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国鉄労働組合史詳細解説 137

社会党国鉄民営化案と国労

日本社会党(現在の社民党)は、総評の意向を受けて国鉄の民営化はやむなしとして、国鉄の民営化案をまとめます。(最終的な案は昭和61年1月28日に正式発表されたわけですが、そこで提案された、国鉄改革案は、以下の通りでした。

日本社会党、現社民党が総評の意向を受けて再建監理委員会の対案

社会党国鉄改革案

国鉄分割民営化は既定事項としてやむを得ないとするも、あくまでも政府が株式の70%以上を保有することで実質的な国営事業であることを明記するとともに、民間会社ですので、スト権の関する問題は解決される。
雇用の確保については、民営化手法の導入だけですので、問題なくスト権は付与されることとなります。
国鉄問題社会党案(日本鉄道株式会社法案)に関する覚書」では、上述のように国が実質的に運営する株式会社とすべしとしており、「株式会社にする理由がどこにあるのか」という点では、下記のように。

  • 再建監理委の答申は、これからの鉄道輸送は、①新幹線などによる都市と都市との間、②大都市圏、③地方主要都市、という三つの分野の旅客輸送で収益性のある事業としてその責任を果たし続けるべきだとし、ローカル線切りす照る方向であること
  •  「公共の福祉」と言う視点からも、国民の交通権、安全・平等な足の確保といった理念が重要である

 

この答申案は、総評の意向を受けて社会党が作成したものですが、現在のJRが抱える根源的な問題を指摘しているという点では注目しても良いのではないでしょうか。

国労自身は社会党案は受け入れられないとして批判

国労では最終的には分割・民営化双方に反対する方針を取っていたことや、動労との足並みの乱れなどもあり(動労はこの頃には総評とも距離を置くこととなり、国労との関係はさらに冷え切ったものとなっていた)のですが、国労の資料で明らかにしてるように、朝日新聞の社説で指摘された、以下の点は容は改めて検証されるべきではないでしょうか。

  • 「多くの人は、従業員約三二万人の電電公社が分割されていないのに、なぜ国鉄は分割されるのか
  • 分割は国鉄労使に対するショック療法のねらいがあったのではないか
  •  北海道、九州、四国の三会社は、債務の引き受けを免除し、合理化と運用基金で黒字経営が可能とされているが、経営基盤はきわめて弱い。運賃値上げ、不採算線の整理に拍車がかかる懸念は消えない
  • 本州が三分割なのかの疑問は大きい
  • 新幹線のリース会社まで作って、本州を輪切りにすることで、利用者にとってまた経営面でどんな利点があるのか
  • 分割は会社間の手間や経費を増やす。利用者には乗り継ぎの不便や、割高な運賃が押しつけられることはないか
  • 本州分割にこだわったことが、相当な無理をともなっていることは否めない

と指摘しています。

新幹線のリース案件に関しては、JR自身も新幹線の買い取りという形で決着?するわけですが、これが結果的にJRの再編成を難しくしてしまったように感じます。(JR各社の資産として新幹線が確定したことで、資産価値も確定し上場がしやすくなった、むしろ新幹線が常にリースの場合は、内部留保JR東海は相対的に小さくならざるを得ず結果として再々編(本州会社の統合等)も行いやすかったのではないかと思われます(あくまでも私見ではありますが。
また、この譲渡による1兆円の上積みが整備新幹線の財源となったわけですが、ここに来て整備新幹線のスキームの矛盾が出てきていることもあり、本当に新幹線が必要だったのかという問題なども出てくると考えられます。

動労は、国労との共同歩調から独自の運動にシフトすることに

最後に、当時の動労の動きについても記しておきたいと思います。

かつて、マル生運動反対やスト権ストでは共同歩調を取ってきた動労ですが、昭和57年の大幅な貨物ダイヤの減便など以降は、動労による「働こう運動」により、当局にすりよる事となりました。

