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国鉄労働組合史詳細解説 103

待ったなしの再建委員会

再建監理委員会は、8月10日に第2次緊急提言を中曽根首相に提出することになりますが、再建監理委員会の中では情報を小出しし、活方針を早めの示すことで、野党などの反発を抑えようとする動きがあったと言う記述もあります。

以下、大原社会問題研究所の労働年鑑 第57集 1987年版から引用させていただきます。

監理委員会は、その後も国鉄予算など具体的な国鉄改革の意見を発表しながらも、国鉄の分割・民営化のための検討をつづけた。八四年六月四日には第二次提言のなかに分割・民営化の基本方針を盛り込むことを決めた。このことは、分割・民営化反対論が国鉄内部や自民党の一部および野党のなかにまだ根強い状況を踏まえて、早めに基本的態度を打ち出しておき、分割・民営化のための世論環境をととのえるという狙いをもっていた。

また、これに呼応するように、仁杉総裁、及び鉄労が分割民営化容認の発言をしていきます。

  • 六月二一日に仁杉国鉄総裁は日本記者クラブで基本的に分割・民営化に賛成だという見解を明らかに。*1
  • 六月三〇日には、三塚博自民党国鉄再建小委員長が『国鉄を再建する方法はこれしかない』と題する著書を発行。

    三塚博著 国鉄を再建する方法はこれしか無い

    三塚博国鉄を再建する方法はこれしか無い
  • 六月二六日には、同盟系の鉄労が中央委で、地域本社制と特殊法人への転換を主張し、国鉄自らの、外圧によらない分割・民営化を推進するよう提言

等が行われ、国鉄内部や自民党の一部および野党のなかに反対の意見が根強い状況を踏まえ、分割・民営化のための世論環境をととのえるという狙いをもっていたと言われています。

第2次緊急提言を中曽根首相に提出

中曽根首相仁提出された、第2次緊急提言は、その内容は以下のようになっていました。

昭和59年運輸白書から引用してみたいと思います。

 (ア) 国鉄事業再建についての基本認識

       ① 国鉄事業の再建を達成するためには,現在の公社制及び全国一元的運営から脱却し,新しい効率的な経営形態へ移行することが必要であると考えており,基本的には分割・民営化の方向を念頭において今後その具体的内容について検討する。
       ② 長期債務等のうち新しい企業体による最大限の効率的経営を前提としてなお事業の遂行上過重な負担となるものについては,可能な限りの手だてを尽くしたうえで最終的には何らかの形で国民に負担を求めざるを得ないが,この問題は,効率的な経営形態の確立と切り離して解決し得ない。

 (イ) 当面緊急に措置すべき事項

 ① 要員対策

 私鉄並みの生産性を前提とした場合の余剰人員は,現在顕在化している24,500人に数倍する膨大な人数にのぼるものと思われる。このため,早急に有効な雇用調整のための対策を講ずる必要があり,現在実施しようとしている退職勧奨制度の見直し,休職制度及び派遣制度の拡充を図るとともに,今の段階からこれに引き続く対策についても検討する必要がある。また,余剰人員問題の解決に当たって最も重要なことは雇用の場の確保であるので,これについて各方面の協力方を要請する。

施策を実施するに際しては,国鉄は部内に緊急対策本部を設け,所要の施策を強力に推進すべきである。また,政府においても国鉄の最大限の努力を前提として,政府部内一体となった強力な支援体制を整える必要がある。

 

 以下、用地の取扱、地歩交通線に関しては省略させていただきますが、現在利用されていない遊休地は、長期債務等の処理に際し国民の負担をできるだけ軽減するための一つの方法として公開競争入札を基本とする適正な時価によるものとされていましたが、その後バブル景気で時価が高騰、一時販売を見合わせることになたのは皆様良く言時のとおりです。

特定地方交通線も、早期にバス化を含めた、転換を行う、貨物・自動車部門、特に貨物輸送については徹底した効率化と見直しが急務としています。

答申を受けて、国鉄の談話を発表

 

