鉄道ジャーナリスト、日本国有鉄道歴史研究家 日本国有鉄道 社会学 鉄道歴史 労働史 労働運動

日本国有鉄道 労働運動史

鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 146

はじめに

国鉄分割民営化の方向性が示され、動労国労とは距離を置き始めた時代にあって、国労は分割民営化反対をスローガンに掲げていました。
この時期は、若手職員などが将来に不安を感じて自殺などもありましたが、まだまだ国労国鉄の中でも最大人員を誇る組織であり、総評もかなり力を入れて応援していました。
世論は、前年のNTTの民営化成功を受けて、民営化には比較的好意的であり、分割に対する不安は持っていたものの、国鉄の赤字を解消するには競争させるべきだ・・・その為に分割するのだと言う論理は冷静に考えれば非常の矛盾した内容でも有りました。
すなわち、前年に民営化された、専売公社も電電公社も分割はされず、それぞれJT・NTTという全国一社の民間会社として誕生したのでした。 そして、電電公社の場合は外圧もあったと言われていましたし。なんと言っても通信事業を独占していましたので、言わば優等生のような存在でした。 それでも、民営化でサービスが良くなったと思わせる宣伝効果なども加わり、世論は公企業の民営化は、メリットしかもたらさないという錯覚を持ったわけです。

当時の雰囲気は、NTT優等生、国鉄劣等生、郵政・・・自分は郵政省直営だから関係無い。むしろ国鉄のように分割されないようにしないといけないなぁということで、当時の郵政職員には、全くといって良いほど、民営化の危機感は持っていませんでした。 そんな時代の中、国労は反対署名運動に取り組むこととなりました。 国労組合員が一丸となって署名運動を推進 本文では、「南近畿地本からは、次のような報告と意見が述べられた。すなわち、同地本では国労組合員1人100人の署名獲得目標にたいして、大阪、和歌山、三重、奈良県支部で約64万5000人、110・1%を達成した。」という記述が見られますが、南近畿地本は言うまでもなく、天鉄局管内になります。 そこで思い出すのは、阪和線を利用したとき、車掌から国鉄分割民営化反対の署名をお願いしますと言うことで頼まれてサインした記憶があります。もっとも、こうした行為は広い意味では職務専念違反になるのかも知れませんが、当時から民営化はまだしも分割には異議を感じていたので、署名に協力した事を思い出しました。 ですので、南近畿地本は案外そうした、署名運動も行われたので、目標に対して110%という。1割も多い、64万人以上の署名が集まったのではないかと思います。

国労の主張はある意味正しい

単なる署名運動に終わらせないために、政府や自民党の本格的な組織分断・国労の孤立化攻撃にたいして、国民的多数派形成への基盤をさらに強めていくことが必要であるとの主張がなされた。

この主張は、組合としての方向性は間違っていなかったかも知れませんが、数年前までは、要求貫徹のためにストライキを行っていた組織が、今度は組織防衛のために反対運動を行うというのは、世論的には受け入れにくかったのはやむを得ないと言えそうです。それでも、まだまだ世間では、分割民営化を手放しで喜ぶというわけではなく、まだまだ問題が有るのでした。

当時の世論というか、世論を誘導する新聞の社説には、国鉄の分割民営化は本当に可能なのか。はたまた、土地の売却は国民財産の切り売りで有り本当にそれで良いのかと言った論調も見られます。

すなわち、当時の世論では本当に分割民営化は正しいことなのかという迷いが多かったと言えます。

以下は、国有鉄道5月号(国鉄部内紙)最近の社説から引用したものです。

少し長いのですが、当時の世論を知ると言うことで引用させていただきます。

世論は、分割民営化にはまだまだ慎重

当時の世論というか、各新聞の論調は深海者に関する不安、特に現在一番大きな問題となっている三島会社についての不安が述べられている。

実際に、三島問題は再建監理委員会でも問題に上がったわけで、その解決策として、運用基金を導入したわけですが、当時の公定歩合は7%程でしたので、普通に国債などを購入しておくだけでその利子で赤字を補填できるとしていました。

