今回は、鉄労が提唱した地域本社制に関しての国労の見解です。 なお、公正を期するために、鉄労自らの、地域本社制に関する話を合わせて参照しながらお話を進めたいと思います。
国労視点では、鉄労の地域本社制導入は、分割民営化を容認したと認識
最初にお断りしておかないといけないのは、鉄労は、「再建監理委員会の緊急提言に対する我々の意見と任務」並びに「国鉄の分割・民営化から職場を守るために・業務の外注化より労働生産性を高めよう」という別冊資料を提案し、国鉄再建に対する考え方を明らかにしたとしていますが、これは国鉄の分割民営化を容認する、もしくは、推進するものではありませんでした。 国労の資料では、以下のように鉄労がその方針を変節させたという風に書いています。
「現行制度の悪弊を除去すると共に徹底した分権化をはかり、民間的手法の大幅導入を可能とするなど、経営者の権限と責任によって可能な限り自由に企業意志を決定できることを基本とした経営システムヘと改革しなければならない。」
経営規模を適正に区分し「地域本社制」で再建をすすめるべきだ、と提言した。この内容は、81年の「国鉄経営改善計画」について「鉄労の意見」( 5月に発表) を変更するものであった。
と書かれていますが、ここで書かれている、国鉄経営改善計画とはどのようなものであったのでしょうか。
1981(昭和56)年に鉄労大会で提案された、国鉄経営改善計画とは以下のようなものでした。
鉄労の国鉄経営改善計画とは?徹底した合理化と正常な労使関係
鉄労の根底には、徹底した合理化などにより、健全な労使関係の確立と徹底した合理化は必須であり、業務の外注化をも含めて徹底的な生産性の向上を図るべきであるというのが基本的な考え方でした。
その辺を当時の国労大会の様子を記した、「1981年11月号 国有鉄道」という部内紙から引用してみたいと思います。
鉄労としては「経営改善計画の不備を補い、誤りを改め 、目標達成に向かつて大胆に再建に取り組んでい く」と宣言 、具体的には、(再建期間中はス卜をやらない)平和条項を含む再建協定を労使で締結。これを労使共同による"国鉄再建宣言"として国民の前に明らかにする。そして、現在、各組合と当局との間で聞いている"労使会議"を一本化し、(当局と全組合による〉合同労使会議(仮称)を設置、この中で再建問題や労働条件、合理化施策について話し合ってはどうか、という提言、今後、実現を迫っていく意向である。
鉄労としては、当局が合理化であるとか、正常な労使関係と書いているものの、その中身にあまりにも踏み込んでいないことに対して、どう対処するのか、違法ストに対して当局の姿勢はどうなのか、職場規律の確立についても、重大な問題であるにもかかわ らず触れていない事への不満などが述べられています。
ただ、ここで注目していただく必要があるのが、鉄労もストは辞さないと明言しているところです。
ただ、鉄労が考えているストは非常に強力なもので言わば刺し違えるくらいの覚悟で挑むものだという位置づけをしています。
これに対しても、再び「1981年11月号 国有鉄道」という部内紙から引用してみたいと思います。
討論では、仲裁裁定の完全実施、国鉄再建問題 、組織拡大など 3 点が議論の中心となった 。 なかでも仲裁問題が最大の焦点となった。ことにマスコミが「仲裁裁定が完全実施されなければ 、無期限ス 卜で闘う」との厳しい方針を打ち出した、と報じたため「裁判闘争に出た場合、法廷闘争が長びき 、ストはどうなるのか」、「iストは、いつの時期に計画するのか」など、もっぱら "スト" 問題に論点が移った 。
国労や動労のストを "違法"、と決めつけてきた関係で 「職場の中で 、 混乱が起きたり 、逆に国労・動労から共闘を申し込まれはしまいか」といった懸念する向きもでるほど。こうした代議員の動揺に対して本部側は、中執見解を示 して、統一方針を確認した。 また、総括答弁で書記長は 「単一の経営体の保持こそが職場を守り抜く こ とであり、不満もあり苦しくても 、35万人体制は絶対に仕上げ、なければならない」と訴え、新しい提言を柱に国鉄再建に大胆に取り組んでい く決意を明らかにした 。
と有ります、かように鉄労も国鉄再建に関しては、単一経営体の保持が大事であるとしてきたのに対して、「徹底した分権化をはかり、民間的手法の大幅導入を可能とするなど、経営者の権限と責任によって可能な限り自由に企業意志を決定できることを基本とした経営システムヘと改革しなければならない。」として、再建監理委員会の分割民営化を容認したものと国労は理解したようでした。
この辺は、改めて、鉄労編纂の国鉄民主化への道から引用してみたいと思います。
昭和58年の定期大会でも、職場規律の確立などで改善できると提案
実際には、マスコミも同様の判断をしたことところがあり、国労は反対・動労も反対、鉄労が裏切って、分割民営化に舵を切ったと思われた遠因ですが、実際には、以下のような発言をしており、必ずしも分割民営化を全面的に支持しているものではないと考えられます。