これを受けて、同日付けで国鉄は、提言に対する国鉄の見解を総裁談話として発表します。

国鉄の談話を発表

 

 個人的な感想であることをお断りさせていただけば、国鉄としては既に要員削減や、経費の圧縮、増収努力など出来ることは行ってきたわけであるが、公社としての内在する問題、【制度的な欠陥を含む】などを考えると、国鉄としてもで正すことは正すが、必ずしも分割民営化が必ずしも全ての解決策では無く、今後の関連事業のへの取組を考えれば安易に売却すべきではないのでは無いかと考えているとして、牽制をしているように見受けられます。

私鉄とは単純に比較できない要員事情

臨調では、私鉄職員に比べ働き度は低水準であり、大幅な所要定員の縮減を求めている。となっていますが、私鉄は基本的には、夜行列車の運転などが無いため、要員を圧縮できるのに対して、国鉄の場合は夜間の貨物列車の運用や、険修なども含めてその要員は多くなる傾向にあるわけで、単純に数字だけで比較するのは問題があると思われますが、その辺は気づいていながらあえて、格下のでは無いかと思慮される部分があります。

 

 「当面緊急に措置すべき事項」では、「要員対策」として1984年度末に28万7500人の所要定員となっているが、それでも私鉄職員に比べ働き度は低水準であり、大幅な所要定員の縮減を求めている。そこで生じる余剰人員対策を講じるために国鉄が「緊急対策本部」を設置すべきだとしていた。

国労は、監理委の第2次緊急提言を受けてストライキを実施

国労は、第2次緊急提言を受けて、拠点ストライキなどを実施するが、全体としては国労は厳しい舵取りを行わざるを得なくなってきたようです。
以下、国鉄労使関係を中心に抜粋しました。
なお、併せて弊サイトをご覧いただければ幸いです。

国鉄監理委が第2次緊急提言 8/10

国鉄再建監理委員会(亀井正夫委員長)は中曽根首相に第2次緊急提言を提出、再建達成のため「分割・民営化の方向で具体的な内容を十分検討したい」と表明した。輸送密度4、000人未満の第3次特定地方交通線選定を急ぎ、貨物と自動車部門を分離するよう求めている。→再建案要旨

国労、分割民営化反対などで2時間スト 8/10
国労国鉄の余剰人員対策の一方的実施、分割・民営化に反対し、全国363拠点で地上勤務者による2時間ストを実施.

国鉄が余剰人員対策委員会 8/13

2万5,000人にのばる過員間題解決のため、本社内に余剰人員対策委員会(委員長、縄田國武副総裁)を設け、国鉄の関連400社に「来年度の新規採用をひかえて、余剰人員を受け入れてほしい」と異例の要請
余剰人員問題は国鉄再建の成否を左右する死活的重要問題となってため、これまで地方で行ってきた活用策の一層の深度化をはかるとともに、現在、退職制度の見直し、休職制度の改定・拡充、派遣制度の拡充について,労働組合と協議中

国労が合理化反撃表明 8/20

国労(22万人)の第46回定期大会が伊東市で始まり、武藤久委員長は「国鉄国労にとって戦後最大存亡の危機。今や立って闘う以外に道はないと表明した
31日に半日ストを予定していたが、29日に中止決定

国鉄58年度決算と監査報告書発表 8/27

監査報告書で初めて、経営形態変更を示唆

 

国鉄監査報告書 昭和58年度から抜粋、経営形態変更についても言及

国鉄監査報告書 昭和58年度から抜粋

国鉄来年度も4%値上げ 8/28

運輸省国鉄の60年度予算概算要求を決め、4%強の運賃値上げなどで純損失と借入金を今年度以下に抑えることとしている

当局・国労、公労委による退職募集に関する斡旋案を受諾 8/29

国労,8月31日予定のスト中止を決定 

 

国鉄があった時代(企画・監修 加藤公共交通研究所) 

