した会社として認めるのかという、マスコミからの質問に対して、分社化は地域ごとに独立性を持たせるとしたことで、結果的に民営化容認と取られれることとなり、分割民営化反対では整合性が取れなくなることもあって、臨調の方針に乗っかっているという見方も出来るのではないかと考えます。

国労の方から、鉄労が裏切ったので分割民営化が推進された・・・と言った厳しい意見を伺ったことがあるのですが、鉄労としても地域本社制を当初は支社制度のようなものと考えていたと思うのですが、マスコミが新聞発表などで、鉄労は分割民営化容認と書いたことから、結果的には、分割民営化を容認した形で組合員にも説明せざるを得なかったのではないかと考えています。
少なくとも、鉄労も民営化は容認するとしても、分割は容認出来ないとしていれば又違った側面があったかもしれません。

公企労レポートで見る、国鉄分割民営化

今回は、手元にある昭和60年の公企労レポートから、その内容を引用させていただこうと思います。 第2073号 昭和60年7月10日版

最初に参照するのは、「国鉄改革に関する意見-- 鉄道の未来を拓くために」と題する採取答申が出される前に実行された、国鉄総裁更迭後の新総裁の会談を引用してみたいと思います。

記事によりますと、12日(7月12日と思われますが、公企労レポートの日付は7月10日付け)、杉浦総裁は、最終答申を月末に控えて組合代表を個別の呼んで、トップ会談を行ったと記述があります。

新総裁は、何が何でも国鉄再建監理委員会の方針で行くという強い意思表示を示しており、以下のように発言下とされています。
この辺を、公企労レポートから引用してみたいと思います。

杉浦新総裁と各組合トップとの個別会談は、12日午後から国鉄本社で行われた。
新総裁は「基本としては、近く出される再建監理委の答申に沿って行くつもりだ。この方向については国鉄幹部はもとより全職員に理解していただき、併せて国民の皆さんにもご理解願いたいと思っている。先に提示されている基本方策を全面的に変えることにつては、節操がないと言われるかもしれないが、方向付けとしてはこれを変えざるを得ない。

ここで示されている、基本方策とは国鉄が自ら作成した改善方策であり、昭和60年までの幹線系における収支均衡などを謳ったもので、基本方針は以下のようになっていました。
国有鉄道 1985年2月号から引用してみたいと思います。

国鉄では1月10日に、、「経営改革のための基本方策」を世に問うことになります。

国鉄の基本方針について

国鉄の基本方針について

 経営形態について


昭和 62年4月1日を目途に民営化 (特殊会社〉し経営責任の明確化と事業運営の効率化及び活性化をはかるが, 合理化施策の均質性、激変緩和等を考慮し、徹底した分権管理を前提に、全国一体とする。なお北海道、四国については国の政策判断により運営基盤が確立されるならば,別経営とすることも考えられる。
昭和65年度までに、その後の運営状況、輸送実態及び諸事情の変化等を勘案して会社のあり方について検討を加え、その結果に基づいて経営形態の見直しを行う。

国鉄の基本方針について、全国一律の民営化を容認

国鉄が民営化を容認



と書かれているように、国鉄としては民営化は受け入れると内外に宣言しているわけで、政府の意向であれば北海道や九州などは別経営とする事も考慮するとなっていますが、運営基盤が確立されることと言う文言が付いていることから判断出来ますが、あくまでも受けれられるのは、民営化だけであると、広く国民にも示したと言えます。

実際には、当時の世論では、場合によって赤字にんなった場合の処遇として、政府による補填などを求めたことが、結果的に世間にも受け入れられることはなく、分割民営化と言う再建監理委員会の意向に沿うと言う大方針の下、杉浦総裁を退任に追い込み、元運輸事務次官の杉浦氏を国鉄分割民営化をさせるためだけに送り込んだわけで、それが上記の公企労レポートに出てくる発言に繋がって行くわけですが、当然各組合は強く反発することになるのでした。

 以下、各組合の見解を公企労レポートから引用してみたいと思います。

  • 国労 
    監理委員会の答申に沿って実行していく以外に道がないとするならば、あなたが総裁なって貰わなくても良いと手厳しく批判しています。
    新首脳部は霞ヶ関の法ばかり気にしており、国鉄は監理委員会の下請けになっているのではなく、国鉄としての主張を貫いて貰いたいと、国労らしくというか、様子見という感じにも受け取れます。まだまだ、国鉄最大数の組合員を誇る国労としての余裕と言うよりも、国労としても積極的に動くべきではないと考えていたと思われます。