具体的にどのような運動であったのかは、日刊動労千葉(千葉動労)の1360号 ’83.6.9号に下記のような記述がありましたので、抜粋してみたいと思います。

なぜならば、動労「本部」革マルの推進する「働こう運動」は、運用効率の向上を狙う「動乗勤」改悪を先取りする運動であるからです。
動労「本部」革マルは、「働こう運動」方針のもと「動乗勤」 改悪に積極的に応じるとともに、これと対決して闘おうとする部分には「入浴闘争」と同様に「冬の時代だ」「今は闘うべきではない」「闘うから権利を奪われる」「闘うやっは挑発者だ」なるキャンペーンをはり、暴力と恫喝をもって襲いかかってくることは必至です。
すべての国鉄労働者は政府・国鉄当局の尖兵となり労働者を翼賛運動にひきずりこ
りこもうとする 動労「本部」革マル反動分子の裏切りを許さず、追放・ 一掃を実現し、動労大改革をかちとろうではあり せんか。

日刊動労千葉 83.6.9 No. 1360号 敵の尖兵=「働こう運動」の動労「本部」革マルを一掃しよう

日刊動労千葉 83.6.9 No. 1360号

革マルが提唱する、「働こう運動」は「乗りこえ運動」

ここで動労の働こう運動という言葉が出てきましたが、動労自身が雇用の確保という観点から提唱したもので、前述の通り貨物輸送の減便とそれに伴う機関車乗務員の余剰発生が大きな危機感となったのでした。
機関助士反対闘争でも解体寸前まで追いやられた経緯がある動労とすれば、乗務員(組合員)の確保は最重要課題であることから、昭和57年以降も国労との共同戦線で分割民営化反対は唱えるものの、職員の出向などにも積極的に応じるなど,それまでの鬼の動労から、労使協調宣言を表に出すような形となりました、これがいわゆる「働こう運動」の具体的な内容でした。
そして、この考え方の根底にあるのは、伝統的な革マル派の理論、権力等に取り入りその中から革命を実行するということで、中核派とはその根底において大きく異なるものと言えました。

そしてこのように、時には権力者にも取り入ることが、「乗りこえの論理」の一つであったわけです。

「既存の価値観に囚われない新しい労働運動や大衆運動を展開する(運動上ののりこえ)ことを指している。」

革マル派の行動を決定付ける論理で、

  • 他党派の戦術やイデオロギーを批判する(理論上ののりこえ)ことで、
  • 党派闘争に勝ち抜き、他党派を革命的に解体する(組織上ののりこえ)ことで、
  • 既存の価値観に囚われない新しい労働運動や大衆運動を展開する(運動上ののりこえ)ことを指している。

この論理は他の新左翼党派と共闘できない大きな要因となっており、他党派との激烈な内ゲバを過去に起こしている。

 

参照:wikipedia

 

