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日本国有鉄道 労働運動史

鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 140

気がつけば2カ月ほど放置状態となっておりましたので、取り急ぎ更新したいと思います。

今回は、国労国鉄労働運動史なども参考にしながらアップさせていただきます。

再建監理委員会答申、国鉄を分割民営化することに

1,985年7月26日、国鉄再建監理委員会は、再建監理委員会「国鉄改革に関する意見」を総理大臣に提出することとなりました。

再建監理委員会の特徴は、旅客会社を6つに分割し、貨物会社は線路を間借りする第②種鉄道事業者として扱うこととしていました。

ま他、圧倒的な収益力を誇る東海道・山陽新幹線を中心にして、新幹線は保有機構が譲渡を受けてJRに貸し付ける

  1. 旅客6分割
  2. 貨物分離で1社
  3. 新幹線は一括保有機構が旅客会社に貸付
  4. 余剰人員対策

以下、引用「国鉄再建監理委員会答申 *******鉄道の未来を築くために*******」

jnrera.starfree.j再建監理委員会は、国鉄の危機的状況を招いたのは最大の原因は公社制度にあるとして、現行制度での再建はもやは不可能であるとして、国鉄分割民営化を打ち出したのであるが、ここで注目すべきは、貨物部門は旅客部門から経営を分離する点、新幹線にあっては、「わが国の基幹的交通機関として、国土の均衡ある発展等に果たす役割から見て、新幹線利用者間の負担の均衡ができるだけ図られるよう配慮して分割」するとして新幹線にあってはリース方式が提言されていました。

国鉄は昭和59年には幹線系は黒字を達成していた?

話しは前後するが、公社制度の中で幹線系の輸送に至っては合理化の推進と、特定人件費の分離などの結果、1984(昭和59)年には、僅かではあるが幹線系は黒字を計上していたと言われています。

国有鉄道 1985年11月号 59年度客貨別経営成績には以下のように解説されていました。
これに関する資料として公表されているものがなかったのですが、以下のような記述がなされていました。

在来線については、新幹線と同様、輸送量が伸びたこと及び運賃改定の実施により、収入が対前年1,018億円 (6%)増加したが、原価も909億円 (4 %)増加し、差し引き109億円の損益の改善となり、59年度は5,479億円の損失となった。またこれを営業係数でみると前年度の134→132へと改善された。
以上の結果 、旅客全体では前年度の3,694億円の損失は3,304億 円となり、660億円の改善であった。なお、東北・上越新幹線の資本経費を除いた旅客全体では、前年度ま では損失を計上していたが、59年度は359億円の黒字となった。

と書かれているように、幹線系にあっては特定人件費の分離などの結果営業外損益の増加はあったものの、営業経費の圧縮が大きく昭和60年までの幹線系の収支均衡は1年早く実現したことになります。

このように、最後の再建計画は遊休地の売却や貨物システムチェンジなどの影響もあって、その収支は改善されてきているわけですからもう少し時間をかけて検討されても良かったという気がしますが、当時の風潮では分割民営化がベストというが世間一般の考え方であったようです、この背景には高速道路網が未だ全国を網羅して居ないこともあり、鉄道に対する期待も大きかった事も反映されていたと思われます。

国鉄分割民営化反対に際して、他労組も反対署名などで協力を約束

ちょっと前段が組合関係とは大きく離れてしまいましたが、国労の資料によりますと、国鉄以外の労組・団体なども国鉄の分割・民営化には積極的に反対してくれたと以下のように書かれています。

 監理委員会の答申が提出されて以降、多くの労働組合が組合大会において、国鉄分割・民営化反対、国鉄労働者支援の決議を行った。新聞労連は7月26日の定期大会で国鉄労働者とともに連帯して闘うことを決議した。同日、政労協も定期大会で「国鉄の分割・民営化と10万人首切りに反対する決議」を採択した。全国一般は7月31日から開いた定期大会で国鉄分割・民営化反対闘争を支援することを決定した。全金は8月27日からの定期大会で採択した決議は「総評提起の5000万署名・100円カンパを柱とする分割・民営化反対の闘いを支持し、国労の闘いを支援する」と記されていた。ホテル労連は8月31日の大会において「国鉄再建闘争を支援する特別決議」を採択した。