  • 動労
    お互いに約束したことは真面目に必ず守り履行するのが動労の考え方である、国鉄が今日の状況に追い込まれた責任の一端は労働組合にもある。そういう立場に立って新メンバーとも話合いをしていきたいが、重要な事案に対して、総裁に会おうとしても中々会えないので、腹を割って話合いも出来ない。
ここで注目すべきは、動労国鉄の現状作った責任の一端は動労にあると明言している点は注目すべき点です。
  • 鉄労
    鉄労はここでは、分割民営化をはっきりと容認する発言をしています。
    国鉄の再建は心の再建であり、分割・民営しかないと言うことで我々は取り組んで来た、厳しい環境に置かれた労使だが、我々としても全面的に協力していきたいと発言していますが、その反面、行き過ぎた外注化の中止や、等にも踏み込んだ発言しています。
    ただし、あくまでも個人的な見解ですが、どうしても反体制の組合【国労を指していると思われる】を混同して悪平等に扱うことは止めて欲しいと発言するなど、どうしても国労への対抗意識的なところが見え隠れしてしまうところがあり、全体にすり寄っているような雰囲気を感じてしまいます。

  • 全施労
    申し訳有りませんが、公企労レポートでは記録がありませんので記載出来ません。

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第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

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第一節国鉄再建監理委員会最終答申
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├○ 二 再建監理委員会の最終答申の内容│
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 国鉄再建監理委員会は、発足後2年余り経った1985( 昭和60) 年7月26日に「国鉄改革に関する意見-- 鉄道の未来を拓くために」と題する、87年4月1日に国鉄の分割・民営化を実施するとした最終答申を中曽根首相に提出した。その内容は、①国
鉄の旅客部門は全国を六分割、貨物は全国一社制にする、②新幹線は一括保有方式をとる( リース制) 、③37兆3000億の長期債務のうち16兆7000億円を国民負担とする、とりわけ④87年度の適正要員規模を18万3000人とみなし9万3000人が余剰人員となる、という国鉄解体処分であった。そして、亀井正夫委員長は委員長談話で「国鉄改革はもはや一刻の猶予も許されません。また、これを成し遂げない限り鉄道の未来を拓くことは不可能であります。国鉄は労使一丸となって直ちにこの難事業に取り組むことが必要であります。国会及び政府は、この大改革を国政上の最重要課題としてとらえ、不退転の決意をもって速やかに断行されるよう望むものであります」と述べた。
答申は全体で四章からなっている。以下、その要約を記す。
 Ⅰ 《国鉄改革についての基本認識》
  国鉄の経営は、1964年に赤字に転じて以来、年々悪化の 度をふかめている。85年度の赤字は2兆3000億円、借金残高も年度末に212兆6000億円に達する。このままいくと、列車の運行にまで支障がでる恐れがある。鉄道旅客輸送は鉄道特性に特化すれば基幹的交通機関として十分役立つ。この鉄道の役割を将来にわたり十分乗たせるよう、国鉄改革を今行う必要がある。
  国鉄経営破綻の原因は、国鉄が時代の変化に的確に対応できなかったためで、その原因は現行の経営形態に内在する構造的なものである。すなわち、公社制度の下で巨大組織による全国一元的な運営を行ってきたことにある。こういう構造的な問題を克服し、効率的で責任ある経営を行うには、国鉄を民営化するとともに適切な事業単位に分割することが不可欠である。
 Ⅱ 《効率的な経営形態の確立》
 分割案は、旅客部門では、本州を首都圏及び東北・上越新幹線を中心とする東日本、東海道新幹線及び中京圏を中心とする東海、近畿国及び山陽新幹線を中心とする西日本の三つに分割し、北海道、四国、九州をそれぞれ分離し、全国大地域に分割する。
 貨物部門は、全国一元的に運営できる独立の事業体とする。