公定歩合

公定歩合の変遷

しかし、その考え方はその後の金利の自由化の進展等もあってその後金利は低下、現在JR各社の存続特に四国・北海道などのあり方が問題となっていますが、この時に本当に民営化はまだしも分亜k津する必要性があったのでしょうか。

当時の各新聞の社説を見ても、本当に大丈夫なのかという論調が目立ちます。

新会社の経営問題については、とくに3島の旅客会社や貨物会社の経営について、各紙とも取り上げています。

各新聞社の社説は概ね国鉄分割圧民営化に懐疑的

各新聞社の社説は概ね国鉄分割圧民営化に懐疑的

以下、国鉄部内紙。国有鉄道1986年5月号、最近の社説から引用させていただきます。

国鉄改革法の第 4 条は利用者の利便の確保及び適性な利用条件の 確保について特に配慮するとして いる。運賃の通算制や遠距離逓減制の維持をうたったものである。そのうえ貨物会社との面倒な関係もからむ。旅客会社の自主性は相当に制約されざるをえず、分割の趣旨が貫徹しない] (朝日 3 . 1)
本州はともかく3島の旅客会社は 、本当に経営的に成り立つのか。いわゆる三島基金 が1兆円あり、この運用収入で赤字を補てんすることになっているが、これで十分でなければ、国や自治体からの助成を求めるのか、赤字ローカル線を切り捨てるかしなければならない。やってみなげればわからない、ですむ話ではない」 (毎日 3.1)
北海道旅客輸送や貨物輸送など、かつて構造的に赤字を生むとされた地域や分野での経営が本当に成り立っていくのか」(日経 3.2)
分割会社、とくに北海道、四国、九州の各社は経営が成り立ち、将来完全民営にまで進めるのか地方交通線は本当に守れるのか。運賃値上げで地域住民を圧迫しないか」 (東京 3.1)
としているほか、 貨物会社についても、「分離独立して全国一本の会社となる貨物会社だが、その前途は心もとない。鉄道は本来、貨客一体であり、貨物を分離させること自 体無理がある。 いずれ貨物は廃止する方針だとすれば、環境上の問題をはじめ 国民に相当な発言権がある」(毎日 3.1)
「貨物鉄道会社の安定経営に問題はないのか、なお疑問な点が数多く残されている 」 (東京3.1)
と論じるなど、依然として、疑問を払拭しえないという論調がある。この点については 、具体的な実務的な裏付けを明らかにしていくことで、自ずから国民・利用者にご理解い ただけると考えている 。

と有るように、当時の世論では「国鉄分割民営化に対する不安」が述べられており、特に検討段階から問題視されていた三島会社の経営安定基金が機能するのか否か。

実際に、1991年頃までは5%程度の公定歩合と言うことで、その運用益で十分とは行かないまでも基金から発生する利息で赤字を補填できると思われていました。

また、多くの特定地方交通線を転換した路線でも、運用基金としてプールするという動きもありましたが運用益の低下で基金取り崩しを行い。最後は廃止という道を辿った路線も少なくありませんでした。

そして、三島会社以外は、多角経営などで経営を軌道に乗せることが出来たものの、三島会社の内、九州は不動産での収益が大きく、上場させることが出来ましたが、北海道・四国は上場の目処すら立っておらず、むしろ経営自体に存続が危ぶまれる状況に追い込まれているのは既に見てきたとおりです。

 


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
第三節 5000万署名運動
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