このように、各労組も国鉄の分割民営化に対しての一定の理解を示し、国労動労による分割民営化に対する反対運動を共闘することを表明していますが。

蒸気のように、再建監理委員会答申以後の国鉄を取り巻く動きを見ていきたいと思います。

当時の様子を年表から確認する

以下は弊サイト、国鉄があった時代昭和60年7月の部分から抜粋したものです。

7月分

総評第七三回大会開催 7/15
昭和60年度最大の課題として、国鉄問題をあげ。運動方針とは別個に独立議案として「国鉄再建闘争方針」を提起。活動方針は

  1. 国鉄の「分割・民営化」を阻止し、真に国民のための国鉄再建をかちとるために国民の多数派形成をめざし、有権者過半数を目標とした署名運動を展開する
  2. ローカル線廃止をやめさせる運動を進める
  3. 国鉄労働者の首切りを許さないために、総評傘下全組合員が団結してたたかう
  4. 総評国鉄再建闘争本部を設置する、などが柱となっている

加古川線 黒田庄~比延間【新駅開業】日本へそ公園 7/15
東北・上越新幹、線、利用者l億人を達成 7/18

57年6月23日の東北新幹線の開業以来1,122 日目の記録達成、東海道新幹線の1億人達成の1,016日にわずか106日遅れただけだった。両新幹線の一日の平均乗客数は58.59年には9万人台であったが、今年3月の上野開業により一気に増加し、1日12万人に。これまでの1日の最高利用人員は、今年5月6日に東北新幹線が記録した17万人

第1次特定地交線美幸線第8回対策協議会で9月16日限りで廃止、パス転換を決定22日第2次特定地交線幌内線の第1回対策協議会開催 7/18

国労動労・全動労・全施労の国鉄4労組は、国鉄再建監理委の最終答申に対し連名の抗議声明 7/26
動労の第一二回大会開催 7/26

統一労組懇や民主団体などによびかけ、1,000万署名に取組むことを決定

山陰本線 竹野 ~ 佐津間【臨時駅開業】(臨)切浜海水浴場 7/27
東海道貨物線【旅客営業再開】品川~汐留間(カートレイン九州運行開始に伴う) 7/27
汐留~東小倉間に「カートレイン」運転開始 7/27
同じく、地元負担で建設される、東海道新幹線豊橋~名古屋間に新設される(仮称)三河(現・三河安城)駅でも起工式 7/29
国労第48回定期全国大会(名古屋)。7/29~8/2

分割・民営化反対のため5000万署名運動の強化、重要段階でのストライキなどの方針採決

国労委員長に山崎俊一氏 7/29~8/2

国労(20万人)は名古屋で開かれた定期大会最終日に役員改選を行ない、新委員長に山崎俊一書記長(53歳)、新書記長に荒井敏雄調査資料室長(52歳)ら新執行部を選出
山崎委員長は「分割民営化阻止」を宣言

政府「意見」を最大限尊重する旨の閣議決定 7/30
政府、「国鉄再建閣僚会議を改組して国鉄改革閣僚会議」とし、長期債務の処理、余剰人員対策などにあたることとなった。山下運輸大臣は杉浦総裁に対して「直ちに改革推進体制を整備し、作業に着手されたい」と指示 7/30
国鉄再建実施推進本部にプロジェクトチーム設置 7/30
昭和60年度仲裁裁定完全実施を決定 7/30
運輸省国鉄改革推進本部 7/31

運輸省〈現・国土交通省〉は国鉄再建監理委員会の分割・民営再建答申を実施に移すため,山下運輸相を本部長とする国鉄改革推進本部を設けた。長期債務処理の具体策などを詰め、次期通常国会への提案をめざし130本をこす法律の立法、改正づくりにあたる

ここで特筆すべきは、7月の最初の方に記述したように、分割民営化答申が出される前の7月15日から開催された総評七三回大会で、労働戦線統一問題と並んで国鉄再建問題も大きな話題として検討された事です。

85年度運動方針とは別に単独議題として提案され、以下の方針が確認されました。

  1. 国鉄の「分割・民営化」を阻止し、真に国民のための国鉄再建をかちとるために国民の多数派形成をめざし、有権者過半数を目標とした署名運動を展開する
  2. ローカル線廃止をやめさせる運動を進める
  3. 国鉄労働者の首切りを許さないために、総評傘下全組合員が団結してたたかう総評国鉄再建闘争本部を設置する

