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国鉄労働組合史詳細解説 153 国労闘争と労使共同宣言

約一ヶ月ほど経ましたが、改めてアップさせていただきます。

労使共同宣言までの一連の流れ

昭和61年になると、国鉄分割民営化は既定事項となり、鉄労・動労・全施労は「労使共同宣言」を締結し、国労は更に孤立を余儀なくされることとなりました。
改めて国鉄改革関連の時系列を、弊サイト国鉄があった時代から引用しますと下記のようになります。
三塚運輸大臣が、組合幹部に要請したことを受けて、1月13日に杉浦総裁と国労以下組合幹部が会談、鉄労・動労・全施労の三組合は、「 案文については、 若干の主張はある」としながらも、基本的には同意できるとして、労使共同宣言を受諾、国労は  「 提案の方法が唐突だ」として、議論に参加することはなく、国労は「労使共同宣言」は受入れ出来ないとして、「労使共同宣言(案)に対する態度」という見解を発表しています。
国鉄余剰職員2万1000人を関連企業が受入 1/7
国鉄は61年度から65年度(平成2年度)までの5年間に、2万1000人の余剰職員受入先を、鉄道弘済会日本交通公社など関連企業(865社)に確保したと発表
国労幹部学校で山崎本部委員長、「かつてない試練にさいし、団結を強化、国鉄労働者の期待と3300万署名にこたえるため総決起の年としたい」と決意を表明 1/7
国労三役、三塚運輸大臣と会見、組合は労使関係の確立など強く要請。あわせ国鉄再建に対する基本的態度、雇用問題について主張 1/9
三塚運輸大臣5組合幹部と会談(強く協力要請) 1/10
総裁、各組合のトップ交渉で「労使共同宣言案」を提示。鉄労、動労、全施労は共同宣言締結、国労は拒否 1/13
勤労、鉄労、全施労の3組合と「労使共同宣言」を発表
以下は、国労四〇年史年表から引用した内容 1/13
国労など国鉄内各組合、杉浦国鉄総裁とトップ交渉。席上、 当局側、用意の「共同宣言」に同意を要請。国労〝非常識〟と直ちに拒否。動労、鉄労、全施労は同意。この後、 当局と合同記者会見。動労委員長、「ナショナルセンターは度外視し、鉄労にはご指導をお願いするなど」発言
国鉄当局、「内容証明」で「共同宣言」を国労本部に送付 1/14
国労、闘争指令10号で、不退転の決意でたたかい抜こうと全組合員に訴え 1/14
国労中央闘争委員会、「共同宣言」に対する見解示す。 「共同宣言は受け入れられない」との基本見解 1/16
国労、当局の「進路アンケート調査」問題で緊急指令。 当局が「白紙は個人の意思か組合の指導か」など個別的に 組合員に対する問責を実施することを決めたため 1/16
国鉄労使、「進路アンケート問題」で団交。 国労は中止を要求。当局は即答を拒否 1/17

鉄労は1981年にも労使共同宣言を締結すべしと当局に要望

なお、国鉄改革時の象徴とも言える労使共同宣言に関しては、「国鉄民主化への道」によりますと、1981(昭和56)年10月の鉄労の第14回年次大会で、「労使共同宣言」を行うべきであると提唱したが、当時の当局(国鉄幹部)は国労に配慮してこれを受け入れず、当局と鉄労間の「共同確認」で終わったと記述されています。
余談ですが、1981(昭和56)年10月の鉄労第14回年次全国大会で提起されたのは、国鉄再建に当たってどうするべきかと言うことで、かなり踏み込んだ部分での確認であったことが判ります。
以下、国有鉄道 1981年11月号 「仲裁と国鉄再建で議論」 P19から引用させていただきます。
鉄労としては「 経営改善計画 の不備を補 い、誤りを改 め、目標達成に向かつて大胆に再建に取り組んでいく」と宣言、具体的には、(再建期間中はス 卜 をやらない)平和条項を含む再建協定を労使で締結。これを労使共同によ る”国鉄再建宣言”として国民の 前に明らかにする。そして、現在、各組合と当局との間で聞いている”労使会議”を一本化し、 (当局と全組合による)合同労使会議(仮称)を設置、この中で再建問題や労働条件、合理化施策について話し合ってはどうか、という提言、今後、実現 を迫っていく 意向である。
結果的に、当時の労使確認を拡大したものが今回の労使共同宣言であったと言えるわけですが、少なくともこの時期に鉄労が提唱するような労使共同宣言が行われ、国鉄再建のベクトルを組合間で一致させることが出来ていれば良かったのでしょうが、当時の状況では難しかったと言うことになるのでしょう。