┌───────────────────┐
├○ 三 5000万署名運動の成果と総括 │
└───────────────────┘

 5000万署名運動は分割・民営化反対の国民世論を形成していくうえで大きな役割を果たした。国労はこの運動を、1986年1月28日に国労会館において以下のように総括した。
 まず、この拡大中央委員会では、5000万署名運動の取り組みを第一線で担った各地方本部から闘いの成果と中間総括が報告された。報告は、釧路地本、旭川地本、札幌地本、新潟地本、高崎地本、水戸地本、千葉地本、東京地本、長野地本、静岡地本、名古屋地本、北陸地本、大阪地本、南近畿地本、福知山地本、米子地本、岡山地本、四国地本、広島地本、門司地本、大分地本、熊本地本、鹿児島地本の総計27の地方本部から行われた。これら各地本における5000万署名運動の総括は各々の地域の現実を反映して多様な総括とならざるを得ないが、ここでは、いくつかの地本での総括や意見を紹介しておこう。
 北海道では、全道労協は全道キャラバン行動や全道市・町村長に対して、「分割・民営」反対、北海道の国鉄を守る署名を要請したが、大多数の首長が反対署名に応ずるなど、5000万人署名に大きなはずみをつけることができた。この成果をふまえて、全戸ローラー作戦や粘り強い説得活動が展開された。とくに、5人組、小集団を中心に行動した分会は、ほとんどの分会が予想以上の行動を発揮し、また家族ぐるみ、家族会独自で行動した分会が大きな力を発揮したという主旨の報告がなされた(釧路地本・釧路支部)。
 また、青函地方本部からは、署名運動の成果として署名推進委員会が設置され、支部・分会の指導性が充分に発揮されたことや監理委員会答申についての学習会や職場集会を開催し、組合員の意識の向上や分会活動の活性化が促進されたこと、対象地域における全戸訪問では国鉄問題についての地域住民の関心が高まり、国労の主張が理解されたことが報告された。また、取り組みの教訓としては、多くの人々が分割・民営化問題に耳を傾け、署名に心よく応じてくれたこと、分割・民営化反対の国民世論をつくるうえで、地域活動の重要性が実感としてもよく解ったこと、他の労働組合の積極的支援を目のあたりにみて、労働者の協力と連帯を強く感じ、地域活動の意義が理解できたとの発言が続いた。最後に、署名運動の反省点としては学習活動が不充分であったため、分割・民営化攻撃の狙いについて充分な理解を得られるような説明ができなかったため、署名への協力を断わられる場合もあった
こと、機械的な動員の割り当てが行われ、キメ細かな対処や配慮に欠けていた場合もあったことが指摘された。
 南近畿地本からは、次のような報告と意見が述べられた。すなわち、同地本では国労組合員1人100人の署名獲得目標にたいして、大阪、和歌山、三重、奈良県支部で約64万5000人、110・1%を達成した。この運動の意義は、従来の国労にみられる組織内的運動の殻を破り、地域活動を主体とする全国民的運動として本格的に取り組んだ画期的な闘いであったこと、国労が1人100人の署名獲得運動を主体的に受けとめ、組織の総力を結集したことで、名実ともに?家族ぐるみ?の運動として展開された。これらの貴重な教訓を前提として、また、単なる署名運動に終わらせないために、政府や自民党の本格的な組織分断・国労の孤立化攻撃にたいして、国民的多数派形成への基盤をさらに強めていくことが必要であるとの主張がなされた。
 以上、いくつかの地本からの報告や意見を紹介したが、こうした各地本からの闘いの中間総括と意見をふまえて、第145回拡大中央委員会派、5000万署名運動の総括と今後の闘争方針を提起した。

続く

********************************************************
取材・記事の執筆等、お問い合わせはお気軽に
blackcat.kat@gmail.comにメール
またはメッセージ、コメントにて
お待ちしております。

国鉄があった時代 JNR-era
********************************************************

にほんブログ村 鉄道ブログ 国鉄へ
にほんブログ村 にほんブログ村 鉄道ブログへ
にほんブログ村 にほんブログ村 歴史ブログ 現代史 戦後(日本史)へ
にほんブログ村

にほんブログ村テーマ 国鉄労働組合へ
国鉄労働組合

 

『鉄道』 ジャンルのランキング