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日本国有鉄道 労働運動史

鉄道ジャーナリストこと、blackcatの国鉄労働運動史

国鉄労働組合史詳細解説 143

国鉄では、はあ制する余剰人員に対して万全の措置を講ずとして、他省庁や公社、地方自治体などの受け入れを要請しました。
しかし実際には、他省庁などからすれば中途採用で入ってくる職員さんは、未知数の上適性もある訳でその後なじむ人も居た反面、水が合わず1年もせずに退職したなんて人も居ました。
今回は其処まで踏み込めるか否かは判りませんが、当時の様子を国労に記事以外からも参照しながらその実情に迫ってみたいと思います。
 

余剰人員という名の定員整理

国鉄では、昭和30年代から概ね40万人台で推移してきました。
昭和30年代は増大する輸送力にそって、迅雲が増える分も吸収できたわけですが、その後は動力近代化などで合理化が図れたにもかかわらず、組合は、反合理化闘争で、人員の削減を極力拒否してきたことのツケがここに来て回ってきたとも言える状況に置かれたと言えるかも知れません。
日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法では、国鉄を民営化する前に、余剰となる人員を他省庁などへの就職を斡旋すると共に、清算事業団に移行後も、速やかに再就職が行えるように措置すると言うことを目的とする事とされていました。
以下は、法律第九十一号(昭六一・一二・四)

日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法

から抜粋したものです。

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、日本国有鉄道改革法(昭和六十一年法律第八十七号)の規定による日本国有鉄道の改革を確実かつ円滑に遂行するための施策の実施に伴い、一時に多数の再就職を必要とする職員が発生することにかんがみ、これらの者の早期かつ円滑な再就職の促進を図るため、当該改革前においても日本国有鉄道の職員のうち再就職を希望する者について再就職の機会の確保等に関する特別の措置を緊急に講ずるとともに、当該改革後において日本国有鉄道清算事業団の職員になつた者のうち再就職を必要とする者について再就職の機会の確保及び再就職の援助等に関する特別の措置を総合的かつ計画的に講じ、もつてこれらの者の職業の安定に資することを目的とする。

 (関係者の責務)

第二条 日本国有鉄道又は日本国有鉄道清算事業団(以下「清算事業団」という。)及び国、地方公共団体その他の関係者は、第五条第一項に規定する国鉄退職希望職員又は第十四条第一項に規定する清算事業団職員の早期かつ円滑な再就職の実現が、日本国有鉄道改革法の規定による日本国有鉄道の改革を確実かつ円滑に実施する上で不可欠であるとの認識の下に、この法律に定める措置を着実に実施するものとする。

第三条 日本国有鉄道又は清算事業団は、第五条第一項に規定する国鉄退職希望職員又は第十四条第一項に規定する清算事業団職員について、再就職の機会の確保及び再就職の援助等を図るために必要な措置を円滑かつ効果的に講ずるように努めなければならない。

第四条 国は、次条第一項に規定する国鉄退職希望職員又は第十四条第一項に規定する清算事業団職員について、再就職の機会の確保及び再就職の援助等を図るために必要な施策を円滑かつ総合的に推進するように努めなければならない。

2 地方公共団体は、前項の国の施策に協力して、次条第一項に規定する国鉄退職希望職員又は第十四条第一項に規定する清算事業団職員の再就職の機会の確保等を図るために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

ここにありますように、改革により発生するであろう過員(管理員会の発言では余剰人員)を解消するために特別な法律を作ってその対応を図るとしており、国鉄関連会社だけにと留まらず、他省庁、公社、地方自治体なども該当したわけで、公安職員は特に希望しない限りはそのまま警察官に採用されたようです。
ただ、公安職員の資質もあるのでしょうが、警察官としてはちょっと力不足な人もいたという話を聞いたこともありますが、この辺はある程度はシカラがないことかとは思えます。
他にも、NTTや郵政に転職した人も居られましたが、職場によっては同じような現業であっても、互いの温度感が違うので、すっと溶け込めた職場もあれば、そうでなかった職場も有ったのではないかと推測されます。
私自身は、郵政しか知りませんが、郵政研修所に第1陣でやって来た国鉄職員は常に緊張しているという雰囲気を全身からみなぎらせていたのが印象に残っています
 