当時の総評にあっては、国労全逓と並ぶ大組織で有り、国労の衰退は総評の解体に繋がる事になります。

8月分

国労が時限スト 8/5
分割・民営化に反対する国労は再建監理委員会の最終答申に抗議して始業時から全国1、500カ所で1時間の時限スト。乗務員関係を除いたためダイヤに影響はなかった。国労のストは昨年8月以来1年ぶり
東京都12号線認可 8/5
運輸省は小形地下鉄となる練馬~光が五間の東京郡宮地下鉄12号線の工事施工を認可
国鉄本社 第292回運転事故防止対策委員会開催 8/5
小千谷第二発電所の起工修ふつ式 8/6
鉄労第18回定期全国大会で、分割民営化支持の運動方針採決、杉浦総裁が初めて出席 8/6
鉄労第18回全国大会(6~8日)鉄道労働組合(辻本滋敬組合長)の6日から3日間の日程で、東京・上野の池之端文化センターで関かれ、歴代総裁で初めて労組大会に出席
政府「国鉄余剰人員雇用対策本部設置」 8/7
国鉄改革関係閣僚会議で「国鉄余剰人員対策本部」を内閣に設置し、本部長に中曽根首相をすえ、政府をあげて取り組むことを決定
国鉄本社職員局に「雇用対策室」「職業訓練室」を新設「余剰人員対策本部」を拡充強化 8/7

等と記述されていますが、ここで鉄労が分割民営化を容認したこと、また杉浦総裁が労組大会に出席したことが特筆されます。

国鉄があった時代(企画・監修 加藤公共交通研究所)

地方自治体でも多くの自治体で反対決議がなされたと、国労は以下のように集約していますが。国労も認めているように、実際にはローカル線の廃止は反対だが、国鉄の分割民営化は容認という場合もあったようで、実際の国鉄分割民営化反対は、もう少し少なかったものと思われます。

国鉄分割・民営化に反対する地方自治体の決議や意見書採択は、国労の集約結果によると、85年7月24日現在で12県、130市、319町、54村の合計515となっていた。

 

 

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********************************以下は、国労の資料になります。************************

 

┌──────────────────────────┐
├○ 他労組、団体による国鉄分割・民営化反対の支援決議 │
└──────────────────────────┘
 
 監理委員会の答申が提出されて以降、多くの労働組合が組合大会において、国鉄分割・民営化反対、国鉄労働者支援の決議を行った。新聞労連は7月26日の定期大会で国鉄労働者とともに連帯して闘うことを決議した。同日、政労協も定期大会で「国鉄の分割・民営化と10万人首切りに反対する決議」を採択した。全国一般は7月31日から開いた定期大会で国鉄分割・民営化反対闘争を支援することを決定した。全金は8月27日からの定期大会で採択した決議は「総評提起の5000万署名・100円カンパを柱とする分割・民営化反対の闘いを支持し、国労の闘いを支援する」と記されていた。ホテル労連は8月31日の大会において「国鉄再建闘争を支援する特別決議」を採択した。9月8日から開催していた運輸一般も国鉄分割・民営化に反対し、ともに闘うことを決議した。全運輸省労組も9月12日の定期大会で「国鉄解体の分割・民営化に反対し、国民の足を守り国鉄労働者とともに闘う決議」を採択した。同じ日に開催された全気象労組も国鉄労働者と共に闘う決意を表明した。そのほか多くの労組が闘争支援を決定した。
 国鉄分割・民営化に反対する地方自治体の決議や意見書採択は、国労の集約結果によると、85年7月24日現在で12県、130市、319町、54村の合計515となっていた。ただし、この決議には「地方交通線廃止反対」だけで、「国鉄分割・民営化反対」がないものも含まれている。
 世界労連は9月30日から10月4日まで開いた総評議会で、日本の国鉄分割・民営化反対闘争への連帯メッセージを採択した。
また、ITF(国際運輸労連)は10月15、16日の執行委員会で、鉄労の加盟を満場一致で否認した。