鉄労としては、昭和58年度の定期大会では、国鉄の再建は、十分に現行形態で可能であるとして以下のような主張をしていました。
以下、「国鉄内労働運動の民主化への道」P692から引用させていただきます。
鉄労の定期大会が、9月7日~9日に東京・港区のニッショーホールで開かれた。・・・中略・・・・、国鉄再建に対する基本的な考え方を内外に明らかにした。
その骨子は、従来からの主張をまとめたもので。国鉄内労働運動の民主化、健全な労使関係の確立、職場規律の確立、徹底した合理化努力に取り組むことこそがわれわれの任務であり、国鉄労使の真剣は努力が国民に認められるならば、「分割民営化」に求められている再建への施策は、現行の企業形態でも十分達成し得る、と訴えていた。
と書かれていました。
鉄労の地域本社制導入は、分割民営化を容認したものではない
鉄労が中央委員会で「地域本社制」の導入を柱とする、「国鉄経営再建に関する鉄労の意見と提言」が協議された際の、地域本社制と言う考え方を、各マスコミが、「国鉄の分割・民営化構想、鉄労が事実上認める」(産経新聞)や、「分割民営化に賛成」(朝日)、「分割・民営を”支持"」(読売)など、こぞって鉄労が民営化を支持しているという見出しで記事を書いたからですが、地域本社制自体は、「雇用と生活を守るためのものであり、分割・民営化に賛同するとは一言も書かれておらず、むしろ。分割民営化を阻止し、雇用を守るという本来の組合の趣旨に沿うものであったのですが。これはマスコミのミスリードと言えそうです。
結果的に、中央委員の間でも相当戸惑いがあったようで、案の定定期大会でもかなりその辺が論議の的となりました。
この辺は改めて、記載させていただきます。
続く
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国鉄があった時代 JNR-era
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第2章、国鉄分割民営化攻撃と国労攻撃
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第六節 国労の国鉄再建提言
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├○ 三 鉄労の「地域本社制」提言│
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鉄労は、1984年6月の第45回中央委員会において「地域本社制導入」を柱とした「国鉄経営再建に関する鉄労の意見と提言」を提起し、職場討議にかけ、84年9月の第17回定期全国大会で正式決定した。
この提言は、現行制度の延長線上での再建は不可能との立場からなされている。すなわち、「昭和56年に経営改善計画が策定されて以降、今日まで3年が経過した。この3年間の経過と実績を冷静に分析し、総括してみる限り、残念ながら現行の制度・手法及び経営者の姿勢では」国鉄改革と再建は不可能である。したがって、「わが国における鉄道特性を発揮しうる経営体制」へと転換をはかるべきで、その場合に「現行制度の悪弊を除去すると共に徹底した分権化をはかり、民間的手法の大幅導入を可能とするなど、経営者の権限と責任によって可能な限り自由に企業意志を決定できることを基本とした経営システムヘと改革しなければならない。」
経営規模を適正に区分し「地域本社制」で再建をすすめるべきだ、と提言した。
この内容は、81年の「国鉄経営改善計画」について「鉄労の意見」( 5月に発表) を変更するものであった。そこでは、従来の再建計画が破綻した理由を、年来の主張と同様、労使関係上の問題点と交通政策および行財政上の問題点に分けて指摘し、国鉄の分割・民営化についてはいわゆる「出口論」を主張していたのであった。
今回の提言は具体策が85年3月に発表されたが、ここで地域本社制の内容が次のように明確にされた。
「地域本社制への移行とは、単なる国の機関としての輸送業から『鉄道を中心とした地域の総合産業』へと脱皮することである。
従って、各地域本社は、地域の特性に応じて可能な限り自由に事業経営が行える体制とすべきであって、経営形態は『民営』であり、機能的には『独立した会社』である。」この地域本社は、「当初『政府持株の特殊会社』として発足するが、一定期間の後に」、逐次「株式会社」に転換する。地域本社の区分は、本州を4区分( 東北、関東、中部、関西) し、北海道、四国、九州を島別に区分して、七つの地域本社と東海道・山陽新幹線本社を創設する。
鉄労は「地域本社制とは民営・分割となった場合の新会社のひとつの呼称と考えたほうが理解しやすい」といっており、分割・民営化を提言したのである。そして、これらの地域本社で鉄道輸送に従事する社員を「私鉄並み効率で推計」すると、20万人とはじきだしていた。
続く