国鉄の余剰人員発生は様々な要因から

国鉄の要員問題が顕著になってきたのは、昭和57年の大幅な列車ダイヤ削減の影響が大きかったと言われています。
特に、貨物輸送の落ち込みが大きく、列車ダイヤ自体を削減してしまったため、機関車に余剰が生じる。機関車の余剰だけであれば、極論を言えば休車扱いにすることで検査機関の延長などが可能となりますが、機関車を動かさないと言うことは、機関車に乗務する人も要らないと言うことになり、その人の仕事がなくなることを意味します。

職場に来ても仕事がない・・・そんな状態になる訳です。

動労が方針転換した背景には組織防衛の意識が強く働いたから。

駅勤務の人の場合は多忙な駅への配置換えとか、機動要員として各駅への応援なども可能ですが。機関士の場合、いきなり翌日から窓口で切符を販売しろと言っても無理なことは明白でしょう。国鉄の場合、機関区で採用されれば機関士までの道であり、駅であれば車掌という選択肢もありますが、運転士から車掌なりというのは一般的ではありませんでした。

そこに組織の硬直性が有り、結果的に余剰人員発生時に、動労がいち早く転向して、貨物蔵そう運動などに取り組んだのも、余剰人員として指定されて、合理化の対象となることを避けるためであり、積極的に出向などにも応じることで、組織を守るという選択肢をしています。

この背景には、松崎自身が若い頃に取り組んだ、機関助士廃止反対闘争の失敗の経験が生かされている様に思えます。

実際、徐々に実力は付けてきたと言っていた動労ですが、機関助士反対闘争では、国労・鉄労の切り崩しもあって、組織存亡の時期があったと言われています。

そうしたこともあり、昭和57年の大幅な貨物列車・旅客列車共に大幅に削減されたダイヤ改正以降、貨物増送運動いわゆる働こう運動を行うなど、組織生き残りをかけた運動が始まりました。

 

千葉動労革マル動労の裏切りと激しく非難

これに対して、異論を唱えたのは千葉動労であり、千葉動労のサイトでは以下のように、動労の裏切り行為であると言うことで以下のような記述がなされています。

82年1月には「職場と仕事を守るために、働き度を2~3割高める」という悪名高い「働こう運動」を打ちだしていた。
  それでも当初はかたちだけは国労との共闘を維持していたが、たちまち馬脚をあらわす。
 82年ブルトレ問題でのぬけがけ的妥結を皮切りに、以降入浴問題、現協問題等々でつぎつぎに当局と妥結。東北・上越新幹線開業に伴う2・11ダイ改では、第一組合である国労をあからさまに無視する当局に抗議して、国労が6年ぶりに順法闘争をたたかっている最中、鉄労とともに当局提案を全面的に受け入れた。ここに動労を使って国鉄労働運動をつぶすというこの攻撃の出発点が形づくられた。  

動労革マルの裏切り から引用

1985(昭和60)年7月30日に政府において再建監理委員会の答申に沿って、国鉄改革を行う旨の閣議決定が行われ、其れを受けて国鉄も、国鉄国鉄余剰人員対策本部を設置、約61,000人の再雇用先を探すこととなり、国鉄関連企業及び公的部門への働きかけが行われることとなり、9月下旬からは管理局長など局幹部が都道府県や政令指定都市を訪問して職員採用に動いたとされています。

政府が1985(昭和60)年12月13日に閣議決定した国鉄余剰人員雇用対策の基本方針について」は国有鉄道1986年2月号の記事から引用しますと。以下のような内容でした。

  1. 公的部門をはじめとする各分野における雇用の場の確保
  2. 新経営形態移行前の対策
  3. 新経営形態移行後の対策

の 3 項目について述べたものである。同時に出された内閣官房長官の談話 では、余剰人員対策の最重点事項である再就職先を各分野 にわたって 広く確保するためには、まず国をはじめとした公的部門が 進んで雇用の場を提供する必要があり、具体的に、政府 として国等の公的部 門における採 用目標数を3 万人と し、その達成に政府全体が一丸となって全力を挙げて取り組む旨を明ら か に している 。 

国鉄当局としては、国が積極的に雇用の確保に努めてくれると信じて居たわけで、公的部門での採用目標数を3万人と明記したことは、政府一丸となって取り組む旨を明らかにしたとして、国鉄としても大いに励みになったと記述されていますが、実際には、国労の記述にもあるように、公的機関の採用は非常に少なかったとして、中々手厳しく書かれています。