  経営形態については、交通市場のなかで企業性を存分に発揮できるような経営形態にする。具体的には、国が強制設立する株式会社とする。当初、国鉄の全額出資により設立し、逐次株式を処分し、できる限り早期に純民間会社に移行する。これらの特殊会社は、民聞会社並みの自主性をもち、国の監督規制を必要最小限にとどめる。特殊会社の労働関係は、労働組合法及び労働関係調整法による。共済制度は当面現行のままとする。
  旅客鉄道会社の事業範囲は、鉄道路線特定地方交通線を除く全線区とし、関連事業は多角的、弾力的に行う。新幹線の収益差が大きいので利用者の負担の均衡のため、旅客鉄道会社とは別の新幹線一括保有方式で収益調整をはかる。三島の旅客鉄道会社は、いずれも利払い前の営業損益で赤字が見込まれるため、長期債務を承継せず、加えて営業損失を補填でき得る収益が生み出せるような基金を設け、それによって経営基盤を確立させる。整備新幹線については、慎重に判断する必要がある。
 貨物部門は、自立可能な事業範囲を見極めるとともに、今後のあり方は、今後政府において実行可能な具体案を作成する。
  要員規模については、私鉄並みの生産性を前提にすると87年度の適正要員規模は、16万8000人程度となるが、これを実現するのは現状の国鉄における合理化の進捗状況からみて無理である。また、膨大な余剰人員の一部を旅客鉄道会社の適正要員規模の2割程度を上乗せすることとし、移行時に20万人程度とする。貨物事業の要員数は約1万5000人と見込まれ、これらを合計した新事業体の総要員数は21万5000人となる。
Ⅲ 《国鉄事業再建に際して解決すべき諸問題》
  余剰人員の数は、87年度の国鉄在籍職員数が約27万6000人であるのに対し、新事業体の適正要員規模は18万8300人であるため、9万3000人に上る。余剰人員対策の希望退職で2万人程度の応募を目指し、かつ旅客鉄道会社で適正要員規模の2割( 約3万2000人) を上乗せしたとしても、4万1000人が残る。この職員を「旧国鉄」の所属とし、一定期間内に対策を講じ、全員が再就職できるように万全を期す。「旧
 国鉄」は3年を限度に教育訓練、就職斡旋等を行う。雇用の場は、公的部門では採用の一定割合を提供するような措置を求め、一般産業部門にも協力を得る必要がある。政府は、余剰人員対策を円滑に推進するために、所要の立法措置を講じる。
  処理すべき長期債務としては、87年度音において約25兆4000億円に達するものと見込まれ、加えて年金負担等で4兆9000億円、余剰人員対策費として9000億円、それに国鉄の長期債務等と一括処理することが適当な上越新幹線青函トンネル・6四連絡橋などの鉄建公団・本因公団建設施設に資本費5兆2000億円があり、合計37兆3000億円となる。
 これら長期債務のうち新事業体が負担する額は11兆4000億円、「旧国鉄」で処理される額は25兆9000億円となる。
 長期債務処理のため国鉄用地を売却し、5兆8000億円を生みだし、そのほか新事業体への出資株式の売却収入6000億円と新幹線保有主体からの収入2兆8○○○億円を充てる。その上でなお残る16兆7000億円の長期債務は、何らかの形で国民に負担を求める。なお、売却可能用地の面積は2600ヘクタールと推計した。
  国鉄清算法人的組織である「旧国鉄」に改組し、余剰人員対策、国鉄債務整理等を行うほか、国鉄が資本費を負担することを前提として鉄建公団及び本則公団が建設した鉄道施設に係る資本費のうち新事業体が負担しないものの処理等を行う。
 Ⅳ 《改革の推進体制及び移行時期等》
  本意見提出役速やかに、政府においては内閣総理大臣が主宰する「国鉄改革に関する関係閣僚会議」( 仮称) を設置する等強力な実行推進体制を確立するとともに、国鉄においても実行推進体制の一層の強化. 整備を図り、政府と密接な連携を取りつつ、分割・民営化の円滑かつ確実な実施を期する。国鉄事業の分割.民営化は87年4月1日に実施する。
 以上の答申をうけた政府は、7月30日の閣議で答申を「最大限尊承する」と決定し、「国鉄再建関係閣僚会議」を改組して一九閣僚による「国鉄改革関係閣僚会議」を設置した。その決定を受けて翌日、運輸省は87年4月1日の国鉄分割・民営化に向け、「国鉄改革推進本部」を発足させ、分割・民営化の具体化にとりかかった。労働省は7月26日に「国鉄余剰人員対策推進本部」を設置した。10月11日の閣議では最終答申にもとづいた「国鉄改革のための基本方針」を決定し、答申どおり分割・民営化の時期を87年4月1日とし、そのための所要の法案を次期国会に提出する方針を決めた。

続く

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