出典:国有鉄道 1986年3月号

国労は、当局のやり方は受け入れできないと拒否

国労は、こうした国鉄当局による共同宣言に対して、拒否する態度を明らかにするとともに、以下のように宣言しているわけですが、当時の世論などを考えると、かなり厳しいのではないかと感じてしまいます。
  1. 『労使は諸法規を遵守し、全力をあげてこれを実現する』と、ストライキとその権利を否認している
  2. 『リボン・ワッペンの不着用』と、労働組合の初歩的運動さえ否定している
  3. 『希望退職について『目標の達成に向けて積極的に取り組む』と労働組合みずからに『選別』を求めている

 等々、労働組合運動存立の基本を否定する『宣言』を意味しており、労働組合である以上拒否するほかないものである。

としていますが、こうしてみる限りではまだまだ過半数を占めていただけに、当局に対してまだまだ強く言えると思っていたのでしょう。

 

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第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

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第五節 労使共同宣言と国鉄内労組の再編
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├○ 一 労使共同宣言の提案と各組合の対応 │
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 労使共同宣言への各組合の対応

 動労、鉄労、全施労の三組合は、「労使共同宣言」を調印することにその場で同意し、1月21日に調印した。動労は、1月14日の総評拡大評議会において「宣言」に同意するに至った理由を「膨大な余剰人員の雇用をどう確保するのか、まず労使の決意を示し、世間にお願いするほかない。雇用確保のためなら、蛇といわれ仏といわれようが、この姿勢は貫く」と説明した。この行動は、動労が半年後に総評を脱退する前触れであった。
 一方、国労は1月16日に「労使共同宣言(案)に対する態度」という見解を発表した。内容の要旨は次のとおり。
  まず「宣言」の内容と国労の立場について、「具体的には①『労使は諸法規を遵守し、全力をあげてこれを実現する』と、ストライキとその権利を否認している、②『リボン・ワッペンの不着用』と、労働組合の初歩的運動さえ否定している、③『新しい事業運営の体制を確立』と事実上分割・民営化を前提とし容認を求めている、④希望退職について『目標の達成に向けて積極的に取り組む』と労働組合みずからに『選別』を求めているー 等々、労働組合運動存立の基本を否定する『宣言』を意味しており、労働組合である以上拒否するほかないものである。加えて、3300万人以上の賛同者を得た署名運動と、その成果の上に国鉄再建闘争を一層強化することを総評・動労とともに誓ってきた立場から、署名をいただいた国民のみなさまに対しても、『分割・民営化』を容認する『共同宣言』を受諾することは背信行為であり、まともな労働組合のとる態度ではない」と述べた。
 「宣言」を受諾した動労の批判として、「鉄労と全施労の受諾は、この間の彼らの運動から大方の予想どおりと受け取れるとしても、動労はつい先日まで共に5000万署名運動を行い、国鉄再建闘争の一層の推進を決めあってきた。にもかかわらず5000万署名運動を裏切る挙に出た。これを変節といわずして何を変節というのだろうか」と指摘した。
 当局に対して、「仮に労使が『共同宣言』を行うとすれば、その『宣言』とともに労働条件等について具体的な内容が協定化されているのが常識である。しかし今回の『共同宣言』には、そのような具体性が全くなく、抽象性に満ちている。労働者の諸権利を放棄し、丸ハダカになり、得るものは何もない。想定するに国労が受諾し得ないものを持ち出して国労を孤立化させようとする苦肉の策としか言いようがない」と批判した。
 国労の決意として、「国鉄労働組合は、当局・三組合一体の組織攻撃を仕掛けられようとも、労働組合の基本を守り、組合員と国鉄労働者の雇用をあくまで守る立場を貫くと同時に、署名をいただいた3300万人の負託に応え、総評・社会党をはじめ多くの労働組合・民主団体の協力を得ながら、国鉄再建闘争とあわせ、雇用問題解決のため全力を傾注する。われわれはこのような当局の労働者分断策を許さず、職場・地域から一層団結し、共闘を強化することを内外に明らかにするものである」と表明した。
 2月13日、「労使共同宣言」の主旨にもとづいて国鉄当局と宣言締結三組合はトップ会談を行い、北海道や九州から余剰人員を本州の大都市圏へ広域配転することで、基本的に意見の一致をみた。動労は「共同宣言」の精神にのっとり「広域配転」に積極的に取り組み、2090人の動労組合員を応募させた(応募者総数3515人)。
 
続く