から抜粋

参考 千葉動労のビラから

千葉動労は当時のビラも公開してくれていますので、当時の様子を知る資料になります。
今回も、当時の組合視点での考え方と言うことで利用させていただきました。
なお、私自身は千葉動労を支持するものではなく、あくまでも当時の国鉄組合の一つとしてこのような動きもあったと言う視点から書かせてもらっているものであり、概ね国労もこれに準じた行動を取っていたものと思われます。
今後、当該時期の公企労レポートなどを参照できれば追記したいと考えております。

千葉動労ビラ、昭和59年8月14日版

千葉動労ビラ

https://screenshots.firefox.com/XOti9Tjbh8LFRMq7/doro-chiba.org

 

国鉄最後の電化となった四国地域

国鉄最後の電化となった四国地域

 

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************************以下は、国労の資料から引用になります************************

 

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第2章、国鉄分割民営化攻撃と国労攻撃

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 第3節 59・2ダイヤ改正後の余剰人員対策をめぐる交渉
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 三 第二次提言と国労の対応

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├○ 第二次緊急提言に分割・民営化の方針明記│
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 84年8月10日、監理委員会は分割、民営化の方向を明確に示した第2次緊急提言を中曽根首相に提出した、提言は、「国鉄事業再建についての基本認識」と「当面緊急に措置すべき事項」の二つの部分で構成されていた。
国鉄事業再建についての基本認識」の「1,国鉄経営の現状」では、国鉄の経営は年々悪化の度を深めており、59年予算では実質的な赤字が2兆円を超え、長期債務残高が59年度末で22兆円を上回る見通しであり、借入金依存の経営を続けるとやがて事業運営に支障をきたすという認識を明らかにした。そのうえで、
「2,国鉄経営の破綻の原因」にうつり、国鉄が輸送構造の変化に対応できなかったことが経営破綻の原因だと指摘し、ついで変化に対応できなかった原因を示し、それは公社制度のもとで全国一元的運営を行っていたことになると述べた。
 続いて、「3,現行経営形態の問題点」では、臨調の基本答申と同じ見解を示した。「4,鉄道輸送の役割」では、国鉄の経営する分野として大都市圏旅客輸送、地方主要都市圏旅客輸送と新幹線を中心とする中距離都市間旅客輸送をあげていた。また、貨物輸送も経済合理性に基づき特性を発揮できる分野を見極めるべきだとした。以上の指摘に続けて、「5,経営形態変更についての基本的考え方」ではまず現行経営形態を維持する必要性の有無を問い、全国一元的運営の必要性はなく、また国鉄に公共性を求める必然性は乏しいとしていた。そして、現行経営形態での国鉄再建はほぼ不可能として、分割・民営化の方向性を検討するとの見解を示した。その際、長期債務の処理については「最終的には何らかの形で国民に負担を求めざるを得ない」とした。
 もうひとつの柱である「当面緊急に措置すべき事項」では、「要員対策」として1984年度末に28万7500人の所要定員となっているが、それでも私鉄職員に比べ働き度は低水準であり、大幅な所要定員の縮減を求めている。そこで生じる余剰人員対策を講じるために国鉄が「緊急対策本部」を設置すべきだとしていた。「用地の取り扱い」では、「事業用用地」と「非事業用用地」とに分け、実態を把握し、できるかぎり債務返済の財源に充てるべきだと述べていた。「事業分野の整理」では、地方交通線についての廃止・転換は一層推進すべきであり、85年度以降に転換が予想れている第三次特定地方交通線の早期選定を求めていた。貨物輸送では、激烈な競争を行っている物流業界の一員としてふさわしい経営形態を選択する必要があるとした。
 最後の「その他」として管理機構の見直しをもっと進めるべきであるということ、職場規律の改善及び職員のコスト意識の喚起と関連事業での収益を増大すべきだと提言した。
 政府は8月14日に開いた国鉄再建関係閣僚会議において、監理員会から提出された第二次緊急提言を了承し、その後開かれた閣議で「提言」を最大限尊重することを決めた。閣議後、細田運輸大臣は仁杉国鉄総裁に対し、提言内容に沿って国鉄再建に全力をあげるよう指示した。

続く
 

*1:その後、七月六日に発言を修正することになります。