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ところが、社会党は8月21日に国鉄再建対策委員会( 委員長・小柳勇参議院議員) において監理委員会の最終意見に対抗する、同党としての「国鉄再建の具体案」をまとめた。それによると、①全国ネットワーク網を維持し、分権化をすすめる。②経営形態は政府出資の企業体とするが、経営は民営的手法を大幅に導入し、民間資金も導入する、③整備新幹線の着工について、当面見合わせる、などであり、「民営化」に柔軟な姿勢を打ち出し、分割阻止を最重点課題としている点に特徴があった。この再建案は、9月11日の社会党第六四回中央委員会で正式決定された。民営化反対を棚上げする方針を決定した背景には、公明党が分割に慎重な姿勢をみせたことをとらえ、同党との共闘をさぐる狙いがあると、受け止められていた。
 マスコミの見解
 監理委員会の最終答申は、どの新聞も一面で大きく取り上げた。
1982年初頭からマスコ、ミは、国鉄および国鉄労働者に対する批判キャンペーンを展開し、臨調〞行革の正当性に裏付けを与える役割を果たしたが、この報道姿勢から三年余り経た段階で、この最終答申に対しどのような評価をしたであろうか。
 『朝日新聞』は社説で、まず、「分割、民営化ではたして国鉄は再生するのか」と問題をたて、経営形態について「現行の公社制度は多くのひずみを抱え、行き詰まっている。政治の行き過ぎた介入を防ぎ、予算や行政上の監督、規制を緩めて、国鉄経営に企業としての権限、責任、活力を年み出させないと、輸送市場の厳しい競争にに生き残れまい。民営化の方向でおおかたの合意をまとめることは可能なはずである」と民営化には賛意を表していた。
問題にしたのは分割であった。
 「多くの人は、従業員約三二万人の電電公社が分割されていないのに、なぜ国鉄は分割されるのかと思うだろう。鉄道のもつ地域密着性や労働集約性だけで、これを説得しきれるだろうか。むしろ、国鉄労使に対するショック療法のねらいがあったのではないか。/ 北海道、九州、四国の三会社は、債務の引き受けを免除し、合理化と運用基金で黒字経営が可能とされている。だが、経営基盤はきわめて弱い。運賃値上げ、不採算線の整理に拍車がかかる懸念は消えない。とりわけ、なぜ本州が三分割なのかの疑問は大きい。新幹線のリース会社まで作って、本州を輪切りにすることで、利用者にとってまた経営面でどんな利点があるのか。分割は会社間の手間や経費を増やす。利用者には乗り継ぎの不便や、割高な運賃が押しつけられることはないか。本州分割にこだわったことが、相当な無理をともなっていることは否めないのである」と国鉄分割への疑問をのべていた。
 さらに国鉄経営の破綻の原因について、「それは何より政府の責任であることを強調したい。国鉄経営悪化の大きな原因が、過去の政策にあり、その解決に国民の負担を求める以上、国鉄労使を批判してすませる段階はすぎたと知るべきだ」と明言し、監理委員会の最終答申が不問にした点に言及した。
 日本経済新聞の社説では、「国鉄民営化の必要性について、すでに、国民大方の意見は一致している」とみなし、さらに「分割化は、国鉄として、避けがたい選択と言わなければならない」とのべていた。監理委員会答申の分割民営化の理念は妥当としているが、「問題は、分割民営化の実現可能性と論理の整合性にある」とし、いくつかの疑問点をあげた。
 たとえば、三島会社に運営基金を与えたとしても「赤字にならないで済むかどうかはわからない」という指摘があった。あるいは「臨調の提言では『国鉄に特有の公共性を求める必然性は乏しい』と言っていたものが、それなら、なぜ、一時的なものとはいえ基金を設けて実質的な助成をする特殊会社を設けるのか」との疑問を出した。さらに、「監理委はかねて、職員の管理限界は5万人としていたが、東日本鉄道会社の規模は8万9000人あるいはそれ以上にのぼると想定されている。これでは、管理の限界を超えることにはならないのか」と述べた。
 「北海道新聞」は社説の冒頭において、答申を読むと「なぜ、分割が再建の絶対条件なのか、という疑問のほうが先に立ってしまうのである」と監理委の意見に対し、全国紙よりも批判的な論調であった。監理委員会の意見書では、三島会社が黒字になると説明していたことに対し、「そこで強調したいのは、各社が黒字になる要因は〃必ずしも分割・民営化とは関係がない〃ということである。ひるがえっていえば、意見書のような長期対策、人件費対策が打てるなら、分割・民営化しなくても国鉄は黒字になることが示されているようなものだ」と批判した。
 経営形態については、「経営形態のあり方は慎重に検討されるべきだ。職員が意欲を燃やして働ける形態が望ましい。民営化は検討に値するが、税金など経費が急増したり、政治干渉は相変わらず、というようなことにならない工夫が必要だ」と述べ、民営化に全面的には賛成していない。
 新聞社の社説で共通しているは、監理委員会が審議過程を公開