基本方針をまとめた国鉄余剰人員雇用対策本部によると、国の採用人員の10%とは86年度で約2600人であり、これだけの採用を90年度までの5年間続けるとしても1万3000人にしかならないだけでなく、地方公共団体の多くは行革と財政難で人減らしを進めている状況で、国鉄職員の受け入れ要請にはにべもない態度であった。地方自治体の具体策が全く立っていないことや、民間企業での約1万人の受け入れ問題が残されており、余剰人員の再就職問題は具体的展望を示されないまま、そして無責任な方針にもとづいてスタートした。

 続く

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第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

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第二節 分割・民営化推進体制の確立
           ―内閣. 運輸省. 国鉄
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├○ 三 政府の分割・民営化推進体制 │
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政府の国鉄余剰人員雇用対策基本方針

 政府は、85年12月13日、閣議で分割・民営化にともなう余剰人員の再就職にかんする基本方針を決定した。前述したように、監理委員会の最終答申では、分割・民営化後の新会社の適正要員を18万3000人、余剰人員を9万3000人とはじきだした。うち3万2000人を新会社に上乗せし、2万人の希望退職を募り、残る4万1000人は「旧国鉄」に所属させ、公的機関や民間企業で再就職を図ると、答申していた。その後、亀井監理委員会委員長が国会答弁などで「国や地方自治体などの公的機関は、採用可能な職種の一割を国鉄職員の受け入れにあて、3万人を採用し、残りを民間で」という案を示した。しかし、受け入れ機関側の抵抗もあり、明確な計画が固まらなかった。
 各省庁や地方自治体との協議を開始した。地方自治体の場合は、保母などの資格の必要な職種が多いこと、女子の占める割合が大きく、自治省によると国鉄職員を受け入れ可能な職種が全採用数の2割以下で、結局、86年度に国鉄から受け入れ可能人数は、特殊法人も含めて公的機関で2000人に達するかどうか、という状況であった。
 自民党側は、余剰人員対策を明確に示さなければ、分割・民営化に反対している社会、共産両党などに有力な反論の口実を与え、法案の審議・成立に支障を来すことを心配して「公的機関で3万人採用」を明確に計画の中に盛り込む意向であり、これを政府に迫った。
 結局、政府が閣議決定した「国鉄余剰人員雇用対策の基本方針」に盛られた雇用確保策の内容は次のようになった。
  ①  各省庁は86~90年度の採用数(特別資格を要する職種などを除く)の10%以上を国鉄から採用する。
  ②  各省庁は所管の特殊法人にたいし国と同様の採用をするよう指導または要請する。
  ③  自治省地方公共団体にたいし国に準じた採用をするよう要請する。
  ④  政府は経済団体、業界団体に採用への協力を要望する。
  ⑤  国鉄は関連企業にたいし新規採用は原則停止当の措置を講じ、国鉄職員を優先採用するよう要請する。
 このように基本方針には、再建監理委員会や自民党が求めていた、「公的機関での3万人の採用」を明記せず、藤波官房長官の「国等の公的部門の採用目標数は3万人とし、達成に、政府全体が一丸となって全力をあげる」との談話で決着した。基本方針をまとめた国鉄余剰人員雇用対策本部によると、国の採用人員の10%とは86年度で約2600人であり、これだけの採用を90年度までの5年間続けるとしても1万3000人にしかならないだけでなく、地方公共団体の多くは行革と財政難で人減らしを進めている状況で、国鉄職員の受け入れ要請にはにべもない態度であった。地方自治体の具体策が全く立っていないことや、民間企業での約1万人の受け入れ問題が残されており、余剰人員の再就職問題は具体的展望を示されないまま、そして無責任な方針にもとづいてスタートした。
 中曽根首相は86年2月24日、都内のホテルに財界五団体のトップを招き、「国鉄職員の雇用要請に関する懇談会」を開いた。
首相は「国鉄改革の最大の問題は余剰人員の雇用対策と長期累積債務だ。政府は長期債務についてすでに処理方針を決めたので、改革の成否は雇用問題にかかっている」「余剰人員6万1000人のうち民間企業にお願いしているのは約1万人以上で、すでに私鉄などには協力いただいている。各企業も協力してほしい」と要請した。これに対し、財界首脳は「国鉄に協力する」と答え、具体策は今後検討すると述べた。
 
続く
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